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アレルギー反応の暴走!「アナフィラキシー」 №219

2014-06-01 12:42:30 | インポート
 アナフィラキシーは、「反抗して防御する」というのがもともとの語源と言うことですが、「アナフィラキシー」~対応と予防~(柘植書房新社刊)の著者角田和彦医師はアレルギー反応の暴走だとして、次のように説明しています。
 「私たちは、自分にとって有害な物質を見つけ出すと、免疫を働かせて処理し、処理できないものは排除します。アレルギー反応もこのような免疫機能の一つです。しかし、何らかの原因で歯止めがかからなくなり、過剰な反応を起こすと、きわめて危険なことになります。アレルギーが暴走し、全身ににさまざまなアレルギー状態が急激に起き、自らの生命を立つような状態にまで至ってしまうのが「アナフィラキシー」という疾患です。」
 典型的な「全身性アナフィラキシー」の場合、アレルゲン(アレルギーの原因物質)または起因物質の注射後5~10分以内に始まり、早い場合には30秒以内に始まるので、注意を要するということです。
 アナフィラキシーショックは発症が非常に急激で、かつ気道の閉塞を伴い、それによる死亡は初期の1~2時間に起こり、多くは喉頭のむくみや不整脈による心停止などが原因となるようです。さらに重篤な酸素欠乏症と血圧低下によっても起こります。したがって、治療の目的は呼吸と循環を緊急に改善することで、まずは気道の確保と酸素吸入が重要で、それから輸液および薬剤を投与するための静脈確保が行われるということです。
 アナフィラキシーは予防が最も大切であるといわれますが、そもそも卵や牛乳、小麦をはじめて口にした赤ちゃんがなぜ「アナフィラキシー」引き起こすのでしょうか。原因物質を多く取る家族の食品から皮膚や気道の粘膜に接触することにより起こるので、本人のみが注意してもだめで、周囲の生活環境から取り除かなくてはならないということです。
 現在の私たちの生活環境の中には、食品に限らず空気や水、土などに様々な有害物質が含まれています。それらの原因物質を摂取しないように注意することはもちろんですが、乳幼児や低学年を扱う教育関係者は、アレルギーや原因物質、そして「アナフィラキシー」に関する知識を共有し、子どもたちを守っていくことが求められているのではないでしょうか。
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家族難民300万人、孤立死20万人という衝撃の予測 №218

2014-05-13 17:11:20 | インポート
 唐の詩人「杜甫」が「人生70古来稀なり」と謳い、70歳まで生きる人が「古来まれ」なほど少なかった頃、長寿は本人にとっても周囲の人たちにとってもおめでたいことでした。しかし、日本人の平均寿命が、女性が86.4歳、男性が79.9歳となったいま、長寿は必ずしもおめでたいことではなくなりました。
 NHKの「無縁社会」という番組が、毎年3万人以上が誰にも認められず無縁死を迎えている、と報じて私たちに衝撃を与えましたが、長寿はめでたいことばかりではなく、将来的には20万人以上の人が孤立死を迎える可能性があると、「家族難民」(朝日新聞出版刊)の著者、山田昌弘中央大学教授は指摘しています。
 山田教授は、家族のサポートを受けられない人たち、自分を必要とし大切にしてくれる存在がいないシングルの人たちのことを「家族難民」と定義しています。 「家族難民」の多くは、配偶者がいないシングルです。例外はありますが、今の日本の社会中で、もっとも安定して存続する「確率が高い」親密な関係は、配偶者や子どもです。親や兄弟はいずれ離れていく関係です。だからこそ、シングルの人たちはいざとなったとき、親身になって世話をしてくれる人たちがいない場合が多いと警鐘を鳴らしています。
 自分を大切にしてくれる存在には、二つの側面があると説明しています。一つは経済的、生活上の側面です。人並みの生活ができなくなったとき、誰かを頼らざるを得ません。私たちはいざというときに助けてくれたり、自分が自立できないときに生活をささえてくれる存在、いわば大切にしてくれる存在を必要としています。それはまた、逆に相手が困ったときに自分が相手を支えることが求められます。つまり、「ケア」し「ケア」される関係です。
 もう一つは、心理的側面です。われわれは自分の存在を他人に認めてもらいたいという欲求があります。承認の欲求といわれるものです。相手に自分の話を聞いてもらったり、自分の話を聞いてもらって安心できる存在です。
 晩婚化、未婚化、離婚の増大、長寿化によりシングル期間がのびています。特に、未婚化によるシングル期間の増大は深刻で、国立社会保障・人口問題研究では、生涯未婚率は、男性で30%近く、女性で22%となると予測しています。このため、シングルが量的に増え、孤立化を深めていきます。30年後、増え続ける中年のパラサイトシングルから推察しただけでも、「家族難民」は300万人を超えるだろうと、山田教授は予測しています。
「おひとりさまの老後」を迎えるための「終活」も近年盛んだということですが、100歳の詩人といわれた柴田トヨさんの、「秘密」という詩の一節のように軽やかに生きたいものです。
 98歳でも  恋はするのよ  夢だってみるの  雲にだって乗りたいわ

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アスペルガー症候群・思春期の悩み №217

2014-04-21 17:05:11 | インポート
 思春期は誰にとっても悩み多い時期ですが、アスペルガー症候群の人たちにとってはとりわけ困難に直面することが多く、アイデンティティの確立に悩む時期です。程度の差はありますがアスペルガー症候群には多くの場合、①社会性の障害、②コミュニケーションの障害、③想像力の障害の三つの特性があります。こうした特性から、佐々木正美特任教授(川崎医療福祉大学)は、アスペルガー症候群の人たちは思春期を迎えて以下のような悩みに直面することをあげています。(「思春期のアスペルガー症候群」(講談社刊))
①友達との会話が成り立たず、他の子にあわせて行動することができない。また、こだわりが強いため、自分が「ふつう」じゃないと意識するようになる。
②そのため、自分は人より劣っていると思いこみやすい。
③自分の意見にこだわって、人の意見に耳を貸そうとしない傾向が強い。
④社会性に乏しく、人の気持ちに配慮しにくいため、友達グループに入れなくてとまどう。
⑤他人にあまり関心がないため、クラスメイトを仲間だと思いにくく孤立しがちである。
⑥規則やルールにこだわるあまり、他の子のミスを執拗に指摘する傾向がある。
⑦相手のいうことを言葉通りに信じてしまうため、金銭トラブルに巻き込まれやすい。
⑧恋愛感情が芽生えると、相手の気持ちを考えずにアプローチして迷惑がられる。
⑨悪意はないが、相手の気持ちを考えず性的な行動を取って、トラブルになることがある。
⑩恋愛感情とは別に、身体がふれあうことを嫌う傾向を持つ場合がある。
⑪不登校、引きこもりになって苦しむ。
⑫感情表現がうまくいかず、家庭内暴力ををおこす。
⑬将来に悲観して不安からうつ病になる場合もある。

 周囲の人はどのように対応したらよいのでしょうか。佐々木教授は以下のようなことをあげています。
①専門の医療機関で、正確な診断を受ける。
②一人でくつろげる時間やスペースを確保してあげる。
③本人の特性と個性を理解してもらう。
④自分をコントロールする方法を身につけさせる。
⑤命令しないで、じつくり話を聞く。
⑥公私の境界線、マナーやルールを具体的に、丁寧に説明する。
⑦長所を積極的に伸ばすようにする。
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なぜ、男は女性にくらべて短命か? №216

2014-04-10 16:58:54 | インポート
 最新の調査で日本の平均人寿命は、女性が86.41歳で世界一、男性が79.94歳で世界5位です。男性に比べ女性の方が6歳位寿命が長いのですが、世界のほとんどの国でも同じように女性の寿命が長いのです。もともと、男性の方が戦いや狩りなど危険な目に遭って死亡する率が高かったり、活動的で事故率も高いので、自然出生率の比率も男性が55%、女性が45%となっているというのを何かで読んだことがありますが、どうもそれだけではないようです。
 埼玉医科大学神経精神科准教授の金澤治先生の著書「LDとADHDの正しい理解と最新知識」(日東書院刊)にこんな記述がありました。LDやADHDを含めて発達障害には男性が多い。また、一部の病気を除いて、ほとんどの病気や疾患、障害などの不具合が、圧倒的に男性が多いのはなぜでしょうか。それは、女性の染色体がXXの組み合わせで、同じタイプの染色体がダブルで組み合わされているので、一方に不具合があっても補正能力が備わっているのにくらべ、 男性の場合はXYの組み合わせなので、1つしかない「X」か「Y」のどちらかの染色体に欠陥があると、その影響もまともに受けてしまい、カバーできないことによるのだそうです。そこに男性の耐久力の弱さや短命ににつながる原因があるということのようです。
 旧約聖書では、神はアダムが寝ているうちに肋骨の一本を抜き取って、これをもとに女性であるイブを造ったとありますが、生物学的にはまったく逆のようです。
 妊娠早期の胎児の性器の原型は女性器で、クリトリスがペニスとなり、左右の大陰唇が縫合され、そこに胎児の腹腔内の卵巣が精巣に変形して睾丸となって降りてくるのだそうです。つまり、神は女性から男性をつくったということです。もともとは女性の原型だったのに、男性ホルモンによって変容したのが男性ですから、病気や不具合が生じるのも仕方ないのでしょうか。どうも、それが短命の原因のようです。
 生物学的にみれば、女性はその胎内に子どもを宿し育てなければなりません。それに対し、男性は、妊娠可能な女性に精子を与えるだけで、生物としての役割を果たしてしまうので、もろくてもいいと言うことなのでしょうか。種の保存の掟はきわめてシビアです。
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アスペルガーという個性を生かす №215

2014-03-31 18:10:33 | インポート
 アスペルガー症候群は、別名、「シリコンバレー症候群」ともよばれているほど、アメリカのシリコンバレ-でIT産業や先端科学、先端技術で働く人たちの中に占める割合が多いそうである。マイクロソフトの創始者ビル・ゲイツやアップルの創始者スティーブ・ジョブスに代表されるように、対人関係の困難さを抱えながらも既成の概念を打ち破って新しいものを生み出すアスペルガーの人たちの並はずれた情熱や想像力によって、私たちの文明は大きな恩恵を受けているといってもよいでしょう。 
 アスペルガーについては、DSM-V-TR(精神疾患の分類と診断の手引き)に診断基準がありますが、「アスペルガー障害」の診断基準を満たす人は少なく、その中のどれかの項目が当てはまるのが、「アスペルガー症候群」といわわれる人たちです。特徴的な傾向として、以下のようなものがあげられています。
(1)社会性の障害 他の人と一緒にいても周りのことに対して関心を示さず、孤立的にふるまうことが多く、相手を喜ばせようとしたり、気に入られようとしません。
(2)コミュニケーションの障害  いわれた言葉を額面どおりに受け取り、冗談やユーモアが通じない。感情や感覚を表現するのが苦手です。
(3)同一行動に固執する なじんだ行動にこだわり、急な変更に対して不安やパニックを起こしやすい傾向がみられます。。
(4)限られた狭い領域に深い興味をもつ 適応の仕方により長所になりますが、実用とは無縁の知識に熱中することもあります。
 アスペルガー症候群と自閉症はどのように異なるのでしょうか。精神科医の岡田尊司先生の「アスペルガー症候群」(幻灯舎刊)の中で、次の4つの要件をあげています。
①言葉の発達の遅れがない。(2歳までに一つ以上、3歳までに二語文を話している)
②知能が正常である。
③その他の面(身の回りのことを自分でできる能力)で発達に遅れがない
④社会生活で問題が生じている。(社会生活に著しい支障がなければ障害とはみなさない)
 岡田尊司先先生は、アスペルガー症候群の困難な部分を治そうとするよりも、次のような長所を生かすべきではないかと提言されています。
 ①高い言語的能力がある、②優れた記憶力と豊富な知識がある、③視覚的処理能力が高い、④物への純粋な関心がある、⑤空想する能力がある、⑥秩序や規則を愛する、⑦強く揺るぎない信念を持つ、⑧持続する関心つね情熱を持つ、⑨孤独や単調な生活に強い、⑩欲望や感情におぼれない。
 ちなみに、岡田先生は、アインシュタインもエジソンも、ウォルト・ディズニー、ヒッチコック、ジョージ・ルーカス、ガウディ、ゴッホ、ピカソ、そしてマハトマ・ガンジーもアスペルガー症候群であったと紹介されています。
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未来の記憶または展望記憶について №214

2014-03-15 09:54:02 | インポート
記憶は、思い出のように、後で思い出す過去の出来事ばかりだけではありません。会議の予定やデートの約束のように、将来のある時点で行う行為を覚えておかなければならない記憶もあります。このような記憶を、未来記憶または展望記憶といいます。未来記憶の特徴は次のように説明されています。
①記憶の対象が「計画された『行為』」であること
②その行為を意図してから実行に移すまでの間に、ある程度の「遅延期間」があること
③その行為を実行しようとする意図が一度意識からなくなり、再度それを「タイミングよく自発的に想起」する必要があること。
 未来の記憶では③の「想起のタイミング」が最も重要な特徴と言われています。お客との約束や恋人とのデートの約束などを忘れると信頼を失い、契約の破棄や破局を迎えることになるからです。
 私たちは、大事な約束を忘れないように、手帳やメモなどの補助記憶用具を利用しますが、その効果には限界があります。なぜなら、多くの補助記憶用具は行為の内容を思い出す際に手がかりにはなりますが、「タイミングよく」その行為を想起させてくれるわけではないからです。
 年を取ると誰もが経験することですが、認知機能が衰えたのを自覚してメモを取るようにしていても、メモしたことを忘れてしまうこともあります。近年は、パソコンや携帯電話の普及により、自分の頭で物を考えなくても済んでしまう傾向が強くなり、若年性健忘症になる人も少なくないといわれています。年齢とは関係なく、刺激が少なかったり使う機会が減ると、脳が衰えて健忘症を引き起こす可能性が高くなります。
 20代~30代で人の話している事が理解できなかったり、聞いた事もすぐに忘れてしまったり、日にちや曜日など同じ事を何度も尋ねたり、食べたものを思い出せないなどの症状のある人は要注意です。
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向精神薬、多剤大量投与の危険 №213

2014-02-13 12:20:27 | インポート
 2月11日付け読売新聞に、うつ病の薬や睡眠薬を大量に服用して救急医療機関に搬送される患者がかなりの数に上るという記事が大きくとりあげられていました。
 副作用や依存性が強く現在ではあまり処方されていないはずのバルビツール酸系の睡眠薬を大量に服用して死亡したり、重い合併症を起こす患者も少なくないということです。不眠や不安、筋弛緩作用などに処方されるベンゾジアゼピン系の薬を大量に服用し、入院中に興奮状態となって暴れる患者を6割の病院が経験しているということです。
 脳科学者の中野信子博士は「脳内麻薬」(幻冬舎刊)という本の中で次のよう書いています。「向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬、睡眠薬等)は一つの症状に対して多種類存在します。それぞれの神経伝達物質が、脳の異なる場所で様々な機能を果たしていることがあります。したがって、ある神経伝達物質の量を増減する薬を投与すると、必然的にその伝達物質が働いている他の部分にも影響が及びます。向精神薬にとって、副作用は避けがたいのです。ですから効き方の微妙に異なる薬品を多数組み合わせて効果が上がる方法を探るわけです。
 しかし、今度は別の問題が生じます。向精神薬の副作用は、意図しなかった場所での神経伝達物質の増減なので、その症状は何らかの精神病と類似していることが多いのです。統合失調症の治療のためにドーパミンの効果を抑える薬を投与すると、ドーパミンの不足によって起こるパーキンソン病の症状があらわれるのもその例です。そうすると今度はその症状を抑えるために別の向精神薬を投与する必要があります。さらに離脱症状といってある薬の量を減らそうとすると不快な症状が出ることがあります。
 こうなるとどれが本来の症状なのか、副作用なのか、離脱症状なのか見極めにくくなり一度投与をはじめた薬はなかなか止められなくなります。こうして患者が飲む薬の量も種類もどんどん増えていくのが多剤大量処方です。これについては学会や国からも何度も注意喚起されていますが、なかなかなくならないのが実情です。」
 さらに問題なのは、うつ病の薬や睡眠薬を大量に服用して意識を失うなどして倒れても、精神科では「身体のことは診られない」と対応を拒否され、一般病院では、「精神疾患には対応できない」との理由で受け入れを拒まれ、受け入れ先がないということです。
 日本では、人口あたりのベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用量が世界一で、アメリカの6倍とされているということです。依存性があるため海外では処方の目安を4週間程度としているのに対して、日本では手間と時間のかかるカウンセリングなどの心理療法を行う施設が少ないこともあって、半年、1年と長期処方されているのが原因ということです。
 安易に薬に頼らず、カウンセリングによるセラピーもあるということを考えてもらいたいものです。
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スピリチュアルペインとは? №212

2014-02-10 17:47:10 | インポート
 スピリチュアルケアはスピリチュアルペインを和らげるための試みとされています。WHO(世界保健機関)は、「健康とは、身体的(フィジカル)・精神的(メンタル)・社会的(ソーシャル)に完全に良好な状態(ウェルビーイング)であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義しています。
 この定義に対して、オックスフォード大学教授トワイクロス博士が1999年に、「身体的(フィジカル)」「精神的(メンタル)」「社会的(ソーシャル)」の他に、「霊的(スピリチュアル)」という概念を加えるべきだと提唱しました。しかし、この提言は、さまざまの宗教をもつ国、あるいは無宗教の国などの考え方を統一することができず、全加盟国の3分の2以上の賛成がなされなかったため、現在も討議中ということです。
 霊的(スピリチュアル)に良好であるということはどのような状態でしょうか。きわめてシンプルに考えれば、自分という存在に対して不安のない状態とでもいえるのでしょうか。精神的(メンタル)に不安がないと言うよりは、もっと根源的なものと思われます。では、スピリチュアルに苦痛(ペイン)がある状態というはどのような状態でしょうか。
 スピリチュアルペインは、「自分という存在の揺らぎや不安」とでも言ったらよいのかもしれません。宗教家や哲学者でもない私たちは、普段は「何のためにいきているのか」などと深くは考えません。命に関わるような病気や不慮の事故、老いを感じた時のように平穏な日常が破綻するような状況に出会った時、初めて、「なぜ自分は生まれてきたのか」、「何のために生きるのか」、「毎日こんな生活をしていくことに意味があるのか」、「なぜ自分はこんな病気になったのか」、「なぜ今、自分が死ななければならないのか」という問いを発します。
 怪我や疾患などによる身体の痛みのケアには薬を用います。精神的な病やストレスのケアには薬やカウンセリングがあります。失業や障害などによる経済的困窮のケアには社会福祉制度があります。しかし、スピリチュアルペインは、薬や社会制度などで取り除くことはできません。
 スピリチュアルケアについて、「人生のあらゆる事象に意味や価値を見出すことができるような、適切な思考法や有益な情報を効果的に伝えることによって、対象者が自分自身で、「心の免疫力」や「心の自己治癒力」を高めていくよう導くこと。」語っている人がいました。
 自分自身でさえ安易に答えることのできないスピリチュアルな問いに対して、それも、死に直面している人に寄り添いながらその問いの答えを導くためには、人間に対する深い洞察や愛、宗教的なものに対する畏敬や哲学に対する造詣が必要とされるのではないでしょうか。スピリチュアルケアが必要であることに疑問はありませんが、ケアに携わる人を
育成するのは簡単ではないような気がします。 
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心の機能の低下と退行 №211

2014-02-03 21:22:20 | インポート
 精神分析理論では、ストレス等により心の機能が低下することを「退行」といいます。ショックな出来事があったり、とても疲労したり、ある特殊な環境に置かれたりすると、知覚、思考、感情、行動をコントロールする「心の機能」が低下します。精神分析学者E・クリスは「退行」を「病的退行」と「自我の安定を図るための一時的・部分的退行」にわけて説明しています。
 病的退行とは、ストレスが加わり現在の状況より以前の状態へ、より未発達な段階へと逆戻りするもので、精神分析では口唇期(1歳位)まで退行するとうつ病、肛門期(3歳位)に退行すると強迫神経症、エディプス期(6歳位)に退行するとヒステリーを発病するというように考えます。
 一時的、部分的退行というのは、健康な自我の一次的・可逆的な退行現象であり、カラオケにいったり、お酒を飲んだり、ゲームに没頭したりしてストレスを発散させ、自我の安定を図ることです。「赤ちゃんがえり」も一時的・部分的退行といえます。
 病気になったり、高齢となってケアを受けることは心の機能が低下し「退行」の要素をはらんでいるといわれています。病気やけがは私たちを欲求不満の状態に置くことになります。この状況で退行が生じてきます。病気やけがに対して回復への不安や痛み、恐怖におそわれ、それを緩和してくれる医師や看護師、家族に依存状態となります。依存は心の中にある幼児体験を呼び起こします。母親に依存していた状態と同様に受動的になるからです。
 その場合、こんなことになった自分を周りの人は陰で笑ったり、悪口を言っているのではないかという「被害者意識」が強いと、「妄想的・分裂的」な精神状態になり、周りの人に迷惑をかけて申し訳ないという「自責的感情」が強いと、「抑うつ的」な精神状態になるといわれています。
 「ケアを受ける人の心を理解するために」(中央法規)の著者、精神科医の渡辺俊之高崎健康福祉大学教授は、介護者や家族はこうしたことを理解した上で、病気やけがで傷ついた人や高齢者の方の「退行」した心の回復に寄り添っていくことが必要だと述べています。

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性格力(スキル)を高める! №210 

2014-01-27 15:03:48 | インポート
 先日、若者の就業支援には性格力を高めることが効果的である、という趣旨の提言が日経新聞に(1月20日付)掲載されていました。提言したのは、慶応大学の鶴光太郎教授です。ポイントは①学力より性格の方が職業人生に大きな影響がある、②性格力は青年期以降でも向上する、③それには職場実習が効果的である、ということでした。
 「性格力(スキル)」というのは聞きなれない言葉ですが、人間の性格を真面目さや協調性、情緒の安定、好奇心など5つの項目で判断する「ビッグファイブ」という特性論の理論に基づいています。「ビッグファイブ」というのは、性格について万人に共通する項目で表せるのは5つであり、その量的比較によって性格を捉えようとする考え方で、共通項目とされているのは以下の5つです。
①「開放性」は、知的好奇心の強さ、想像力、美の理解・興味、新しいものへの親和性、遊び心に関係する特性で、知能や創造性との関連も  指摘されています。
②「真面目さ」というのは、計画性、責任感、勤勉性などの特性で、自己統制力、粘り強さなどです。
③「外向性」は、積極的に外の世界へ行動していく志向性を意味する特性で、人間関係の社交性よりも広い意味で、活動的、上昇志向、エネ ルギッシュな傾向を表しています。
④「協調性」は、利他的な度合い、嘘のない態度、控えめといった事が関係する特性で、やさしさや思いやりに近いものです。
⑤「情緒の安定性」は、敏感さ、不安や緊張の強さを意味する特性で、これが高いと感情面・情緒面での不安定さやストレスを感じやすく、逆に 低いと情緒が安定しています。
 これらの能力は、知的能力に比べて青年期においても伸びしろが高いので、青年期の矯正は性格力(スキル)の向上に集中すべきではないかということです。公共訓練施設等で教育訓練を行うよりも実際の職場において訓練を受けさせることで効果が高いのは、技術の習得と同時に、仕事をさぼらない、他人とうまくやる、根気よく仕事に取り組むといった性格力(スキル)を高めることができるからだと言うことです。
 スウェーデンの例では、失業者が新たな職を見つけるために最も効果的だった方法は、民間に補助金を与えて常用として雇い入れるようなプログラムだったということです。公共職業訓練等、企業外でのフルタイムの授業による訓練は何もプログラムを受けない失業者よりも就職確率がむしろ低下したそうです。
 実際に企業で責任を持って働くことで、職業に必要な技術以外に、責任感をもって粘り強く仕事に取り組むこととか、協力しながら仕事を進めることなどが身につき、性格スキルを高めることができたことによるものではないかと考えられています。
 勤勉で協調性があり、積極的な人材を育成することが重要であるということは、専門高校の校訓などでも掲げていることで、格別、目新しいことではありません。ただ、こうしたことが、ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘッグマン教授等の研究成果に基づいているところに、説得力があります。
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