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「仮面うつ」と「微笑みうつ」 №205

2013-11-25 15:52:09 | インポート
 「仮面うつ」の人は、「うつ病」でありながら、便秘や食欲不振などの消化器症状、頭痛・めまいなどの神経症状、身体各部の慢性的な痛み等どちらかというと身体症状を訴え、精神症状としての「うつ症状」についてはあまり訴えません。
 そのため内科に受診し、うつ病の診断がつかないことが多いのです。睡眠障害、寝付きが悪い、朝早く目覚める、眠りが浅い、食欲低下、性欲低下、だるい、下痢、便秘、腹痛、頭痛、筋肉痛、四肢痛、肩こり、しびれ、めまい、動悸、発汗、口のかわき、胸やけ、息苦しさ、胸の圧迫感、熱感、目のつかれ、食べ物の味がしない、頻尿など多彩な症状がみられます。最近では、「過食」の人もみられるようです。
 身体の症状が全面に出てくるため、精神症状がマスク(仮面)されているという意味で、「仮面うつ病」と呼ばれています。特にサラリーマンに増加しており、仮面うつ病患者では自殺することがあるので注意しなければならないといわれています。頑張りやさんの学生や、猛烈サラリーマンタイプに多いようです。外出したくない、人に会いたくない、ボーッと閉じこもって何もしない、出社しない、登校しないなどが特徴です。
 また、最近、中高年の間に「微笑みうつ」といわれる症状を呈する「うつ病」の人が増加傾向にあるといわれています。集中力がなくなり、仕事上のミスも目立つようになり、ボーっとしていることが多くなるので、周囲の人がそれとなく指摘しても、にこにこと微笑みを浮かべて元気そうに振る舞うので、「大丈夫かな」と思ってしまいます。しかし、じつはうつ状態にあるのを隠そうとして無理に明るくしているに過ぎません。心療内科などの受診を勧めても、医師の前でさえにこやかに振る舞うので、医師も診断にとまどうようです。
 「微笑みうつ」には、うつ病特有の日内変動という生活リズムの変化が見られるといわれます。午前中はボーっとし、それでいて話しかけると明るく振舞い、午後から退社まで頑張り通すというのがパターンです。これが続くと、ストレスはますますたまり、突然、蒸発や自殺といった最悪のケースも考えられます。重傷のうつ病の場合は自殺する気力も起きませんが、「微笑みうつ」のような軽症のうつ病の場合はまだ気力が残っているので、むしろ危険だと言われます。
 「微笑みうつ」は、仕事や人間関係からくるストレスが主な原因で、真面目で責任感が強く、体面を気にして自己犠牲をいとわないタイプがかかりやすいうつ病といわれています。「微笑みうつ」は「うつ病」でも軽症な場合が多いようですが、危険なのは、本人に悩みがあっても周りの人に気づかれないようニヤニヤと体裁笑いをして振る舞うので、「病」が進行してしまうところだといわれます。
 「仮面うつ」も「微笑みうつ」も、特に職場や家庭での人間関係などで無理をすることから生じやすいので、時には周囲に弱みを見せる心のゆとりと勇気を持つことが大切です。ただ、それができるのならそもそも「うつ病」にかからないのかもしれませんが、自分を守るのは自分自身であることを忘れないでいたいものです。

道徳の評価について №204

2013-11-21 15:29:19 | インポート
 文部科学省の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」は平成25年11月11日、正式な教科となっていない小中学校の「道徳の時間」を教科に格上げするべきだとする報告書案を示しました。ただし、評価については、他の教科と異なり、「数値による評定」は不適切とし、児童生徒が成長を振り返ったり、学校側が指導の改善に生かしたりするため、「記述式の評価」を検討すべきだとしています。また、指導に必要な教員免許は設けず、授業は小中ともに担任が受け持つとされています。
 現行の学習指導要領では「道徳教育は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭、学校、その他社会における具体的な生活の中に生かし、豊かな心をもち、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し、個性豊かな文化の創造を図るとともに、公共の精神を尊び,民主的な社会及び国家の発展に努め、他国を尊重し、国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓く主体性のある日本人を育成するため、その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。」とされています。
 反対する立場の人達からは、特定の価値観を教えることにつながりかねないという反発があるほか、いじめ問題にこと寄せて政府のいう「愛国心」をかなめとする国家主義的な道徳教育のいっそうの徹底をはかろうとするものではないかという批判が出ています。
 そもそも道徳は評価になじむのかという疑問を抱く人も多いかと思いますが、アメリカの心理学者ローレンス・コールバーグ(1927年~1987年)は、「道徳性発達理論」の中で、人間の道徳的判断は3つのレベルと6つの段階をもつと述べています。
 レベルⅠは、前道徳的あるいは、慣習以前のレベルと呼ばれるものです。その第1段階は道徳発生以前の無道徳の時期であり叱られなければ良いという段階です。第2段階は、罰を恐れ、権威のある者に服従する段階です。つまり、この水準にいる就学前から8歳位までの子どもは、規則を守り大人が求める規則に従いますが、それは、そうすることが正しいことというよりは、罰を避けたり報酬を得るために行動する段階だといわれています。
 レベルⅡは慣習的レベルと言われる段階です。第3段階の自己の利害を考えて行動する日和見主義的段階と、第4段階の周囲の期待に応えて行動しようとする段階です。このレベルでは先生や親からの承認を得ようとしてそれに同調し、「よい子」としてふるまうようになるといわれています。
 レベルⅢは自律的、道徳的原理による判断の段階です。第5段階が契約と民主的に受容された規則に従う段階で、第6段階は、それぞれの小さな規則よりも、もっと根本的・普遍的な原理から自律的な行動ができる段階です。このレベルでは法や規則にしばられずに普遍的な原理にしたがって道徳性を判断できるようになるといわれています。
コールバーグは道徳性の発達レベルを測定するために、愛する人を救うために犯罪を犯してしまうというような、「モラルのジレンマ」がある物語を使って考えさせ、どの道徳レベルで認知するかによって道徳性の発達レベルを決定するように提唱しています。
 簡単なことではありませんが、発達段階の目安があれば評価することも可能ではないかと思いますが。

おひとりさまの老後とソリチュード №203

2013-11-07 14:53:45 | インポート
 上野千鶴子さんの「おひとりさまの老後」を読みました。その中で、日本語の「孤独」という言葉は、英語では、「ロンリネス(Loneliness)」と「ソリチュード(Solitude)」という2つの言葉で表わされるという一節がありました。
 「ロンリネス」は、友達がいない、交友関係がないというような場合の、寂しいとか心細いという時に使われる言葉で、「ソリチュード」は、むしろ独りでいることが快適で、静かにくつろぐことができるというようなニュアンスで使われるようです。
 上野さんは、「おひとりさま」だからといって「ロンリネス」とは限らない。むしろ「おひとりさま」だからこそ、「ソリチュード」の人もいると言っています。趣味のサークルやデイケアセンターにでかけて寂しさを紛らわしたいと言う人もいるでしょう。独りきりで読書をしたり、音楽を聞きながら自分だけの世界に浸り、食事も入浴も就寝も誰に気を使うことなく自分のペースで生きていくことで充実感に浸れる人もいるのです。
 イシドロ・リバスというイエズス会司祭は、『同じ孤独でも「ロンリネス」と「ソリチエード」とはその意味するところはたいへん違う。両者は無関係なのではなく、むしろ深い関係があるとも言える。「ロンリネス」に陥って寂しくなる時に、もしそれをごまかさないで正面から見つめれば,多くの場合「ソリチュード」へのきっかけとなる。すなわち寂しい時に一人になって考えたり、本を読んだり、黙想したりして、深い「ソリチュード」を味わうことができるようになる。
 現代人の多くの不安と寂しさは、「ソリチュード」の時間がほとんどないところからくるのではないか。「ロンリネス」に悩んで仲間を求めるが、「ロンリネス」になるのは仲間がいないからではなく、心の底からの本当のコミュニケーションが足りないからだ。いつも他人と共にいて「ソリチュード」がないから、本当の自分を失って、本当の自分を分かち合うことができなくなってしまいる。一言で言えば、「ロンリネス」になるのは「ソリチュード」が無いからだ。』といっています。
 私たちはともすると一人でいることが不安で、さして関わりたくない人達と群れることで寂しさを紛らわせていますが、ふと我に返ったとき言いようのない虚しさや不安を感じるときがあります。あえて「おひとりさま」を選ぶこともありませんが、一人でいても、自分が世界や周囲の自然の中で人として生き、生かされていることを感じられることができるようにありたいものです。