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ADHDの二次障害としてのDBDマーチ   №244

2016-08-31 11:56:42 | 日記
 先日、発達障害について研修を受ける機会がありました。そこで、ADHD(注意欠陥多動性障害)の二次障害として「DBDマーチ」という問題があることを知りました。この障害を正しく認識し対応することができれば、非行問題行動や犯罪を相当数減らせるのではないかと考えさせられました。
 ADHDは、自分をコントロールするのが苦手で物事に集中できない「注意障害」、じっと席に着いていることができず落ち着きがなくおしゃべりがな多いなどの「多動性」、思いつくと手順を踏まずに突然行動する「衝動性」の3つがあると指摘されています。
 この障害の原因は、先天性の脳の機能障害ではないかといわれています。短期記憶や注意力、推論、判断、感情のコントロール等をつかさどる前頭前野の部分が関係していると考えられています。また、脳内の神経伝達物質や遺伝が関与しているのではないかとも考えられ、研究が進められていますが、はっきりした原因はまだわかっていません。
 問題は、この障害がしばしば保護者の愛情やしつけ、本人のやる気が原因と誤解されることです。障害が正しく認識されないと、家庭生活や学校生活で逸脱行動をとることが多くなり、禁止や注意、叱責が多くなり、虐待やいじめの対象にもなります。
 自分の行動に理解が得られないことで、周りの人たちに対する不信感を生み、自尊心の低下を招きます。このため、反抗的、挑戦的な態度を取るようになります。幼いうちは、まだ反抗的・挑戦的であるに留まりますが、この状態が続くと、最後にはは法に触れるようなことを引き起こす可能性もあります。つまり、①反抗挑戦症から②間欠爆発症へ移行し、次に③行為障害が生じ、それがエスカレートすると④反社会的人格障害にまで移行していくこともある。この一連の負の連鎖を「DBDマーチ」というようです。
DBDというのは、アメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル」(DSM-5)によると、破壊的行動障害のことで、Disruptive Behavior Disordersの略です。
① 反抗挑戦症(Oppositional Defiant Disorder:ODD)
 しばしばかんしゃくを起こしたり、故意に他人をいらだたせたり、意地悪で執念深かったり、反抗的、挑戦的な行動を示す。
② 間欠爆発症(Intermittent Explosive Disorder:IED)
  ちょっとした事態に突然激怒し、怒りをこらえきれずに、他人やその人の所有物などを攻撃する「怒りの制御不能」を示す。
③ 行為障害(Conduct Disorder:CD)
  反社会的、攻撃的、また反抗的な行動パターンを特徴とし、年齢相応の社会規範や規則を大きく逸脱している状態である。
④ 反社会的人格障害(Antisocial Personality Disorder:ASPD)
  法に触れたり、人を騙したり、他人の権利を無視し侵害する広範な行動様式を示す。
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心の病と薬 ~プラセボ(偽薬)でもなおる?~ №243

2016-08-02 17:43:14 | 日記
 心の病で処方される薬の効果の半分は、プラセボ効果だといわれています。プラセボというのは、一般に偽薬と訳されていますが、薬としての効き目のないものを錠剤やカプセル剤としてつくったもの、つまり、薬に似せた気安めのものといってもいいでしょう。
 ハーバート大学の心理学者で、プラセボ(偽薬・暗示)研究者のアービング・キルシュ氏が、情報公開法に基づき製薬会社の臨床試験データを調べたところによると、重症患者をのぞき、「ブロザック」などの抗うつ剤には、プラセボ(暗示)を超える効果はほとんどなかったということです。つまり、この薬を飲めばなおるという暗示効果以上の効き目は認められなかったということです。
 私たちの周りには健康食品やサプリメントが溢れていますが、それらの広告でみられる、「○○が直った」とか「××がよくなった」という例は、たぶんにプラセボ(暗示)効果による可能性があります。一般に、プラセボ(暗示)効果だけでも3分の1の人は良くなるともいわれているようです。症状によっては、それ以上の割合で効果がみられる場合があるといわれています。特に、不安や緊張に伴う症状や、痛みを伴う症状には効果が現れやすいと言われています。
 プラセボ効果は、内服薬や注射、点滴、食物の摂取などが主な対象ですが、外科手術に対しても効果があったという話があります。
 イギリスで、膝が悪い人に「本当の手術をしたグループ」と「皮膚を切開したのみのグループ」に分け、その効果を調べたところ、この2つのグループに治療効果の差が認められなかったのです。それどころか、皮膚だけを切ったある患者は手術をされたと信じ込み、それまでは杖をついて歩いていたのに、バスケットボールができるまで回復したというのです。にわかに信じがたい話ですが、本当に起こったことだということです。
 すべての心の病が気持ちの持ち方やプラセボ効果で治るわけではありませんが、信じるということが引き起こす効果をあなどってはいけません。
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