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うつ病と確証バイアス №277

2020-04-24 10:07:48 | 心理
 うつ病の特徴として悲観的な思考(否定的な考え方)を持つことが分かり、こうした認知の歪みを修正する新たな治療的アプローチとしてうつ病の認知療法を考案したのが、アメリカの精神科医アーロン・ベックです。彼は、出来事をどのように認識(認知)するかにより、どのような感情を抱き、どのような行動を取るかが変わってくると考えました。
 抑うつ状態におちいった人は、物事のネガティブな面だけをとらえて、それを証明する証拠ばかりを探してしまい、ポジティブな面に注目しない傾向が強くなります。これは、自分に都合の良い証拠ばかりを集めて、反対する証拠に目を向けない、確証バイアスの一種です。抑うつ状態の人のネガティブな思い込みの種類には次のようものががあります。
① 全か無か        完璧にできないと、自分には能力がないと落ちこむ。
②「べき」思考       自分に対しても、周りに対しても極端に原理原則を要求しがち。
③ 過大評価と過小評価   失敗を過大に、成功を過小に評価する。
④ 個人化         自分に関係ないことまでも、自分の責任としてしまう。
⑤ 過度の一般化      「いつも失敗ばかり」というように、小さな失敗を過剰に普遍化してしまう。
⑥ 結論の飛躍        客観的な結果が出る前に、すぐに否定的な結論を出してしまう。
 否定的な確証バイアスを回避するには、「批判的思考」をすることが必要です。「本当にそうだろうか」、「逆の見方は?」といった質問を自分自身に問いかけて、否定的な考えを改めていく方法です。しかし、抑うつ状態にある人は、中々それができません。こうした場合には、「この人の言うことであれば受け入れられる」という信頼できる友人や先輩に客観的な意見を聞くことも良い方法です。
 ただ、「どうせ何をやってもだめなんだ」というポジションは、「何もしたくない」あるいは、「何もしない」ことでもあります。気力や体力が落ちていますので、そこから抜け出すには、本人の努力はもちろんですが、周りの人たちのサポートも大切です。



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認知症になりやすい性格はあるのか? №274

2019-11-11 16:51:07 | 心理
 認知症になりやすい性格というのがあるのでしょうか。東北大学、辻一郎教授の「病気になりやすい『性格』」(朝日新聞出版)の一節に、スウェーデンのある研究機関の調査報告が紹介されていました。これは、アイゼンクの4つの性格類型(外向性、内向性、神経症・非協調性・社会的望ましさ)に基づいた性格調査票によるものだそうです。
 それによると、認知症になりやすいのは、神経症傾向が強く、社会的ネットワークや余暇活動が少ない人たちで、そうでない人たちにくらべて、認知症の発生率が2倍だったということです。
 逆に、認知症になりにくい人たちというのは、神経症傾向が低く、外向性が高い人だということです。ただし、神経症傾向が強い人でも、家族や友人との交流が多い、社会的ネットワークが豊富な人や余暇活動が活発な高齢者は認知症の発生率が低いということす。
 なぜ、「神経症傾向の強い人性格の人が認知症になりやすいか」ということについて、辻教授は次のように説明しています。ストレスの影響は記憶や学習の中枢である「海馬」が最もダメージを受けやすい。その結果、海馬が萎縮して記憶や学習能力が低下してしまうことにより、認知症が起こりやすくなる。
 もちろん、同じ経験をしても、それがストレスとなるかどうかは人によって大きく異なります。アメリカの心理学者ホルムズとレイは、人生におけるライフイベントをストレス強度として、例えば、配偶者との死別100、結婚50、離婚73、退職45などと数値化していますが、そのライフイベントをどう受け止めるかは、人により個人差があります。その個人差が性格といわれるもので、神経症傾向の強い人は、様々なイベントを悲観的に考える傾向が強く、悲観的に考えることが多く、また、それを引きずりやすいといえます。ストレスや苦痛を感じ続けることで、海馬が損傷を受けて認知症が起こりやすくなるということです。
 老人の精神医学が専門の柄澤昭秀博士らの研究によると、「認知症の高齢者は、中年期に無口で頑固、非社交的な人が多かった。」、そして「健常老人は、中年期から明るく開放的で積極的な人が多かった」ということです。
 認知症の発症を防ぐには、知的活動を怠らず、運動で身体を動かし、何かしら社会的ネットワークを保つことのようです。これらの活動が脳を刺激するのです。
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孤独という病 №272

2019-10-30 12:18:24 | 心理
アメリカのある大規模な調査によると、年齢や危険因子などを調整したあと、社会的なつながりや活動が少ない、と答えた成人の死亡率は、そうでない人に比べ、10年間でおよそ2倍だったということです。《「病は気からを科学する」ジョー・マーチントン著 講談社刊》著者によると、社会からの孤立は、肥満、運動不足、喫煙と同じ位、健康に害を及ぼし、強い社会的絆がなければ、あらゆる原因による死のリスクが2倍になるということです。
 慢性的な孤独はストレスと同じように、脳の構造を作り替え、社会的な脅威に敏感になります。親しい友人もなく、数年間孤独を感じてきた人達と、良い友人を持ち、社会的な支援も受けている人達の血液検査を比較した結果、免疫力に大きな差があったということです。
 人類の歴史の大半において、他者から切り離された人は、すぐに餓死や捕食、攻撃の対象になるリスクがありました。社会からの孤立はまさに死刑宣告であり、飢え、喉の渇き痛みのように生存を脅かすものでした。その結果、人間は他者との接触を追い求めるように進化してきました。
 人は、一人でいる時だけ孤独を感じるわけではありません。誰かと一緒にいても、相手から気遣われていないと思えば、孤独を感じます。敵意に満ちた集団の中で孤立していることは、一人でいる時に感じるよりも、もっと深い孤独かもしれません。
 孤独が与える影響は、触れあう人の数ではなく、孤立感の大きさによって決まるということです。親しい人が1人か2人でも、それに満足し、支えがあると感じられれば、健康への影響を心配する必要はありません。
 周りから拒絶されたり、疎外感を抱いたりすると、人はただ悲しくなるだけではなく、傷つき、身体の痛みと同様、自分が脅かされていると感じます。温かい人間関係を築き、豊かな社会生活を営み、自分は集団に属していると感じられる人達は、「病気にならず、長生きをする」ということです。
 特に高齢者にあっては、「必要とされること」で変わります。「あなたが必要です。あなたの知恵と経験が欲しい。」というメッセージを伝えることで、老化を抑えることができます。できないことを手助けする支援よりも、その能力を活用するようにすることが大切なのです。
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定型発達症候群って何? №270

2019-09-05 16:26:07 | 心理
 私たちが、普通とか常識だと思っていることには、思わぬ差別や偏見が潜んでいることがあります。自分は普通の人間だと思っている方、 以下のチェック項目に一つでも当てはまったら、あなたは、人間関係に深刻な問題を引き起こしかねない、「定型発達症候群」の可能性があります。
 ①暇な時はなるべく誰かと一緒に過ごしたい。
 ②集団の和を乱す人を許せない。
 ③社会の慣習にはまず従うべきだ。
 ④はっきりと本音を言うことが苦手。
 ⑤必要なら平気でウソをつける。
 定型発達(typical development)とは発達障害でない人々を意味する用語ですが、「定型的発達症候群」とはどんな症状なのでしょうか。NHKスペシャル取材班の「発達障害を生きる」(集英社刊)という本のコラムに「定型発達症候群」についての説明があります。「自閉症スペクトラム症」と診断された外国のある女性が、「普通とは何か?」について考えて定義した言葉だということです。
 「自閉症スペクトラム症」は先天的な発達障害の一つで、特徴として「社会性と対人関係の障害」、「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」、「行動や興味の偏り」の3つがあるといわれています。
 その自閉症の人からみると、定型発達の人は、「自分の経験が唯一正しいと思いがち」で「一人でいることが困難で、他者との些細な違いに不寛容である」、「集団でいるときは柔軟性がなく」、「直接的なコミュニケーションが苦手で、「自閉症スペクトラム」の人々に比べると嘘をつくケースが多く」、「悲劇的なことに一万人のうち9625人が定型的発達症候群である可能性がある。」と皮肉に定義しています。
 民主主義的に言えば、多数派である定型発達症候群の人々は、少数派である発達障害の人々にたいして、多数派に合わせろと言っているようなものです。
 発達障害と言われる人々は、知覚や触覚、味覚など「感覚過敏」の症状がありますが、普通と言われる人達に理解されません。また、全般的知能は普通でも、選択的集中や臨機応変に物事を処理することが苦手な人、文字の読解や計算などの特定分野の情報の処理が苦手な人もいます。
 正確な統計データはありませんが、発達障害人の有病率は10人に1人はともいわれています。自分の持つ普通や常識という概念に捕らわれることなく、相手の立場に立って、違いを認め合う社会でありたいものです。

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死別の悲しみとどう向き合うか  №269

2019-08-28 13:49:50 | 心理
 人はいずれは死ぬものと理解はしていても、私たちは無意識のうちに、その事実を遠ざけています。それは、まだ、遠い先のことであり、今の自分には関係がないと思っています。しかし、いざ身近な人の死に直面したとき、私たちはその深い悲しみやショックとどう向き合っていくのでしょうか。
 イギリスの精神分析学者ジョン・ボウルビィは、大切な親しい関係の人と何らかのかたちで死別した場合、残された人が一般的にたどる心理を4つのプロセスにまとめています。
 第1段階は、無感覚・情緒危機の段階です。死を知らされた直後から、その後、数時間~1週間ほど続くといわれています。激しい衝撃に茫然としてしまい、死を現実として受け止めることができません。死の事実を納得できず、信じられない気持ちで一杯になります。
 第2段階は、思慕と探求・怒りと否認の段階です。死を事実として受け止め始め、強い思慕の情に悩まされ、深い悲嘆が始まります。しかし、その一方で、死別したことを本当だと認めることができず、強い愛着が続いている段階で、この時期には、なぜ助けられなかったのかという責任をめぐって、怒りや抗議も見られるといわれています。
 第3段階は、断念・絶望の段階です。死別を現実のものとして受け入れ、愛着が断念されます。死別した人との関係を前提に成立していた心の在り方・生活が意味を失い、絶望、失意、抑うつ状態が大きくなる時期です。
 第4段階は、離脱・再建の段階です。それまで向けられていた、死別した人への愛着から離れていくことができるようになります。死別した人との思い出は、穏やかで肯定的なものとなり、場合によっては新しい愛着の対象が見出される段階です。新しい人間関係や環境の中で、再建の努力が始まります。
 しかし、誰もがこのようなプロセスで死別の悲しみやショックから立ち直っていくわけではありません。喪失の悲しみや将来への不安、自責の念等から抑うつ状態に陥り、悲嘆が慢性的なものとることもまれではありません。そういう人達を支えるのが、グリーフ・ケア(悲嘆ケア)といわれるものです。グリーフ(grief)とは深い悲しみの意味で、身近な人と死別して悲嘆に暮れる人が、その悲しみから立ち直れるよう、そばにいて支援することです。励ますのではなく、相手に寄り添う姿勢が大切といわれています。
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引きこもりのプロセスと心理 №268

2019-08-24 09:53:10 | 心理
 私たちの悩みの多くは対人関係にあります。ですから、人との関わりを断つことができれば、その悩みはなくなります。不登校や引きこもりは、様々な対人関係を断つことで、自我を守る行為ともいえるかもしれません。
 ただ、何らかの庇護がないと、引きこもりや不登校の状態を継続することはできません。いつかは、自立していくことを促されるか、自分で決断しなくてはならない時がきます。
 関東自立就労センターでは、引きこもりのプロセスを、「混乱期」、「安定期」、「ためらい期」、そして「動き出しの時期」という、おおむね4つの時期に分けています。そして、引きこもりの心理を、次の10段階に分けています。
①不安「僕の将来は、どうなるんだろう」
②怒り「今の自分は自分の責任なのか、それとも親の責任なのか」
③取引「まだわかってくれないのか」
④拒絶「いくら話してももう無駄だ!」
⑤重圧・圧迫感「孤島で静かに生きたい、どうしてこんな行動をしてしまうのか」
⑥休息(受容)「子どもに親を殴らせないでくれ」
⑦自己否定(嫌悪)「迷惑ばかりかけて」
⑧夢探し動き出し「僕でもまだ大丈夫ですか」
⑨同世代復帰「あいつ、今ごろ何してるかな」
⑩仕切り直しの旅立ち「あの街で生まれ変わりたい」
 引きこもりのプロセスという観点からこれらを見ていくと、①「不安」から⑤「重圧・圧迫感」までが、「混乱期」です。 さらに⑦「自己否定」もそうです。また、⑥「休息(受容)」はほぼ安定期の出来事です。⑧「夢探し動き出し」、⑨「同世代復帰」はた「めらい期」の気分と言うことができます。⑩「仕切り直しの旅立ち」が引きこもりのゴールということになりそうですが、 引きこもり状態から先に進むためには、今の自分を肯定することから始めなくてはなりません。今のダメな自分をいったん葬り去って、再度別人として生まれ変わりたい、すなわち今の自分自身を否定し、別の自分にすげ替わりたいという願いに他なりません。
 やっぱり自分には無理だとならないように、そこからどのように適切に支援していくか、それほど簡単なことではありません。
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