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心の機能の低下と退行 №211

2014-02-03 21:22:20 | インポート
 精神分析理論では、ストレス等により心の機能が低下することを「退行」といいます。ショックな出来事があったり、とても疲労したり、ある特殊な環境に置かれたりすると、知覚、思考、感情、行動をコントロールする「心の機能」が低下します。精神分析学者E・クリスは「退行」を「病的退行」と「自我の安定を図るための一時的・部分的退行」にわけて説明しています。
 病的退行とは、ストレスが加わり現在の状況より以前の状態へ、より未発達な段階へと逆戻りするもので、精神分析では口唇期(1歳位)まで退行するとうつ病、肛門期(3歳位)に退行すると強迫神経症、エディプス期(6歳位)に退行するとヒステリーを発病するというように考えます。
 一時的、部分的退行というのは、健康な自我の一次的・可逆的な退行現象であり、カラオケにいったり、お酒を飲んだり、ゲームに没頭したりしてストレスを発散させ、自我の安定を図ることです。「赤ちゃんがえり」も一時的・部分的退行といえます。
 病気になったり、高齢となってケアを受けることは心の機能が低下し「退行」の要素をはらんでいるといわれています。病気やけがは私たちを欲求不満の状態に置くことになります。この状況で退行が生じてきます。病気やけがに対して回復への不安や痛み、恐怖におそわれ、それを緩和してくれる医師や看護師、家族に依存状態となります。依存は心の中にある幼児体験を呼び起こします。母親に依存していた状態と同様に受動的になるからです。
 その場合、こんなことになった自分を周りの人は陰で笑ったり、悪口を言っているのではないかという「被害者意識」が強いと、「妄想的・分裂的」な精神状態になり、周りの人に迷惑をかけて申し訳ないという「自責的感情」が強いと、「抑うつ的」な精神状態になるといわれています。
 「ケアを受ける人の心を理解するために」(中央法規)の著者、精神科医の渡辺俊之高崎健康福祉大学教授は、介護者や家族はこうしたことを理解した上で、病気やけがで傷ついた人や高齢者の方の「退行」した心の回復に寄り添っていくことが必要だと述べています。

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