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死別の悲しみとどう向き合うか  №269

2019-08-28 13:49:50 | 心理
 人はいずれは死ぬものと理解はしていても、私たちは無意識のうちに、その事実を遠ざけています。それは、まだ、遠い先のことであり、今の自分には関係がないと思っています。しかし、いざ身近な人の死に直面したとき、私たちはその深い悲しみやショックとどう向き合っていくのでしょうか。
 イギリスの精神分析学者ジョン・ボウルビィは、大切な親しい関係の人と何らかのかたちで死別した場合、残された人が一般的にたどる心理を4つのプロセスにまとめています。
 第1段階は、無感覚・情緒危機の段階です。死を知らされた直後から、その後、数時間~1週間ほど続くといわれています。激しい衝撃に茫然としてしまい、死を現実として受け止めることができません。死の事実を納得できず、信じられない気持ちで一杯になります。
 第2段階は、思慕と探求・怒りと否認の段階です。死を事実として受け止め始め、強い思慕の情に悩まされ、深い悲嘆が始まります。しかし、その一方で、死別したことを本当だと認めることができず、強い愛着が続いている段階で、この時期には、なぜ助けられなかったのかという責任をめぐって、怒りや抗議も見られるといわれています。
 第3段階は、断念・絶望の段階です。死別を現実のものとして受け入れ、愛着が断念されます。死別した人との関係を前提に成立していた心の在り方・生活が意味を失い、絶望、失意、抑うつ状態が大きくなる時期です。
 第4段階は、離脱・再建の段階です。それまで向けられていた、死別した人への愛着から離れていくことができるようになります。死別した人との思い出は、穏やかで肯定的なものとなり、場合によっては新しい愛着の対象が見出される段階です。新しい人間関係や環境の中で、再建の努力が始まります。
 しかし、誰もがこのようなプロセスで死別の悲しみやショックから立ち直っていくわけではありません。喪失の悲しみや将来への不安、自責の念等から抑うつ状態に陥り、悲嘆が慢性的なものとることもまれではありません。そういう人達を支えるのが、グリーフ・ケア(悲嘆ケア)といわれるものです。グリーフ(grief)とは深い悲しみの意味で、身近な人と死別して悲嘆に暮れる人が、その悲しみから立ち直れるよう、そばにいて支援することです。励ますのではなく、相手に寄り添う姿勢が大切といわれています。
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引きこもりのプロセスと心理 №268

2019-08-24 09:53:10 | 心理
 私たちの悩みの多くは対人関係にあります。ですから、人との関わりを断つことができれば、その悩みはなくなります。不登校や引きこもりは、様々な対人関係を断つことで、自我を守る行為ともいえるかもしれません。
 ただ、何らかの庇護がないと、引きこもりや不登校の状態を継続することはできません。いつかは、自立していくことを促されるか、自分で決断しなくてはならない時がきます。
 関東自立就労センターでは、引きこもりのプロセスを、「混乱期」、「安定期」、「ためらい期」、そして「動き出しの時期」という、おおむね4つの時期に分けています。そして、引きこもりの心理を、次の10段階に分けています。
①不安「僕の将来は、どうなるんだろう」
②怒り「今の自分は自分の責任なのか、それとも親の責任なのか」
③取引「まだわかってくれないのか」
④拒絶「いくら話してももう無駄だ!」
⑤重圧・圧迫感「孤島で静かに生きたい、どうしてこんな行動をしてしまうのか」
⑥休息(受容)「子どもに親を殴らせないでくれ」
⑦自己否定(嫌悪)「迷惑ばかりかけて」
⑧夢探し動き出し「僕でもまだ大丈夫ですか」
⑨同世代復帰「あいつ、今ごろ何してるかな」
⑩仕切り直しの旅立ち「あの街で生まれ変わりたい」
 引きこもりのプロセスという観点からこれらを見ていくと、①「不安」から⑤「重圧・圧迫感」までが、「混乱期」です。 さらに⑦「自己否定」もそうです。また、⑥「休息(受容)」はほぼ安定期の出来事です。⑧「夢探し動き出し」、⑨「同世代復帰」はた「めらい期」の気分と言うことができます。⑩「仕切り直しの旅立ち」が引きこもりのゴールということになりそうですが、 引きこもり状態から先に進むためには、今の自分を肯定することから始めなくてはなりません。今のダメな自分をいったん葬り去って、再度別人として生まれ変わりたい、すなわち今の自分自身を否定し、別の自分にすげ替わりたいという願いに他なりません。
 やっぱり自分には無理だとならないように、そこからどのように適切に支援していくか、それほど簡単なことではありません。
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