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性格力(スキル)を高める! №210 

2014-01-27 15:03:48 | インポート
 先日、若者の就業支援には性格力を高めることが効果的である、という趣旨の提言が日経新聞に(1月20日付)掲載されていました。提言したのは、慶応大学の鶴光太郎教授です。ポイントは①学力より性格の方が職業人生に大きな影響がある、②性格力は青年期以降でも向上する、③それには職場実習が効果的である、ということでした。
 「性格力(スキル)」というのは聞きなれない言葉ですが、人間の性格を真面目さや協調性、情緒の安定、好奇心など5つの項目で判断する「ビッグファイブ」という特性論の理論に基づいています。「ビッグファイブ」というのは、性格について万人に共通する項目で表せるのは5つであり、その量的比較によって性格を捉えようとする考え方で、共通項目とされているのは以下の5つです。
①「開放性」は、知的好奇心の強さ、想像力、美の理解・興味、新しいものへの親和性、遊び心に関係する特性で、知能や創造性との関連も  指摘されています。
②「真面目さ」というのは、計画性、責任感、勤勉性などの特性で、自己統制力、粘り強さなどです。
③「外向性」は、積極的に外の世界へ行動していく志向性を意味する特性で、人間関係の社交性よりも広い意味で、活動的、上昇志向、エネ ルギッシュな傾向を表しています。
④「協調性」は、利他的な度合い、嘘のない態度、控えめといった事が関係する特性で、やさしさや思いやりに近いものです。
⑤「情緒の安定性」は、敏感さ、不安や緊張の強さを意味する特性で、これが高いと感情面・情緒面での不安定さやストレスを感じやすく、逆に 低いと情緒が安定しています。
 これらの能力は、知的能力に比べて青年期においても伸びしろが高いので、青年期の矯正は性格力(スキル)の向上に集中すべきではないかということです。公共訓練施設等で教育訓練を行うよりも実際の職場において訓練を受けさせることで効果が高いのは、技術の習得と同時に、仕事をさぼらない、他人とうまくやる、根気よく仕事に取り組むといった性格力(スキル)を高めることができるからだと言うことです。
 スウェーデンの例では、失業者が新たな職を見つけるために最も効果的だった方法は、民間に補助金を与えて常用として雇い入れるようなプログラムだったということです。公共職業訓練等、企業外でのフルタイムの授業による訓練は何もプログラムを受けない失業者よりも就職確率がむしろ低下したそうです。
 実際に企業で責任を持って働くことで、職業に必要な技術以外に、責任感をもって粘り強く仕事に取り組むこととか、協力しながら仕事を進めることなどが身につき、性格スキルを高めることができたことによるものではないかと考えられています。
 勤勉で協調性があり、積極的な人材を育成することが重要であるということは、専門高校の校訓などでも掲げていることで、格別、目新しいことではありません。ただ、こうしたことが、ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘッグマン教授等の研究成果に基づいているところに、説得力があります。
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発達障害の増加と愛着障害 №209

2014-01-21 14:49:50 | インポート
 心の病は社会環境の歪みを映しだす鏡だともいわれています。近年、統合失調症が軽症化してきた一方でうつ病や不安障害、境界性パーソナリティ障害を中心とするパーソナリティ障害、依存症、摂食障害、発達障害が増加しているということです。
 統合失調症が軽症化してきた理由として考えられているのが、社会の規範や縛りが緩くなったために、統合失調症の人にかかる精神的緊張が薄らいでいるのではないかということです。個人主義で他人への関心や干渉が希薄な社会環境のほうが、統合失調症の人にとって暮らしやすいのではないかといわれています。
 しかし、うつ病や不安障害、境界性パーソナリティ障害を中心とするパーソナリティ障害、依存症、摂食障害、発達障害はなぜ増加しているのでしょうか。
 うつ病は働く人達だけでなく、主婦や高齢者、若者や子どもにまで増加しています。パニック障害をはじめとする不安障害は遺伝的要因も考えられますが、短期間で遺伝的要因が変化することは考えられません。境界性パーソナリティ障害や摂食障害は、1980年代から急激に目立ち始めたといわれています。
 特筆されるのが「発達障害」の増加で、とりわけ増加率が目立つのが自閉症スペクトラムで、この30年間で数十倍に有病率が上がっているようです。学習障害やADHDも増加し、ADHDの有病率は5~6%、学習障害は10%に上るとも言われています。発達障害は統合失調症と同じくらい生物学的要因が強く、高い遺伝率もつものと考えられてきましが、統合失調症の有病率が横ばいか減少傾向なのに対して、発達障害は増加し続けているということです。
 精神科医の岡田尊司先生は「愛着崩壊」(サブタイトル~子どもを愛せない大人たち~)という著書の中で、その根本原因は、乳幼児(2歳位まで)の頃に十分に母親等の養育者と接する時間が少なかったからではないかと言っています。愛着(アタッチメント)は、イギリスの児童精神科医ボウルビィの、人と人との親密さを表現しようとする愛着行動についての理論です。子どもは社会的、精神的発達を正常に行うために、乳幼児の頃に、少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無いと、子どもは社会的、心理学的な問題を抱えるようになるという理論です。
 離婚や経済的な問題等によりやむを得ず働きに出なければならないため、乳幼児の時期に十分接する時間が持てない環境が根本にあるのではないかということです。祖父母が近くに住んでいれば預けることもできますが、ほとんどの場合は保育所に預けることになります。愛着障害による子どもをつくらないためには、安心して子育てができる環境を社会全体が支えるシステムが必要です。

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東大を目指すロボット №208

2014-01-08 16:40:50 | インポート
  1月7日付けの日経新聞に東大入学を目指しているロボットの記事が掲載されていました。このプロジェクトは、国立情報学研究所が中心となって、細分化された人工知能分野を再統合することで新たな地平を切り拓くことを目的に、2021年度に東京大学入試を突破することを目標に研究活動を進めているということです。
  思い起こせば、今から17年前、平成9年(1997年)5月、IBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」が、当時チェスの世界王者だったゲイリー・カスパロフと対戦し、「コンピューターに負けることなどない」と豪語していた世界チャンピンを破り話題となりました。一昨年(2012年)1月には、東京・将棋会館(東京都渋谷区)で富士通研究所の伊藤英紀研究員が開発したコンピュータ将棋ソフトの「ボンクラーズ」が、当時日本将棋連盟会長だった米長邦雄永世棋聖と対局し、「ボンクラーズ」が113手で勝利しました。
  コンピュータによる翻訳の世界でも、膨大な対訳文を統計的に分析して規則性を見つけ出す、「機械学習」が突破口となり、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の翻訳ソフトは「特許の出願など対訳データが豊富にある分野なら90%以上の精度で翻訳が可能になった。」ということです。これまで困難と思われていた通訳の機械化が実現する日が近づいています。
 現在のところ、国立情報学研究所が推進しているロボットの能力は「代ゼミ」のセンター模試で平均点以下ということです。それでも、私立大学の学部のほぼ半数で合格可能性80%以上のA判定が出るところまではきているということです。プロジェクトリーダーの新井紀子教授は、「もし、AI(人工知能)が東大に入学できる能力をもったら社会が変わる。文章を要約できるレベルになれば、ホワイトカラーで影響を受けない職種はない。」と言っています。
 製造業では無人工場というのがありますが、電話番以外の無人オフィスが出現する可能性もあるわけです。労働から解放され、余暇時間が増え、理想的なライフスタイルが築けるのであれば良いのですが、知的な労働までロボットに奪われ十分な賃金が得られなくなる大量失業時代になってしまう恐れもあります。
 コンピュータに仕事を奪われず使いこなすには、創造性に富み、コンピュータを操るプログラミング技術が不可欠となりますが、果たしてそうしたクリエイティブな業務に携われる人がどれだけいるのでしょうか。なかなか楽観的な気持にはなれません。
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「発達障害かもしれない大人たち」(2) №207

2014-01-07 16:04:48 | インポート
 自閉症スペクトラムに属する人の特徴や生きづらさについて、林先生は次のようなことをあげています。
 ①物事に固執し柔軟な考え方ができない。
 ②物事に対する認識が狭小で、独特な考え方をもっていることが多い。 
 ③納得がいかなくても頑張ってしまい、疲れ果ててしまう。
 ④能力のばらつきが多く、できることとできないことの差が大きく、自尊心を持ちにくい。
 ⑤表情を読みとるのが苦手で、暗黙の了解ができない。細かいところまで言われないとできない。
 ⑥外からの刺激と概念を結ぶセンサーが少ないので、感情表出が苦手である。 
 こうした生きづらさをどのように社会と適応させていったらよいのか、林先生は、本人と周囲の人達のケアとして以下のことをあげています。
<発達障害をもつ本人にできること>
 ①苦手なことは、手伝ってもらったり、迷惑にならない範囲で人にまかせる。
 ②できないからといってあきらめず、できるように工夫する
 ③自分がどのような人間かを知り、ひとのせいしない。
<発達障害の周囲の人がとるべき態度>
 ①頭ごなしに否定しない。失敗しても叱ったり、怒鳴ったりしない。
 ②得意、不得意があることを理解し、可能な限りほめる。
 ③ 一つ一つ丁寧に理を説いて諭すよう努める。
 ④してはいけないことをしたとき、しっかり叱る。
 自閉的特性を持っている人は、選択すべき可能性が多いと、それを絞り込んで決断することができず「結局どうすべきかわからない。」という状態に陥り、脳がフリーズしてしまい、仕事が進まない、できないという事態に陥ります。こまかく手順を教えても想定外の出来事が起こるとパニックになってしまうので、想定外のことが起きても大丈夫だと安心させておくことが必要だと言います。
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「発達障害かもしれない大人たち」(1) №206

2014-01-07 15:59:20 | インポート
 落ち着きがない、忘れ物が多い、人の話を聞かない、できることとできないことの差が多く、集中力が足りない。以前は、こうしたことは、家庭のしつけや教育の問題であり、脳機能の障害であるということはほとんどありませんでした。
 この本の著者、精神科医師の林寧哲先生は、ご自身のことを「アスペルガー障害を経た広汎性発達障害」と診断しています。ご自身が長いこと自分が発達障害であることを知らずに苦しんできた体験があるのだそうです。そうしたことから、社会の中で普通のことに対してどのようにふるまったら良いのかわからずに困ったり、他人に迷惑をかけたりしている人たちの多くは、アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムに属する人たちだったり、その他の発達障害だったりする場合が多いのではないか、とこの本を書いたきっかけを話しています。
 発達障害については、平成17年4月に施行された発達障害者支援法で、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。」とされています。
 自閉症スペクトラム(「スペクトラム」は「連続体」ということで、自閉的特性の程度が軽いものから重いものまでを含んでいる)については、その特性が強くなると対人関係がほとんど構築できなくなってしまうので、本人が生きづらいという感覚におちいることはなく、むしろ、自閉的特性が軽い人、特定不能の広汎性発達障害といわれる人達が対人関係で一番苦労しているのではないかといいます。
 アスペルガー障害(症候群)は、自閉的な特徴を有してはいるものの、言語発達の遅れがなく、重大な認知の遅れ、適応上の障害が希薄であるとされています。つまり、言語発達の遅れがあるかないかが、自閉症スペクトラムとの診断上の違いということです。
 学習障害は他の能力は普通なのにもかかわらず、漢字の読み書きや算数など特定の科目に限って著しく能力が劣る場合を言います。
 注意欠陥多動性障害は、衝動性が高く脳の活動が不安定であり、耐性が低く、我慢が苦手なことが特徴ですが、ほぼ薬でコントロールできることが多いといっています。
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