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女性ホルモンの減少と攻撃性の高まり  No.234

2015-01-26 16:39:20 | 日記
 やさしかった奥様が年齢とともにきつくなってきたと感じている男性は多いのではないかと思います。以前はもっと思いやりのある言葉があったようなのに、ささいなことで、妙に攻撃的な言葉で語気を強める場面が多くなった気はしませんか。仕事にかまけて子育てや家事を任せっきりだった後ろめたさから、ついつい反論の矛先も鈍ろうというものですが、もしかすると、その原因は奥様の女性ホルモンの減少だったということもあるようです。
 一年以上前になりますが、早稲田大学の生命医科学センターの研究グループが、雄の攻撃性は、脳内の女性ホルモンの量が左右しているという実験結果を発表しました。攻撃性の高い鳥類といわれている「ウズラ」で実験したところ、女性ホルモンをわずかに増やすと攻撃的になり、大量に増やすとおとなしくなった。攻撃性は男性ホルモンでなく、脳で作られる女性ホルモンが原因とする今の学説を裏付ける成果で、人でも同じ仕組みが働いている可能性があるということです。
 雄にもわずかに女性ホルモンがあり、男性ホルモンの一部が脳内の酵素により変化して生じる。攻撃に関わる神経細胞に働くことは知られていたが、今回は量が攻撃性を左右することを示したということてす。研究チームは、人でも見つかっている別の脳ホルモンが女性ホルモンの合成を促すことを確認しました。この脳ホルモンの働きを抑えたウズラは攻撃性や性行動が高まった。チームの筒井和義教授(脳科学)は「攻撃性や性行動が高い雄はこの脳ホルモンの働きが弱い可能性がある」と指摘。「雌も普通は多く作られる女性ホルモンが微量になれば攻撃性が高まってもおかしくない」と話しています。
 つまり、生殖抑制ホルモンを雄に投与すると脳内で女性ホルモン合成酵素の活性が高まり、脳内の女性ホルモン量が増加し、攻撃性が抑制され、やさしくなるということです。逆に、女性ホルモンの働きを抑制した雌は攻撃性や性行動が高まるということです。加齢により、生殖ホルモンの抑制された男性は次第に優しくなり、女性ホルモンが少なくなった女性が次第に攻撃的になるということでしょうか。
 古代ギリシャの劇作家アリストパネスに「女の平和」という作品があります。BC4世紀頃アテネとスパルタの戦いを終わらせるために、両都市の女が手を結び、セックスストライキを行うという喜劇ですが、銃を片手に戦いに明け暮れている男たちに生殖抑制ホルモンを投与して、平和な社会を取り戻したいものです。
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脳のアップデートは可能か(2) №233

2015-01-13 17:14:10 | 日記
2 「脳が若返る薬」の実現
 ヘンシュ教授は「抗てんかん」剤として使用されてきた「ヴァルプロ酸」を神経障害を負った成人男性に投与することで、「絶対音感」を高めることに成功したのです。つまり、「臨界期」を過ぎて「固くなった頭」を「柔らかくする」ことに成功したのです。このため世界中の音楽関係者から「被験者」になりたいとのメールが殺到しているということですが、この薬の凄さは絶対音感を高めることにとどまらないということです。
 「ヴァルプロ酸」を服用することで、年老いた人間の脳を「幼児のように柔らかく」する効果がもたらされるというのです。「臨界期」を設けることで一度は外部環境に適応できるようになった私たちも、加齢とともに新たな環境に適応していくことが困難になりますが、薬により「臨界期」が再開できるというのです。脳のアップデートが可能になるということです。情報の増加速度と脳の可塑性への需要に対応するように、脳の進化に手を加えることができたら素晴らしいことです。
 ただ、ヘンシュ教授の研究は、本来は生まれつき、あるいは後天的に神経障害を負った人々に光をもたらすものとして行われたものです。絶対音感を向上させた「ヴァルプロ酸」の投与も、その研究過程で行われたものですが、その研究を見て多くの人が考えるのは、やはり自らの脳を若返らせて、知性を向上させる薬物を製造できないかという思いではないでしょうか。
 苦手な英語を「臨界期」前の脳に戻って学習することができれば、バイリンガルになるのも夢ではなくなるわけですが、ヘンシュ教授はそうした使用に警鐘を鳴らしています。「この種の薬物的な操作とトレーニングで、人生を豊かにすることは可能だと思う。しかし、何かを失う可能性もまたある。わたしたちは特定の文化で、特定の環境で育てられて、こうなっているのだから、臨界期を再開させることは、幼い頃から構築してきたアイデンティティの一部を失う危険性がある。」ということです。
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脳のアップデートは可能か(1) №232

2015-01-13 16:40:05 | 日記
1 人類は頭が固くなることを「獲得」した
 正月に放送された、NHKスペシャル「NEXT WORLD~「私たちの未来」は大変興味深いものでした。特にハーバード大学ヘンシュ教授の「脳が若返る」薬についての放送内容は「心」の問題を考える立場のものにとって大変刺激的でした。
 私たちの脳が「絶対音感」を身につけられる「臨界期」は7歳頃ではないかといわれています。言葉の獲得についても、野生児または孤立児と呼ばれる幼児期に人間社会から隔絶されて育った子供は、後に教育を受けても文法に従って文を作る能力については著しく劣ることが知られていますし、外国語の学習でも習得年齢が大きく影響することが知られています。
 なぜ、私たちの脳は「臨界期」のようなものを設けるのでしょうか。ハーバード大学脳科学センターの<ヘンシュ・貴雄>教授によると、それは「脳の回路を安定させることが重要だから」ではないか。つまり、神経回路の基本的な部分が安定することで、はじめて、その上に成立する新しい機能の学習が容易になるからではないかということです パソコンの基幹の部分にあるウィンドウやアイオーエスのようなOSの設計が、頻繁に「仕様変更」されると使い勝手が悪くて困ってしまうように、脳の「仕様」を一定の時期で固定化すること、すなわち「臨界期」を設けることで、外部環境に適応できるようにしたのではないかとヘンシュ教授は考えたわけです。
 スイスの心理学者ピアジェは、人間の成長を「同化」と「調節」で捉えています。新しい情報を今持っている「知的構造」に合うように変化させて「同化」させたり、知的構造自体を変化させて「調節」することによって成長していくわけですから、この「知的構造」すなわち「脳の仕様書」がきちんとしていないと困るわけです。
 私たちは加齢によって「頭が固くなった」のではなく、環境に適応していくために「頭が固くなることを選んだ」のではないかというのがヘンシュ教授の考えです。脳が「臨界期」をもたないとどうなるのか。教授によると「統合失調症などの精神疾患では、臨界期を終了させる遺伝子の多くが傷ついているのが見られる。つまり、彼らの生涯は過剰に可塑性があり、神経回路が不安定であることを反映している可能性がある。その結果、彼らは外との関係を維持するのが困難になっているのかもしれない。」ということです。
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人の感情を読み取るコンピュータ  №231

2015-01-08 14:33:04 | 日記
 私たち人間には生まれながらにして、「笑い」や「怒り」等の喜怒哀楽の情動の表出がプログラムされています。先天的に耳が聞こえず目が見えない子どもの表情を研究したアメリカの発達心理学者フロレンス・ グッドイナフ(1886-1959)によると、彼らは感情を表出する自分の表情を誰からもフィードバックできないにもかかわらず「笑い」や「怒り」、「泣き顔」などの典型的な表示用や仕草を発達させていました。
 また、アメリカの心理学者ポール・エクマン博士は、「怒る」「恐れる」などの表情が人種によらず、人類共通であることを初めて読み出した人のようです。その成果をもとに、教え子たちの手で開発されたのが、「エモティエント」(Emotient)という、感情を読み取る人工知能です。
 正月に放送されたNHKのネックストワールドという番組で紹介されたところによると、「エモティエント」は画像として取り込んだ顔の表情から、その人の感情を瞬時に判別しようとするもので、「表情の行動科学」を提唱したエクマン博士と、ソーク研究所の人工知能と機械学習の専門家テリー・セジュノウスキー博士の、1990年代初頭に行われたコラボレーションから、このプログラムが誕生したということです。
 「エモティエント」(Emotient)には、エクマン博士が収集した膨大な数の人の表情の写真データを読み込ませ、17の顔の筋肉の動きによってこの表情の写真を分類し、人工知能に学習させました。すると、人間では決して見抜けないようなわずか0.1秒間に生じた表情も判定できるほど人工知能が発達したということです。人間には意図的に操作できる表情と、意図的には制御できない微細な表情がありますが、開発した会社では、この微細な表情に着目し、その表情を瞬時に読み取ることで、様々な人間が将来どのような決定・決断を下すのかを予測しようとしているようです。
 また、グーグル・グラスでこの人工知能が導き出した結果から、見た目の表情からは相手本人も気付いていないような真の感情さえも読み取ることを目指しており、マーケティング、接客業などビジネスの現場や、教育の場などでの活用に向けて開発が進んでいるということです。
 「面従腹背」で世渡りをしてきたサラリーマンには恐るべきマシンかもしれません。
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