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父親は必要なのか?(2) №223

2014-07-29 21:14:08 | 日記
 自己愛的で未熟な母親は、自分の支配権を維持しようとして、子どものご機嫌取りをし、自立心を奪い、社会性を損なっていきます。就職活動も出来ずに立ちつくす我が子の姿をみて、自分の育て方に原因があったのではないかとは思わず、別れたり、目の前にいる男に、不満や責任を転嫁し、あなたは何もしてくれないと、恨み言をいいます。
 父親が企業戦士として不在の中で、社会と家庭のつなぎ役として規範意識やルールを身につける役割を担ったのが学校教育です。そのため、仕事を通じて社会貢献することや、価値観、社会規範について父親が子どもたちに語る機会がほとんどなくなりました。たまに、話かけても聞く耳をもたないか、うっとうしいといわれるのが落ちです。父親は子どもの学費や生活費を稼ぐ役割を担うだけとなりました。その役割でさえ、母親の対応一つで稼ぎの悪いだめな父親という否定的なレッテルを貼られてしまいます。毎日残業でくたくたになるまで働き、ようやく家に帰ってもねぎらいの言葉もなく、嫌われ、疎まれるとしたら、父親というのは何という悲しい存在なのでしょうか。
 否定的な父親像のほとんどは母親によってねつ造されたものです。あなたが父親のことを嫌いだとしても、それはあなたが傷つくことから自分を守るために身につけた防衛反応かもしれないし、母親の断片的な評価を鵜呑みにした結果かもしれません。
 子どもたちは、父親を愛したいと思っていますし、尊敬し、自分の目標にしたいと願う気持ちがあります。なによりも、愛されてこの世に生まれたのだ願う気持ちがあります。父親だって、できることなら残業などせず定時に帰宅し、将来のことや社会の有り様について子どもたちと話し、休日には一緒に遊びたいと願っているはずです。 
 父親がいなくても、またその存在感が希薄な場合でも子どもは育ちます。しかし父親像の不在は、家庭の中で自我を否定されることなく育つことが多く、幼い頃の万能感を抱えたまま脆弱な自我をもち続けるため、思春期に社会にコミットすることが難しくなります。甘えや依存心、不安感が強く、ストレスに弱い傾向を持ちます。また、同世代の女性を愛することが難しく、母親代わりとして年上の女性か意のままになる幼い少女を愛する小児性愛の嗜好を持ったりします。女性の場合、男性嫌いや男性不信に陥ったりします。 
 岡田氏は最後にこういいます。「母という病」も「父という病」も利益追求を優先する社会の問題でもある、と。
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父親は必要なのか?(1) №222

2014-07-28 13:54:38 | 日記
 母親かまたはその代わりに母親役をしてくれる存在がなければ子どもは育たないが、「父親は子どもの成長や発達に不可欠なものとして必要なのか」という問いかけが、精神科医の岡田尊司氏の著書「父という病」(ポプラ社刊)の冒頭部分にあります。
 父親としての権力を絶対的なものにしていた家父長制度が終わり、乗り越えるべき父権がなくなり、フロイトのいうエディプス・コンプレックスが存在しなくなり、母子一体の段階から、子どもも母もなかなか抜け出せなくなります。そこで生じる様々な葛藤が著者の前作「母という病」(ポプラ社刊)に書かれています。
 しかし、母親の過剰な支配や干渉に苦しむ人が増えたのも、逆に母親から見捨てられた寂しさを抱えている人が増えたのも、そこには父親の不在が横たわっているのではないか、というのが岡田尊司氏がこの本を書いた動機ということです。
 自分の思い通りに子どもを育てたい母親は、その支配権を強固なものにするために父親の様々な欠点や問題行動をあることないこと子どもに吹き込み、父親に対する愛着を嫌悪や憎しみに変えようとします。だらしがない、不潔だ、お酒やたばこ臭い、横暴だ、というような父親に対するネガティブな感情は、ほとんどすべてが母親の仕組んだたくらみによるものだと岡田氏はいいます。
 しかし、母親が子どもを思い通りに出来るのは、せいぜい思春期までです。やがて、子どもは気づきます。自分にとって必要だったかもしれない父親を放り出し、憎しみを持たせたのは母親の身勝手な都合によるものだったのではないか。自分が子どもを独占したいために父親を閉め出しただけではないのか。あなたになんか、独占されたくなかった、と子どもは怒りを母親にぶつけ始めます。母親を殴り、暴言を吐き、それが出来ない子は、自傷行為や拒食症になり、自らを痛めつけたり、損なうことで間接的に母親に怒りと苦しみを味わわせます。子どもは一人の親に独占されるよりも、両親に共有され、父親にも母親にも愛されたいと願っています。ところが、誰よりも信頼し、愛していた母親が実は最大の裏切り者として父親を奪ったといことに怒りの矛先を向けます。
 母親は慌てます。こんなにも苦労して自分を犠牲にして育ててきた我が子が、歯向かい、怒りをぶつけてくることが理解できず、情けなくなり、悲嘆にくれます。こんなに一生懸命この子のために尽くしてきたのに、なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。自分が子どもから父親を奪ってしまったことが原因であることに気づく母親は希です。

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