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「ひきこもり」と「孤立無業者」 №202

2013-10-29 17:05:10 | インポート
 景気が上向いてきたとはいえ、学生の就職状況はまだまだ厳しいものがあります。20社~30社、多い学生は50社前後受験します。それでも内定をとることができずに自信を失い、そのまま「ひきこもり」状態になってしまう学生もいます。自分が社会から必要とされていないのではないかと暗澹たる気持になるのは良くわかります。「どうにかなるさ」と楽天的に考えられればよいのですが、「どうにもならない」と悲観的になり、自分の部屋に閉じこもり、外出もしなくなり、昼夜が逆転してきます。
 厚生労働省は「ひきこもり」について次のように定義しています。「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊)などを回避し、原則的には、6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしている場合も含む)。」2010年の内閣府調査では69.6万人いると推計されています。
 それでも、学生のうちは、学校にいけば何らかのかたちで人と接する機会もありますが、いったん社会人となってしまうと、仕事に就いていないとほとんど人と接する機会がなくなってきます。年齢が高くなればなるほどそうした傾向は強くなります。東京大学の玄田有史教授は、「20歳以上59歳以下の在学中を除く、未婚、無業者のうち、ふだんずっと1人か一緒にいる人が家族以外いない人々。」を「孤立無業者(Solitary Non-Employed Persons:SNEP(スネップ))」と呼んでいます。 2011年の調査で162万人いると推計しています。「孤立無業者」の約9割が6ヶ月以上無業を続けていて、めったに外出しない人もいることから、20歳以上の「ひきこもり」の人は「孤立無業者」に含まれているといってよいでしょう。
 「ニート」は求職活動をしない若年無業者ですが、「孤立無業者」は消極的ではあっても求職活動をしています。ただ、産業構造が変化していく中で、社会の求める新たなスキルを手に入れることはなかなか難しいことです。玄田教授は「孤立無業者の増加は、生活保護受給者の更なる増加など、社会の不安定化と財政負担の要因となり得るものであり、アウトリーチの充実や福祉から就労への移行支援など、早急な 政策対応が求められる。」と語っています。
 私たちの国が成熟した豊かな社会となるためには、「ひきこもり」や「孤立無業者」の人達に働く場所を提供できるよう、いったん社会人となった後でも、職業能力を開発し、新たな技術や知識を手に入れられるリカレント教育の制度的な仕組みをつくっていく必要があります。
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強迫性貯蔵症という病 №201

2013-10-26 12:46:35 | インポート
 あまり必要でもなさそうなモノをため込んで、片づけたり、捨てることができない人がいます。これが高じると、いわゆる「ゴミ屋敷」状態となり、家族や近隣の人たちに迷惑をかけるようになり、本人の健康被害も心配されてきます。
 これは強迫性貯蔵症(ホーディング)という病気で、アメリカではおよそ300万人がこの病気に該当すると言われているようです。強迫性貯蔵症(ホーディング)の人をホーダー(Hoader)といいますが、この人たちがなぜモノをため込み、捨てられないのかについては、以下のように説明されるようです。
①今拾って(集めて)おかないと、後で二度とそのチャンスがなくなるのではないかという強迫観念から、必要もないモノを集めてしまう。
②集めた個々のモノに愛着を持ち、それらに囲まれていることでくつろぎや安心を感じる。
③捨ててしまうことで、そのモノを無駄にしてしまうのではないか、という不安や罪悪感 があって捨てることができない。
 ホーダー(強迫性貯蔵症の人)は、その行為による不安や罪悪感を感じつつも、病気であるという意識が希薄であるために自ら受診するようなケースは少ないようです。ホーディングを行う本人にも、それなりの考えがあるため、周囲の人には、本人の話に耳を傾けるなどコミュニケーション、信頼関係が重要だということです。
 海外ではホーダーを対象にした専門的治療を行っている機関もあるそうですが、日本国内ではまだまだ認知度も低く、現在、そのような溜めこみを対象にした専門治療を正式に行っているところはないと思いますが、最近、金子書房から五十嵐透子上越大学教授の訳でゲイル・スティケティー/ランディ・フロスト共著の「ホーディングへの適切な理解と対応 ~認知行動療法的アプローチ~」という本が出版されました。セラピストガイドの他に、ホーダー(強迫性貯蔵症の人)のためのワークブックも出版されています。
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「なりたい職業」と「なれる職業」 №200

2013-10-21 17:03:02 | インポート
 一般的に職業選択には三つのプロセスがあるといわれています。第一段階が、「興味・関心」です。第二段階が、「能力・適性」です。スポーツに例をとってみればわかりやすいと思いますが、野球やサッカーに興味・関心があり、そこそこ上手くても、それだけではプロになれません。プロとして報酬を得るには、興味・関心があるだけでなく、高い能力や適性が要求されます。
 第三段階が、「環境因子」です。環境因子というのは、自分の成育環境をめぐる様々な要因のことです。例えば、長男であるとか、一人っ子であるとかという家庭環境であれば、保護者の面倒をみるため、自宅通勤可能な職場を選ぶということになります。また、医師や先生になりたいと思っても、経済的な要因で進学そのものを断念せざるを得ない人もいます。
 子どもの頃、「将来どんな仕事をしたいの」と聞かれると、たいがいの子どもは素直にあこがれの仕事を言うことができます。ベネッセ教育総合研究所が行った「子ども生活実態基本調査」のアンケート結果(20009年)によると、小学生の男の子が「なりたい職業」の上位は、①野球選手②サッカー選手③医師④大工、ゲームクリエイター、大学教員の順で、5年前とほとんど変わっていません。女の子は①ケーキ屋さん・パティシエ②保育園・幼稚園の先生③芸能人④看護師⑤デザイナーの順です。漫画家の人気が落ちてデザイナーがあがっています。
 同じ調査で高校生男子が「なりたい職業」は、①学校の先生②公務員③大学教員④医師⑤SEの順で、高校生女子では、①保育園・幼稚園の先生②学校の先生③看護師④薬剤師⑤理学療法士、臨床検査技師、歯科衛生士の順となっています。当然のことながら、高校生になり、自分の能力・適性や家庭環境などが客観的に把握できるようになるにしたがい現実的で安定的な志向が目立ってきます。
 問題は、能力・適性等から判断して、「なりたい職業」に就くことはほとんど不可能だと周囲の人には思えるのに本人が「現実と妥協」することなく、「夢」を追い続ける場合や、「なりたい職業」を見失い「現実逃避」してしまう場合です。
 ベネッセの調査によると、5年前に比べて「なりたい職業」が「ない」と回答する子どもの数が増加しているということです。特に、高校生男子の54%が「なりたい職業がない」と答え、5年前の調査に比べ18%も増加しています。女子でも39.3%が「なりたい職業がない」と答え、14%も増加しています。
 就職そのものが難しい時にあって、「なりたい職業」を選択する余地はほとんどなく、とりあえず「なれる職業」を選択せざるを得なくなっているというのが現実です。そこで問われるのは、「適性」よりもむしろ「適応力」といった方が良いのかもしれません。
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自殺と天候 №199

2013-10-03 10:47:12 | インポート
 日照時間が少ない曇りや雨の日が連続した後に、鉄道自殺や未遂が増加する傾向があることを、京都大と滋賀医大のチームが明らかにし、先頃発表しました。
 チームによると、自殺が増える日を予測して踏切や駅をパトロールしたり、光を浴びると症状が改善するうつ病治療用の高照度白色光などをホームや車両につけたりすることで、自殺予防に役立つのではないかと提言しています。
 調査は、鉄道自殺が最も多い東京、神奈川、大阪の3都府県で、2002年からの5年間に、自殺や自殺未遂が理由で鉄道の運休や30分以上の遅れが発生した日の直前の日照時間を調べて行われました。滋賀医大の角谷寛特任教授は「当日の天気より、直前の数日間太陽光を浴びないことの方が感情の落ち込みやうつ症状に影響を与えているのでは」と話しています。
 実際、季節によるストレスが影響する心の病いもあります。春から夏にかけてうつが現れやすいという人がいるようですが、なかでも多いのが秋から冬にかけてうつ病になる人で、「季節性うつ病」とよばれています。
 「季節性うつ病」の特徴は、日照時間が短くなり、気温が低下するにつれて、心身が重くなり、気分も落ち込み、悲観的なことばかり考えるようになり、何時間寝てもまだ眠く、朝はなかなか起きることができなります。さらに大きな特徴としては、食べ物が偏って過食になりがちなところだといわれています。まるで、冬眠を迎えるかのような状態になるのです。 
 ドイツの文豪ゲーテが死に瀕して「もっと光を」と言ったことは有名な話しですが、どんよりした天気が続き、気分が滅入った時には、自然のものであれ、人工的なものであれ、「もっと光を」浴びることが死の誘惑から身を守るすべなのです。
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