荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ショックプルーフ』 ダグラス・サーク

2009-10-24 05:02:24 | 映画
 WOWOWで放送されたダグラス・サーク監督、サミュエル・フラー脚本の未見作品『ショックプルーフ』(1949)を見終えたばかりだが、善と悪の心理が危うく交錯する、フィルム・ノワールとはまさにこれだ、と言わんばかりの作品。当然素晴らしい。
 WOWOWでは他にも、オーソン・ウェルズ『上海から来た女』、ジャック・ターナー『夕暮れのとき』、ジョゼフ・H・ルイス『秘密調査員』、アルドリッチ『キッスで殺せ』、ラング『飾窓の女』、ロージー『大いなる夜』と、1940~50年代フィルム・ノワールがばんばん放送されている。私にとっては、7本中4本も未見作品が含まれている。ついこの前もハワード・ホークスの1930年代ものが連続放送されたばかりで、自宅がアテネ・フランセになったかのような錯覚を覚える。
 さらにCSで録画しておいたジャン・ルノワールのアメリカ亡命時代の『この土地はわれらのもの』(1943)も久しぶりに再見。以前に見た時には、ルノワールらしい自由な感覚に乏しく、教条的なヒューマニズムの押しつけが好きになれなかったのに、すっかり私も年齢を重ねて気が弱くなったのか、チャールズ・ロートンの誇り高い演技に、つい涙々であった。

 自宅のモニター前で悦に入っていても仕方がないぞと叱られそうだが、それは確かにそうかもしれない。しかし、シネマヴェーラ渋谷をはじめ、京橋フィルムセンター、ラピュタ阿佐ヶ谷、神保町シアター……と東京の日本映画環境は充実の一途を辿っているのに、外国映画を見る機会はすっかり失われてしまった。先日、原稿執筆のためにウィリアム・ディターレの『ジェニーの肖像』を再見したかったのだが、渋谷のTSUTAYAでさえ置いていない。あんな傑作が置かれていないなんて。現在そういうものを担っているのは、テレビなのだろうか。