荻野洋一 映画等覚書ブログ

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エドワード・スタイケン@レイナ・ソフィア芸術センター

2008-08-19 08:49:00 | アート
 マドリー・アトーチャ駅前、『ゲルニカ』で有名なソフィア王妃アートセンターで今、エドワード・スタイケン(エトヴァルト・シュタイヒェン 1879-1973)の個展が開催されている。史上初のモード写真家として知られているが(初期VOGUE)、渡米直後に撮影された米中西部の風景写真に宿る詩情に引き込まれてゆく。グリフィスの映画を好む人なら気に入るであろう。
 また、初期ハリウッドのスターを撮った一連のシリーズ、そこには美貌の絶頂にあるグロリア・スワンソンやグレタ・ガルボ、ポーラ・ネグリ、ディートリッヒらの官能的な姿態を目にすることができる。ロートレックやロダン、ブラッサイらパリの芸術家との親密かつ神話的なポートレイト。

 だが、第二次世界大戦が近づくにつれ、スタイケンの写真はマンハッタン型資本主義に、やがて権力の中枢に近づくことになる。MoMAの学芸員を経て、広告写真、モード写真への進化はスタティックな美学への移行であり、グリフィス的な荒々しい牧歌性は薄れていく。そしてついに、《ROAD TO VICTORY》。太平洋上で活動する米国兵士の日常をとらえたこのシリーズはもはや、あまりにもアメリカ的なプロパガンダの世界である。

 晩年、彼の撮影行為は、内向き(家族の肖像)へ、そして反対に外部(アジアや中南米など第三世界のスナップ)へ引き裂かれていく。しかし私には、これらの引き裂かれが、初期のミルウォーキーの田舎をとらえた何げないショットへの原点回帰に思えた。

P.S.
同館の書籍売り場「LA CENTRAL」ではためしに、Cahiers du Cinéma España(昨年に創刊された)の最新号を購入してみた。


Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía (MNCARS) 公式サイト
http://www.museoreinasofia.es/