どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

「アナンシと五」「くものアナンシ」・・ジャマイカの昔話、アナンシと6ぴきのむすこ・・絵本

2013年05月10日 | 昔話(外国)

 右も左もわからなかったとき「アナンシと五」を聞いて、こんな楽しい話があるんだとはじめて思いました。それもドイツやフランスなどではなくジャマイカの話。お話を語る人が一度は取り組む話でしょうか。何回か聞いたことがありますが、話す人の個性も楽しめます。

 「くものアナンシ」は、最近読んだ本のなかに入っていたもの。

アナンシと五
 ジャマイカ島のアナンシという男の近くに、五という名前の魔女が住んでいましたが、魔女は五という自分の名前が大きらいで、五と呼ばれるのをとても嫌がっていました。

 あるとき、アナンシが魔女の家をのぞくと、魔女は大ナベで魔法の草を煮ていてナベから煙が立ちはじめると、魔法のつえを振り上げて「五」と言う言葉を言った者は、その場で死んでしまえ」という恐ろしい呪文をとなえます。
 これを聞いたアナンシは、「『五と言う言葉を言った者は、その場で死んでしまえ』」か。これは良い事を聞いた。こいつをうまく使えば、ごちそうにありつけるぞと思う。

 次の日、アナンシは市場へつながる道にサツマイモの山をならべて誰かが通るのを待つます。そこに通りかかったアヒルの奥さんに、「サツマイモを作ったんだが、頭が悪いものだからいく山とれたか数えられない。代わりに数えてくれませんか?」ともちかける。アヒルは気軽に引き受けサツマイモの山を数え始めます。
 「一、二、三、四、五」アヒルの奥さんは五と言ったとたん、魔女ののろいにかかって死んでしまいます。アナンシはアヒルの奥さんを、ペロリと食べてしまいます。
 次にウサギが通りかかると、アヒルと同じように、サツマイモを数えさせ、丸ごとペロリと食べてしまいます。
 しばらくすると今度はハトの奥さんが、やってきて同じようにサツマイモの山を数えさせるが、ハトの奥さんは「一、二、三、四、それから、わたしの乗っている分」と五とは言わない。それを聞いて、アナンシはハトの奥さんにもう一度数えさせるが、またハトの奥さんは同じように数えます。さらに数えさせるがまた同じ答え。おこったアナンシが「何てバカなハトだ! いいか、こうやって数えるんだ。一、二、三、四、五」。そして『五』と言ったとたん、アナンシはバッタリ倒れて死んでしまいます。


くものアナンシ(ブリッグズの世界名作童話集Ⅱ 長ぐつをはいたねこ/小林忠夫訳 レイモンド・ブリックズ絵/篠崎書林/1989年初版)

 森の中で動物たちが、一番強いのはトラで、一番弱いのはくものアナンシという。くものアナンシがとトラのところにいき「ぼくたちはあなたが一番強いことを知っています。だからあなたの名前をいろんなものにつけているんです。トラひげとかトラねことか。そしてみんなはぼくが一番弱いと知っています。トラさん、どうか一番弱いものにちなんだ名前をつけてください」と頼み込みます。

 トラは「わしの言うこときいたらいろんな話におまえにちなんだ名前をつけてやろう」といい、ヘビを生きたまま自分のところに連れてこいと条件をだします。

 「トラさん、あなたの言うことをききます」アナンシが言うと動物たちやトラは大きな声で笑う。

 アナンシは、月曜日あれこれ考えすてきな計画を思いつき、木のつるでわなをつくります。

 火曜日つるの輪のなかに、へびの好物のイチゴをおいてへびを捕まえようとしますが、へびの体が重すぎてつるのわなは失敗します。

 水曜日、アナンシは地面に深い穴をほり、穴のわきを油ですべりやすくしておいて、バナナをおいておきます。ところがへびはしっぽを木の幹にまきつけて、バナナを食べてしまい、またも失敗します。

 木曜日には別のわなをつくり、そのなかに卵をいれておきますが、今度もへびを捕まえることができません。
 金曜日は一日中考え込む。

 最後の土曜日、へびは「おまえはこの1週間ずーとおれを捕まえようとしていたな。俺はどうしてもお前を殺すからな」。アナンシは「そうです。あなたをつかまえようとしましたが、つかまえられませんでした。あなたはかしこいですね。とてもかないません。ところでぼくにはあなたが世界で一番長い動物で竹よりも長いというのが、どうしてもわからない」と言います。

 へびはアナンシのゆびさす竹より長いと自慢し、からだをいっぱいに伸ばして見せる。アナンシは、どうも竹のほうが長いように見えるというと、へびは竹を切り倒して近くにもってこいという。アナシンがいうことには「あなたがうごきまわるので、竹よりも長そうにみえるが、本当は竹のほうがながそうだ」。

 へびは怒って、「おれのしっぽをしばれ。おまえがなんと言おうとも俺のほうが竹よりも長いんだから」。アナンシはしっぽを竹のはしのしばりつけ、へびがずりさがらないように体の真ん中もしばる。そして最後には、頭も竹に結び付けてしまう。こうしてアナンシは一人でへびをつかまえてしまい。動物たちはもうアナンシのことを笑うことはありませんでした。


 はじめジャマイカの昔話と聞いてピンときませんでした。最近は陸上短距離100m、200m世界記録をもっているウサイン・ボルトの活躍もあっておなじみになってきました。
 ジャマイカは「中央アメリカ、カリブ海の大アンティル諸島に位置する立憲君主制国家であり、英連邦王国の一国である。島国であり、ケイマン海峡を隔てて北にキューバとケイマン諸島が、ジャマイカ海峡を隔てて東にイスパニョーラ島に位置するハイチとドミニカ共和国が存在します。
 国名は、先住民だったアラワク人の言葉(ザイマカ)に因み、木と水の地あるいは泉の地を意味する」とあります。

 もう一つ、アナンシという共通項があったので、気になって検索してみました。

**アナンシは、西アフリカの伝承で最も重要な登場人物のひとり。ニャメ(父で天空神)の名代として活躍する文化英雄である。アナンシは、雨をもたらして火災を消し止めるといった役割を果たす。アナンシの姿は蜘蛛として、または人間として、さらにはその両方の形をとりうるものとしても描かれる。
 一部の物語では、アナンシは、太陽、星、月の創造に関わり、人類に農耕の技術を教えたとされる。またある物語によれば、アナンシが世界中の知恵を瓢箪に封じ込めようとしたという。アナンシは結局、知恵をすべて独占しようとすることの虚しさを悟り、知恵を解き放つ。アナンシが登場する民話を持つ文化の多くが、アナンシが自身の物語にとどまらず「すべての物語の王」となったとする物語を持つ。この物語のうち、原型となるアシャンティのあるバージョンでは、アナンシは天空神ニャメに「すべての物語の王」の名を乞うた。そこでニャメは「短剣の歯のジャガー」、「火の針の雀蜂」、「人がまだ見ぬ妖精」を捕らえることができたら「物語の王」にしてやろうと言った。ニャメは無理だと考えたのだが、アナンシは承知した。それからアナンシは、彼を食おうとするジャガーをだましてあるゲームに引き込み、ジャガーを縛り上げてしまう。雀蜂には、雨が降っていると偽って瓢箪に入るようにとだます。妖精は、タールの赤ん坊を使ってだます。彼はこれらの獲物をニャメに差しだし、「すべての物語の王」となった。**とあります。

 絵本にもアナンシがありました。

アナンシと6ぴきのむすこ  

    アナンシと6ぴきのむすこ/作・絵:ジェラルド・マクダーモット 訳:代田 昇/ほるぷ出版/1980年初版

 幾何学的な直線が特徴的で、色がカラフルです。
 カラフルな色づかいはほかの絵本にも見られますが、見た目以上に鮮やかな感じがします。

 アナンシには、6人の息子がいますが、一匹一匹の胴体の模様がそれぞれちがったくもの親子。

 アナンシがお魚に呑み込まれ、息子たちが助けにいきます。
 息子たちは一匹一匹特徴があるのが昔話らしいところ。

 ”じけんみつけ”の息子が、父親の危機を発見し、”どうろづくり”が道路をつくり、”川のみほし”が川の水をのみほし”てじなし”が魚のなかからアナンシを救い出しますが、はやぶさが、アナンシをつれさります。
 そこで”石なげじょうず”の息子が”はやぶさに石を命中させ、そらから落ちてきたアナンシを”ざぶとん”息子がうけとめます。

 息子たちに助けられたアナンシは、ひかるおおきなたまをみつけ、これをむすこたちにやろうと考えますが、誰にやったらいいか頭を悩ましますが?

 ここにでてくる魚や、はやぶさ、ニヤメという神さまの絵も楽しい。


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