どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

クラクフのりゅう

2024年08月14日 | 絵本(昔話・外国)

    クラクフのりゅう/アンヴィル奈宝子/偕成社/2020年

 

 ポーランドの昔話の再話で、昔ポーランドの首都だったクラクフにある、ヴァヴェル城にまつわるお話。


 このお城の地下に、いつのころからか住むようになった青いりゅうは、どんどんどんどん大きくなって人や家畜をパクパク食べてしまい、ひとびとから怖れられていました。
 困った王さまは、「恐ろしいりゅうを退治したものは、王女と結婚できる」というおふれをだしました。
 強そうな男達百人が退治にでかけますが、あまりの恐ろしさに逃げ出す始末。ようすをみていたお城に住むかしこい靴職人のドゥラテフカが、りゅうの退治にのりだします。

 昔話の「おふれ」は、本人の意向をとわず、結婚できるというのが多いのですが、ちゃんと王女の進言という形で、本人の意思を尊重しています。また、ドゥラテフカは、リサイクルした にせもののヒツジのおなかに硫黄をしこんで退治しますが、この硫黄は、着火剤(マッチの先端)としてつかわれていたのではないかと、リアリティもあります。

 さらに、ドゥラテフカは、王さまになっても、おおぜいの家来のために、りゅうの皮で靴づくりをする とっても働き者の 王さまで たんに「しあわせにくらしました」となっていないのも味のあるおわりかたです。

 悪役のりゅうが、とてもかわいらしく(とくに、目がチャーミング)えがかれているので、憎めません。またお城などの俯瞰図も目をひきます。