天の火をぬすんだウサギ/作・絵:ジョアンナ・トゥロートン 訳:山口 文生/評論社/1987年初版
北米インディアンに伝わる火の起源伝説の二つの話がもとになっています。
昔、地上に火がなくてどこもかしこも寒かった昔の話。
高い山の上には火があり、守っているのは天の人。
(天の人というのは神様のようですが、ここではインディアンがえがかれています)。
森のなかで一番賢いウサギが、きれいな羽根飾りをつくり、もえやすいマツヤニを羽根にぬりつけて、天の火をとりにでかけます。
トウモロコシや魚がどっさりとれる素敵な踊りを教えにきましたよと話しだします。天の人はすっかりうっとりとし、自分たちの踊りの輪のなかで一緒に踊り始めます。
やがて羽飾りに火がつくと、ウサギはすかさず逃げ出します。
リス、カラス、アライグマ、シチメンチョウ、シカとリレーして、火を森の中に隠すことに成功するのですが。
リスのしっぽがまるい、カラスが黒い、シチメンチョウの首の上に羽がない、シカのしっぽがみじかいなどのわけを、火のリレーにからめています。これまでの話では、いわれが特定のものにかぎられているので、目新しいところ。
枝をこすり合わせて、火をおこすという最後の場面でいうと、火そのものを盗んだわけでなく、知恵を盗んできたようです。
火は人間にとって欠かせないものだけに、塩のいわれとおなじく、世界のどこにでも同じような話があってもおかしくないのですが、これまであまり目にしたことがありません。
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