どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

けちんぼ長者と三吉さん・・秋田

2024年02月26日 | 昔話(北海道・東北)

        秋田のむかし話/秋田県国語教育研究会編/日本標準/1974年

 

 長者さんもなかなか苦労がつきないようで・・・。

 けちんぼ長者の楽しみは、奉公人が寝てしまってから、穴倉に隠しているぜぇんこ(お金)を、部屋いっぱいにひろげ、ジャンジャラ音させて、数がふえていくのをみて、よころぶことだった。こうもぜぇんこがたまってくると、泥棒に盗まれることが心配で、夜も眠れなくなり、あれこれ考えたあげく、ぜぇんこやお金を貸したという証拠の証文を、小屋の漬物桶にかくし、いかにもたくわんがっこ(漬物)と見せかけ、重い石をのせておいた。

 ところがある日、久しぶりにぜぇんこの顔を拝みたくなって、小屋の漬物桶をのぞくと、桶の中はからっぽ。奉公人をあつめ、問いただすが、誰も知らないという。「漬物桶にぜぇんこあるってこともしらねえから盗むはずがねえべ」と、長者のところに奉公にあがってから、はじめて口ごたえしたのは、三吉。

 三吉は、借金のかわりに長者のところで働いて12年。三吉は、お相撲さんのように力がつよく、ほかの人の三倍も五倍も、しばを背負って帰ってきて、長者の財産形成?をたすけていた。

 まじめに働いて、泥棒呼ばわりされた三吉が、「10年の年季奉公に、2年もおまけをつけて働いたから、ひまをもらうべ」というと、長者は、「おめえのほしいものは なんでもやるから、いってみれ」という。三吉は、「たんぼの稲束、背負われる分だけもらうべ」と、たんぼの稲束を、全部担いで大平山のほうへ、歩いていってしまった。

 ところで、ぜぇんこと証文のゆくへは?

 長者が大黒様にありかを教えてもらおうと神棚を、ひょいとみると、大黒様の後ろには、証文が、ばらばらにちぎれて、うず高く積まれてあった。ねずみがすをつくるため、たくあんずけのにおいのする証文やぜぇんこをかじって、せっせと神棚のすみっこに運んだのだった。

 

 秋田の国の大平山のふもとの村の話。