秋田のむかし話/秋田県国語教育研究会編/日本標準/1974年
ナマハゲのおこり。
むかし漢の武帝が白い鹿のひく飛車にのり、五ひきのこうもりをひきつれて男鹿にやってきた。そのとき こうもりは、五ひきの鬼にかわってしまった。
鬼は、武帝によほどこき使われていたのだろうが、一日だけ休みを許された。ところが鬼たちは、村の畑作物や家畜、しまいには娘たちまでさらってしまった。憤慨した村人が、鬼の退治に出かけるが、散々な目にあわされてしまう。そこで、みんなで相談し、「毎年、ひとりずつ娘をさしあげる。そのかわり、五ひきの鬼どもは、五社堂まで一晩のうちに、しかも一番どりのなく前に、せんだんの石段を築くようにしてくれ。まん一、これができなかったときは、ふたたび村へおりてこないでくれ」と、武帝にお願いした。
村人は、一夜のうちに千段の石段を作ることはできないだろうと思ってお願いしたが、鬼たちは、あれよあれよというまに、石段を積み上げていった。一番どりがなくまえにできあがりそうなので、あわてた村人は、ものまねのうまいアマノジャクに、あと一段というところで、とりのなきごえの「コケコッコウ」をやってもらった。鬼たちは、はねあがっておどろき、やがて、おどろきがいかりにかわり、ぶるぶる身をふるわせ、大声を出すと山へ帰ってしまった。それからは、鬼は村におりてくることはなかった。
門前にある赤神神社から五社堂までの石段は、今も続いている。五社堂には、いまなお、この五ひきの鬼たちをまつって、むかしを物語っている。これが今日のナマハゲのおこりともいわれている。
ナマハゲは、秋田というイメージがありますが、日本の各地にも同様の行事があるといいます。
この話、「ナマハゲのおこり」としていますが、すこしイメージが違います。