どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

鹿よ おれの兄弟よ

2024年02月02日 | 絵本(日本)

   鹿よ おれの兄弟よ/神沢利子・作 G・D・パヴリーシン・絵/福音館書店/2004年

 

 祖先から続く猟師が、シベリア シホテ・アリニ山脈(樺太横の大陸日本海沿岸の山脈)の あいだから ながれくる 川を 小舟をこぎ、鹿を求めてそのときをまつ。

 鹿を殺し、小刀で毛皮を はぎ いっぽんの骨もおらずに、解体。服は鹿皮、くつも鹿皮。どちらも鹿の足の腱を糸にして 縫ったもの。

 妻や子、自分の命をつなぐために、鹿の命をいただく。しかし、猟師は鹿に対する感謝と敬意を決して忘れることはありません。それが共存の前提です。

 

 幼少期樺太で過ごされたという神沢さんの叙情詩と ハバロフスク在住のG・D・パヴリーシンさんのコラボ。どんな経緯で実現したのかにも興味がわきました。

 ひとまわり大きいページに、人の服装や、 鹿の毛、木の樹皮や曲がりくねった枝、草花が緻密に描かれ、静寂な大自然の風景に おもわず引き込まれます。

 「鹿よ、おれの兄弟よ」「鹿よ おれは おまえを よぶ」「ありがとう おれの 友 おれの兄弟よ」繰り返しのフレーズが 鹿への 敬意を あらわしているよう。

 擬音も独特。

 「プサル プサル プサル」は、小さな魚が 水面を 跳ねる音。

 「トーン デュヒ」は、鹿が鼻をひろげ 警戒して あたりを かぐおと。

 「ビテ ビテ ビチュ チュ」は、小鹿が 猟師がちいさいころ 耳をなめた 音。