どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

イワンの ばか

2023年10月12日 | 紙芝居(昔話)

 イワンの ばか/原作・トルストイ 脚本・横笛太郎 画・土方重巳/童心社/1997年(16外面)

 

 あるところに三人の兄弟がいました。一番上のセミョーンは軍人、二番目のたいこばらのタラスは町で商売をはじめましたが、三番目のイワンは農作業を一心にしていました。

 森の近くの悪魔が、三人兄弟に喧嘩させようと取りつきました。軍人のセミョーンの火薬を全部湿らせたので、大砲はドカーンとならず、セミョーンは戦争に負けて、いのちからがら にげだしました。悪魔は二番目のタラスをよくばりにしたので、タラスは、金も銀も毛皮も欲しいと欲の皮がつっぱり、お金をすっかり使い果たし、借金で身動きがとれなくなってしまいました。

 つぎに、悪魔はイワンの畑を固くし、おなかも痛くなるよう呪文をとなえます。腹が痛くなったイワンが あと ひとふんばりと 力をいれたひょうしに 悪魔を見つけ手で握りしめます。ぎゅうぎゅう詰めに にぎりしめられた悪魔は、いのちのねっこ、木の葉で お金を作る方法、藁束で兵隊をつくることをおしえることで、イワンから逃げ出します。イワンがさっそく いのちのねっこを食べると、腹痛は すーっと なおりました。

 そのころ、お城のひめさまが 病気になり、「姫の病気をなおしたものに褒美を、ひとりものなら姫をよめにやって、王さまにしてやろう」というおふれが、国中にだされました。イワンが いのちのねっこで、姫の病気を治してやろうとお城に出かける途中で、手の曲がったおばあさんに、いのちのねっこをさしだし、いのちのねっこは すっかりなくなってしまいます。それでもイワンがお城につくと、姫の病気は はっとなおりました。おふれどおり、イワンは 姫を よめさんにして、この国のおうさまになりました。

 一方、悪魔は、イワンを なんとか困らせてやろうと、大金持ちの紳士にばけて、イワン王へ、「このうつくしい金貨で 何でも買うよう」進言します。イワンが、「わしの国では、そんなものは いくらでもあるぞ。木の葉は たくさんあるからな」というと、悪魔は「この国では、みんな手や足をつかってはたらいていますが、ばかなことです。あたまをつかって 働くことを おしえましょう」といいます。

 「国中のものに あたまで働くことを教えて くれ」といわれ、高い台で 演説を はじめた悪魔が おなかがへっても お百姓たちは、紳士が あたまでパンをつくりだすとおもい、だれも食事を運びません。ふらふらになった 悪魔は 階段を あたまでかぞえるように、ゴツーン ゴツーン と落ちていきました。悪魔が おちた地面には、大きな穴。

 「あたまが われるように いたくなることもあると いっていたが、こりゃー ほんとうだ」(イワン)、「わしらにゃー、とっても まねは できんわい」「いままでどおり、手や からだをつかって はたらくとしようか」「そうしよう、そうしよう」(百姓)。

 みんなは、草刈りの鎌や鋤をかつぐと 畑へもどります。イワンの国では、みんな手ではたらき、手には まめができています。セミョ-ンやタラスや悪魔のように あたまだけで働こうとするものは、とてもこの国では、くらしていけません。

 

 原作よりみじかくなっているので 評価はむずかしいのですが、物足りなさがのこります。

 「ばか」は 愚直さをあらわしているのですが、この紙芝居では、このあたりがつたわってきません。さらにちっとも怖さがつたわらない悪魔の役割も単純すぎます。