世界むかし話20 カナダの昔話/高村博正・篠田知和基:編訳/ほるぷ出版/1991年
むかし、あるところに、おばあさんとひとりむすこがすんでいました。むすこはたいそう内気で、もう五十近いというのに、まだよめさんもありませんでした。いくらおばあさんが結婚するようにいっても、いっこうにその気にならないのです。
ある日、おばあさんは年頃のむすめが三人いる町の知り合いのところにでかけ、「おもてなしをしますから」というむすめの家に、むすこをせかして、晴れ着を着させて、おくりだします。
むすこがいやいや歩いていくと、見知らぬおばあさんがやってきて手助けしようといい、三本のろうそくをわたし、むこうの家についたら、どうしたらいいかおしえてくれました。
やがて日が陰ってくると、主人はランプをつけるようむすめにいいますが、むすこは三本のろうそうをとりだし、これをつけるよういいます。父親は一本は部屋のドアのうえ、一本は客間、三本目は台所におきました。けれども三人のむすめたちは、そのむすこをからかってやろうとおもっていて、いなかもののむすこをばかにして、じぶんたちだけでおしゃべりを楽しんでいるのでした。
十時になって、長女のローズが、むすこを寝室に案内すると、むすこは、きものもくつもぬがずに、ベッドにとびこみました。ローズがろうそくをふきけそうとすると、どうしたことかブーッと大きなおならがもれてしまいました。むすこをさんざんばかにしていたローズは、「パパ! ブーッ・・ あたし、この人すきよ! ブーッ。。ねえ、おりてきて! ブーッ」とさけびますが、おならはおさまりません。
二番目のマリーが ろうそくをけそうとしますが、「ブーッ・・ あたしもこの人すきだわ。パパ ブーッ・・ すぐにおりてきて!」。 三番目のデリマがろうそくをけそうとしますが、やっぱりおなじ。
主人が、じぶんで ろうそくをけそうとしますが、おならが とまりません。母親もおなじ。「なんですね。あなたまで。こんなろうそくくらい、けせなくてどうします!ブーッ、あら、あたしもおなじ病気に・・・ブーッ・・かかってしまった! ブーッ・・ お医者さんを・・ ブーッ・・ はやく! ブーッ・・ほら!」
お医者も、おならが とまりません。司祭がやってきて、ろうそくをじっとみていいます。「さいきん、ここにお客がきませんでしたかな?」「いま部屋で、ブーッ、寝てますがね。ブーッ。ローズ・・お客さんをおこしておいで、ブーッ」
司祭が、「いったいぜんたい、なんだって、おまえさんは、この人たちにわるさをするんじゃ?」というと、むすこは、「わたしはよめさがしにここにきたんです。よめさんをくれればすぐに病気をなおしてあげますよ!」と、こたえます。
父親は、「三人のうちだれでもいいからくれてやる。ブーッ・・ おねがいだから、ブーッ・・とめてくれ。」といいます。
ただ、みんなのおならはがとまったかどうかは、わからないという結末。