さじかげんだと思うわけッ!

日々思うことあれこれ。
風のようにそよそよと。
雲のようにのんびりと。

五十一

2007-07-07 21:11:23 | 『おなら小説家』
それから、何とか自信を取り戻した草田男は、『屁の如く』の続編の執筆に精を出す日々であった。
変わったことといえば、作品を恵実が読まなくなったことであった。
それについて、草田男から話があったわけでもなく、恵実もあえて聞き出すことはしなかった。
恵実はそれでも文句はなかったし、草田男もそちらの方がきっとうまくいくと思った。
一部、過敏な愛好者がちょっとした作風の変化を感じ取ったようで、手紙などに書いてあったが、その他の読者からの反応は皆無に等しかった。
報道も同様であった。

第三回目が掲載されると、桂木金五郎氏から電話がかかってきた。
内容は、やはり作風の変化が気になったらしい。恵実さんとの仲に、何かあったのではないかと心配になったらしい。
しかし、電話を最初に取ったのは恵実であったし、口調からしても深刻な問題があるようには思えなかった。
金五郎氏は、とりあえず安心した。
草田男を電話口に呼び出すと、また遊びに来てくれるようにと、声をかけた。今回の作品は、これまで見た中で、もっとも草田男君らしい…とも言って褒めた。
金五郎氏からの電話を受けて、なぜか草田男は目頭が熱くなった。
…自由になったのだろうか、と草田男もまた安心した。

それから、一年に渡り作品を書き続け、単行本の企画もできあがった。
そんなときであった。衝撃の事件がおきた。

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