さじかげんだと思うわけッ!

日々思うことあれこれ。
風のようにそよそよと。
雲のようにのんびりと。

二十六

2006-11-28 21:30:53 | 『おなら小説家』
恵美は、手際よく座布団を敷き、記者を席に着かせた。まだ数は少ない。10人前後である。
あなたーと、恵美は草田男を呼ぶ。
草田男は、トイレに隠れていた。呼ばれても、ホイホイ出て行くわけにはいかない。
どうするものかと、草田男は悩んでいた。しかし、すでに進むべき道は決まっている。何せ、部屋の中まで引き入れてしまったのだから。
あなたー、ちょっと手伝ってくださいな。と恵美は繰り返す。
記者たちは、どこからその本人が出てくるのか、あちこちをキョロキョロしている。
草田男はソロリとはい出てきて、ひとまず台所に逃れた。
台所には、恵美がいて、お盆に茶碗やせんべいを乗せていた。
あなた、もうどうしようもできませんよ。と恵美は笑みを浮かべて、お盆を草田男に押しつけた。
草田男は、観念した。

居間に草田男が現れると、一同は愕然とした。
現れたのは、予想に反して実業界の神の子・小奈良草田男だったのである。
声も出ない。
草田男は手取早くお茶を並べて、机の中央にはせんべいがはいった受けを乗せた。そして、そそくさと席に着いた。
その隣には、恵美が座った。
小奈良草田男こと燃圓の、全日本推理小説協会賞受賞の記者会見が始まった。

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