さじかげんだと思うわけッ!

日々思うことあれこれ。
風のようにそよそよと。
雲のようにのんびりと。

五十四

2007-08-15 21:57:35 | 『おなら小説家』
かつて桂木金五郎が編集長を務めていた雑誌『炎』に、その金五郎氏を痛烈に批判する記事が載ったのである。
「巨人に踏み荒らされた世界 ~桂木金五郎の遺産」
と題されたその文章を書いたのは、誰あろう斧子根立起であった。
内容は痛烈そのものであった。
まだ死して一年経つか経たないかの、小説界の巨人に対する批評記事としては、異例であった。しかも、まだ30程度の若造が、である。
しかし、その文章を書いたのが芍田川賞受賞者であったために…いや、あったからこそ、異常な物議を醸した。
普段、文壇の話題など取り上げないテレビでさえ、広く取り上げ、その文章に関しては批判もある一方、一部では讃辞を持って迎えられた。

もちろん、この記事は草田男も読んだ。
しかも、草田男に関わりのある人物が巻き込み、巻き込まれている。
記事を読んだ草田男は、震えが止まらなかった。
なぜだと考えた。なぜ、あいつはこんなことを書いたのか。
草田男の知る限り、二人の面識はなかった。ということは、致命的に二人の作品感がかけ離れていたと言うことである。
勉強家である立起が、金五郎の小説を読んでいないはずはないだろうし、常々推理小説界の行く末を案じていた金五郎が、新進気鋭の立起の作品を読んでいないことはなかった。
金五郎は、立起の作品を危険であると断言していた。
つまり、逆に言えば、立起も金五郎の作品を気に入っていなかったであろうと思う。
しかも、その文章は金五郎の作品批判だけに止まらなかった。
金五郎の後継と謳われる、小奈良燃圓についても及んでいたのである。

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