さじかげんだと思うわけッ!

日々思うことあれこれ。
風のようにそよそよと。
雲のようにのんびりと。

五十二

2007-07-20 21:36:29 | 『おなら小説家』
巨星、墜つ。
推理小説界の重鎮、桂木金五郎氏が死去した。
その報せは、死去した直後に草田男の元にもたらされた。
午前三時を回ったときであったか。電話のかねにたたき起こされ、寝ぼけ眼で受話器を取ると、そのあまりにも衝撃的な報せを聞かされた。
電話の主は、金五郎氏の甥であった。

急いで準備をして、帝都から修善寺へと向かった。
まだ電車は始発の時間を迎えていなかったし、乗合自動車で向かうことにした。
もちろん、恵実も同行する。
車の窓から、外の様子を伺う。夜が、明けようとしている。
日の出まではまだ時間はあるが、太陽の光はすでに日本を照らしている。
車の中はすっかり静かで、時間が時間であったし、雰囲気も明るいわけではなかったので、運転手もすっかり口をつぐんでいた。

金五郎氏の病状は、あまりよくなかったらしい。
それでも、環境の良い修善寺に移り住んでからは進行も鈍り、故に快方に向かっていると思われていた。
しかし、ただ「鈍」っただけであり、進行が止まったわけではなかったのだ。
そして、その命の火が今日潰えたというわけであった。
いうなれば、この日は来たるべくしてきたのであった。

推理小説界の重鎮がなくなったことで、その跡目がだれになるかが注目されていた。
その一人が、誰あろう小奈良燃圓…つまり、草田男であった。

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