入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

       ’24年「夏」(37)

2024年07月12日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 激しく降る雨音がずっと続いて夜が明けた。こんな天気でも牛を降ろすのかと案じつつ、下からの連絡を待っていた。その間も、今朝は妙に囲いの牛が鳴くと思い外に出たら、すでに何台もの車が検査場の近くに停まっていた。
 8時を過ぎていた。予定通り畜産課の職員は6時に下を出発して、すでに集牧(牛を集めること)を始めていたのだ。急いで行ってみると、ずぶ濡れになったS君がすでに8頭を検査場の囲いの中に入れてあると言う。驚いた。
 
 多分、引き取りに来た先方の担当者に、何か牧守が文句でも言い出しかねないと牧場担当のO君が恐れて、寝かせておいた方がいいとでも判断したのだろう。
 もちろん、あれほどの苦労をさせられた牛たちである、言いたいことはたくさんある。下牧・引取りの決め方にも釈然としない思いはあった。
 ただ、今回は取り敢えず、何事も波風を立てずに済ませようとするO君の気持ちも分からないではないと、挨拶はしたが、先方と言葉を交わすことは一切避けた。

 円安が続き、輸入品の値段が上がっている。飼料代にも同じことが言える。1ドルの物を買うのに以前だったら120円で済んだのに、今は160円支払わなければ買えない。
 輸入飼料に頼らなければならない畜産業の人たちが、飼料にかかる費用を節約するために「放牧」を考え付くのは当然過ぎる流れだ。ところが、それに問題が起きたとなれば、牛を引き上げるしかないと考えるのも無理がない。和牛にはそれだけの経費がかかっている。
 牛を預かったJA上伊那の立場からしても、大した金額にもならない放牧料のために、これ以上の問題は避けたいと思うだろう。
  
 豚は一度に何匹もの子を産むよう多産化が進み、そして半年で出荷できてしまう。他方牛は、一度に1頭しか産めず、育成には2年以上かかる。豚の飼料の方が牛のものより高いらしいが、それでも牛を育成するには豚と比べて比較にならないほど経費も、手もかかる。
 無念な思いを飲み込み、短い縁で終わった牛たちをそぼ降る雨の中に見送った。

 畜産のことなどにあまり興味がないかも知れない。が、これも牧から発する呟き、ご理解のほどを。雨は依然止もうとしない。

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 本日はこの辺で。





 
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