モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

自分の考える理想的なオーディオルーム像の暫定的総括(総論)

2021-08-31 08:16:52 | オーディオ
何年か前に石井式風リスニングルームを実際に建設して、部屋として改善の余地があることを測定したり室内音響について調べてみたりするうちに気付いた。
そこでどういった室内の響かせ方が良いのか過去の文献などを参考にしつつ、自分の好みも加味しつつ、考察した。
ところがリスニングルームの建築が大規模で変更が大変である割に、完成時の特性が不確実である、特性が予想通りだとしても個人の嗜好に合うか分からない、嗜好が経年と共に変化することに対応できないことが一番の問題であることに気付き、視覚的に調音しても見苦しくならず、しかも特性を本格的に可変できることに重点を置いた設計が望ましいことに気付いた。
ただよくよく振り返ってみると、現在のリスニングルームへの不満は響きだけではないことに気付き、どの辺りを改善すると不満が解消されるのかを考えた。割と無意識や深層の心の不満であったため洗い出すのに時間がかかったし、まだ未発掘のものがあるかもしれない。
最も代表的なものは居住性であり、響きの特性の良さを重視すると犠牲になりやすい部分であるが、人間は測定器ではない。特性を良くすることで鑑賞体験を良くすることは理にかなっているが、特性を良くすることにばかり傾倒しすぎて室内を不快な環境にしてしまい鑑賞体験の質を損ねてしまっては本末転倒である。その辺りを高いレベルで折り合いを付けることが理想的なリスニングルームと考えるようになった。

ある程度その辺りのエッセンスを列挙して、後で自分で見返すために総括した今回の記事である。


・オーディオルームの前にプライベートリビングルームとして良い部屋にする。

室内音響としてそれなりに理想的な環境とすれば床面積として大きく、上階を作れない程度に天井高が高くなる。それなりに面積を取る部屋がオーディオリスニング用途以外に向いていない、しかも真剣なリスニングに特化していてリラックスした鑑賞に向いていないのは勿体なく不適切である。
仮に延べ面積がすさまじく大きい大豪邸の一角に作るのであったとしても、用途が極端に限定された部屋は利用する時の心理的ハードルが大きいので滅多に使わなくなってしまうのが自明である。
音楽を聴かないときでも滞在したいような部屋にまずはすべきで、機器や部屋の特性の良さの恩恵を預からないようなカジュアルなリスニングもしやすい部屋にするのが前提と考えている。

・窓は鑑賞用と間接照明的な採光用で室内音響に配慮した上で付ける。

24時間365日同じ光学的に安定した環境でなくなる上に、反射音の響きが悪いガラス窓を入れるメリットは特性上は存在しない。だがリスニングルームは生身の人間の視聴体験を対象としたものである。24時間365日光の刺激が同じ部屋というのは飽きを感じる原因になる。窓に内扉を設置すれば窓ガラスを簡単に封じることもできるし、内扉で音響調整もできるから致命的なデメリットになりづらい。
朝焼けを見ながらペールギュントの朝を聴く、雨のしずくを見ながら雨だれ前奏曲を聴く、名月の夜に月光ソナタや月の光を聴く、そういったことは窓がなければできないことである。
そういった時季の移ろいを鑑賞しつつ音楽の鑑賞ができる部屋を理想と考えるか、若干の特性の有利のために窓を排除した部屋が理想と考えるか、どちらを理想的なリスニングルームとするかというのは一考に値するものである。

・真剣な音楽鑑賞以外に利用できる生活の環境を用意する。

防音や音響を完璧に行えば真剣なリスニングの鑑賞体験の質が向上することへの異論はない。ただ音の細部を聞き逃さないような真剣な鑑賞というのは聴き疲れするような聴き方である。先史時代で言えば狩猟の際に獲物の場所を探知する、外敵の気配を察知する時に用いられる機能を動員して行うものであり、毎日長時間利用するのはは苦痛な面も否めない。
リラックスした状態でも利用できるように柔らかな採光や照明、神経を澄ましすぎない適度な環境音、ながら聴きができるようなアメニティなどを用意すべきと考えられる。
当然ながら真剣なリスニングができなければ本末転倒なので、シリアスモードとリラックスモードで部屋のオンオフができるような機構が照明や防音に必要であるとは思う。

・防音があまり必要ない立地

高S/Nのためにリスニング中に環境音が入ってくることは本格的なリスニングであれば避けるべきだが、強力な防音と常に静かすぎる環境は居住性にとってはネガティブな影響もある。
そもそもオーディオリスニングはホームシアターや楽器演奏よりも比較的騒音レベルは低くなり易いので立地をどうにかすれば強力な防音は必須ではない。
理想を言えば近隣に距離を置きつつ母屋からも物理的に隔離した離れのような建築物で閑静な立地が理想だろう。その条件であればそこそこの防音で十分であり、そこそこの防音で済むなら居住性も犠牲にならずに済む。

・十分なスペースと調音スペース
以前考察したように、部屋の響きを客観的にそれなりに良いものにするには壁とスピーカーとの距離を適正なものにしなければならず、反射のさせ方も工夫が必要である。
適正な距離にすることを考えると相応の広さが必要になるし、時間軸としてほどよく分散された望ましい反射の仕方を考えると反射壁に相当する部分に厚みを持ったスペースと反射挙動の非統一性が必要である。

各論は以前の記事の中にとっちらかっていたり、ろくに考察していなかったりするが総論としてこのあたりを留意すると良いのではないだろうかというのが現時点の自分の考えになっている。
オーディオリスニングは波動物理学と電気工学と生理学と心理学の混在する奥深さは感じていたが、リスニングルームそのものを考えると、部屋はそれ以前に所有者の生活の場であることを忘れてはいけなかった。生活の場というのは人生の一部を過ごす器であり、その事実と向き合わなければ理想には到達しないと思う。まだ十分考察しきれている感じではないが、そこを深く追求するのは学問的なところから外れてしまいかねず、正解を見つけづらい分野かもしれない。また考察する機会を持ちたいところではある。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
«  何は突き詰めるべきで何はバ... | トップ | オーディオファイルにとって... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

オーディオ」カテゴリの最新記事