私たちは能登の鉢伏山でエコツアーを構築しようとしています。
それは能登半島における里山の自然・文化の基層をこの鉢伏山が持っているからであり、
大きな意味での「能登ブランド」のひとつの焦点として世界へ発信できる価値を信じるからです。
ここで大切なのは「自然環境の保全」や「自然保護」の考え方です。
世界の多くの地域では自然保護と人の活動は対立します。人の活動は自然破壊であり、
自然保護運動は人による環境破壊をどれだけ食い止めるか、人の活動をどれだけ排除するかと同義です。
しかし日本は違います。
日本の風土は人が手を加えてきた自然が本質です。つまり二次的自然に他なりません。
国土の大半が「里山・奥山・里海」なのです。
何百年も営々と人が手を加え続けてきたことで出来上がった風土は持続性と多様性のある自然の姿です。
日本民族は抑制ある智恵と働きで自然とのベストバランスを実現しました。
日本の自然は強い回復力で豊かな恵みをもたらし続けました。
「里山」という自然と人間の幸福な一致を実現したシステムを日本人は世界に誇ってよいでしょう。
世界のキーワードSustainability(持続可能)やDiversity(多様性)の概念を
日本は独自の叡智として語ることができるのです。
したがって日本の場合、人が手を入れなくなることは自然保護ではなく自然「放置」です。
「放っておけば元の自然にもどるんじゃないの?」というのは大きな間違いです。
なぜなら一度人の手が入った自然は原生だったころの種や環境が失われているためです。
人が関わらずに放置されれば自然のバランスは崩れ、多様性は失われ、
原生の自然にも戻らない荒れた自然となってしまいます。
残念ながら日本の各地で「自然放置」がすすんでいます。
奥能登の鉢伏山も例外ではありません。