”あえのことシリーズ”のさらにつづきです。初めての人は①からどうぞ。
さて、「田の神様」はタノカンサーともいわれます。究極的には種籾(来年分の稲の種)のことです。
そして畑もつかさどる豊穣と生殖の神です。よって食材は象徴的な意味合いを含みます。
たとえば二股大根は人の形で子孫繁栄というのは分かりやすいシンボルです。
収穫の幸です。
米・銀杏・昆布・栗・黒豆などが農具(一斗箕)の上になれべられます。
煮しめ。うまそー。能登に来て何が旨いかって、これですよこれ。
メインディッシュのご膳もやはり箕の上に置かれます。
収穫物を入れる農具なので喜ばしい気持ちが表れているように思います。
田中さんの御口上によりご説明いたしましょう。
「今日の料理は、小豆飯を山盛りにしてございます。汁物は納豆汁でございます。
平のものは椎茸、大根、人参、里芋などたくさんご用意してございます。
お刺身はブリの刺身でございます。お頭はハチメでございます。
それではお神酒もたくさんございますのでお注ぎいたします。」
(能登町広報2009年1月号より抜粋)
「あえのこと」は料理が重要な一面を担っている行事です。
食材のいわれには諸説あって各家庭により様々に解釈され、
それだけでも民俗学の研究課題になりそうです。
またしきたりも決まった形式はなく多様です。
いずれにせよ神と人が共に食す形態は同じで、皇室の新嘗祭との共通性も指摘されているそうです。
それにしてもこれだけのごちそうを用意するのはたいへんな労力です。お風呂掃除もあります。
農家のお母さんたちはすごいです。お父さんたちもがんばります。
ちなみに栗の木の箸は一尺二寸で12カ月を表し、その日の朝に家長が山で集めて削り出したものです。
祈りと感謝の心で共に恵みを分かち合う家族の姿が残っていること、それこそが奥能登の宝です。
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