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二度目のコリオレイナス (の前後の話)

2014-05-10 | 2014年、英国の旅

■1月28日 続き■

少し温まった後、ついに「コリオレイナス」が上演されるドンマーへ向かう事に。
開演まではまだ2時間半程早かったのですが、キャストの"入り"に出くわせるかもしれない、という魂胆がありました…。
そう、私は前回、期待を見事に打ち砕かれていたものですから、
少しでもマーク・ゲイティス氏に会えるチャンスがあるのなら、そのタイミングに賭けたい!と思っていたのです。
万一のために、差し入れも手提げに入れて持ってきていました。

ところが、案の定、劇場入口でセキュリティにつかまり、誰を待っているんだ?と質問された私たち…。
Sさんが素直に"Mark Gatiss"と答えると、ここで待つ事は出来ないから開場時間に戻ってこいと注意を受けました。
待つなら終演後にしろと。

(終演後に待ったって会えないじゃないか…)
前回のことを思い出して内心ブツブツ文句垂れながらw、その場に留まっていても仕方がないので立ち去りました。
とはいえ、その日はあちこち十分歩き回って疲れきっていたし、他に行くところもないので、
劇場のある建物の通路で開場までしばらく待つ事にしました。

コヴェント・ガーデンの北に位置する劇場の辺りは、マーケットからも近いので平日でも老若男女、人通りが多い一帯です。
行き交う人々(主にイケオジと犬)を観察しながらしばらく2人で話していると、
蛍光色のバイク用反射ベストを来て、ヘルメットを持ったブルータス役のElliot Leveyが、私たちの横を通り過ぎました。
Elliotさんは、コリオレイナスが敵対する護民官ブルータスに扮していますが、
不思議と憎めないようなキャラクターで、Sさんによると、通り過ぎた時彼は鼻歌を歌っていたとか。
鼻歌歌いながら通勤! 中の人にも好感持ってしまいました。

Elliotさんが劇場の正面入口の裏手に廻って歩いていったので、
ブルータスは裏側派なのかもね…と分析しながらも、そのままその場で喋っていました。
若手の役者は、人通りの中から正面入口へパラパラと入っていくようでしたし、
どちらでないといけないというような決まりはないようです。

そうして、いつのまにか開場を待っているはずの時間が普通に雑談をするひとときになっていた頃、
通りを観察していたSさんが突如私の腕を掴んで、興奮を抑えるような声で私に言いました。
「来た!」
視線の先には、向かい側の歩道で誰かと抱き合いながら挨拶を交わしているマークがいたのでした。
私は慌ててSさんの手を引いて駆け出し、挨拶の相手と別れたマークを追いかけました。

普段声を張って人を呼び止めることなど皆無な私ですが、このときばかりは
「ミスター・ゲイティス!」と必死で叫んでいました。
すると、声に反応した彼は、手を伸ばしかけた劇場の扉の前で
「やあ、こんにちは」と足を止めてくれたのです。
紺と白の縞のマフラーとコーデュロイのジャケット、
いつもより低い声でしたが、確かにいつも通りの彼です!

私はもう、呼び止めるだけに必死で、その後の彼の英語を聞き取る余裕が残っておらず、
「日本から来ました、差し入れがあるんです」
と、それだけを辛うじて言える程度でした。
Sさんからのプレゼントも引き受けて手渡すと、
「君たちは今日のショーを見るの?」とマークから訊かれました。
「そうです!そうです!ここで!」
ここで、って今思えばあたりまえなのですが、この時は舞い上がって自分の言っていることも分からない状態でした。

私が答えた後、再びマークから何かを質問をされたのですが、
ガッツリ見つめられているという状況に完全に頭が沸騰して思考停止になっていた私は、
(瞳の中に私が!ダメだ!頭が!理解不能!)
Sさんに(助けて!)と救援信号を送ったのでした(苦笑)。

今度はSさんに向かって同じ質問をするマークの言葉を聞いていると、
ショーの後に外で待っているかと聞いているようでした。
Sさんが、はい!と答えると、彼はやはり急いでいるようで「わかった、それじゃあ今夜は楽しんで!」と中に入って行きました。

手を振って見送った後、私は倒れ込むようにSさんに抱きつきました。

去年放送された彼の作品に感動していた私は、それを一言でも伝えたくて、
でも、直接喋る自信はなかったので、手紙に認めておきました。
去年、それを渡せないまま、この日まで取っておいたのですが、
もう直接渡せないままかもしれない…と諦めかけていたのです。

私が彼に引き合わせるどころか、Sさんが見つけてくれたお陰で、諦めかけてたことが実現しました。
嬉しくて、周りを気にせず号泣する私…。
私の体を受け止めてくれたSさんになだめられながら、地下の売店で少し気分を落ち着けることにしました。

ミウモさん喋ってたよ。そうだね、ガッツリ目があったよね。外で待ってるかって言ってたよね。
なんども反芻するようにさっき起こったことを思い出す私たち。
待ってるって確認したってことは、終わった後にも会えるってことじゃないのかな?
もし会えるなら、見た感想を言えるようにしないとダメなんじゃないのか?
なんだか大変なことになった気がしました。

きっと、自分のファンが来ていると分かってるから、
マーク自身の演技への気合いも違ってくるんじゃないかな、等と、
想像を膨らませているうちに、開場時間が近づいてきます。
迷惑なファンだと思われたかもしれませんが、
私たちが見にきている事を彼が知っているというだけで、とても光栄に思えました。

劇場では、去年は売っていなかったドンマー版の戯曲も販売されていました。
プログラムは(雨でぐしょぐしょになったけど)購入済だったので、戯曲だけ買い、劇場へ。
私たちの座った席は2階下手側。前の席の人が身を乗り出すと舞台の視界が制限されるような上の席です。
端の席だったので、全てのお客さんが入るまで邪魔にならないように立っていると、
同じ日本人の方に席の位置について質問されました。
誰か目当てで見にきたのか訊いてみたけど、開演間近だったので聞き出せませんでした。



内容の感想については前回の観劇の記事を見ていただくとして、
この上演の翌日は、日本でも上映されたNT Liveのカメリハが予定されていました。
劇場から出ると、明日の準備のために外にデカイ中継車や機材車が並んでいて、劇場入口周りも柵で囲われた状態。
いつもであれば、セキュリティから出待ちの指示があるのですが、
この日は機材の運搬があるから出演者は出てこないという説明があったのです。

私は、そうは言っても、セキュリティの発言はいつだってカモフラージュだから、
出てくることもあるだろう、という、またしてもほのかな期待を抱いていました。
だって、外で待ってるか訊かれたのに、待ってなかったら嘘になっちゃうじゃん。

そう思いながら1時間以上待ってみましたが、やはり誰も出てくる気配はなく。
それでも「あと15分。あと15分したら帰るから」と粘って待ってみました。

結局テッペン回っても誰も出てくることはなく、さすがに諦めてホテルに帰ることに。
後から分かったことですが、この日役者はあのEliotさんが入っていった裏口から帰宅したと知りました。
私たちも裏口は見て廻りましたが、既に時は遅かったのです。

ホテルまでは口数少なく帰りました。
ガッカリしたということもありましたが、こんなに必死になる自分がちょっと情けなかったのです。
憧れの人を煩わせるような行動をして、自分は本当に嬉しいのかな…という疑問も浮かんで来ました。
そして、一緒にいるSさんに頑固を通した上で、この日一日を寒い中引っ張り回してしまい、
「出待ちはこんなことよくあるんだから!(凹んだら)殴るよ!」と叱咤される私…。
本来なら案内するくらいの気持ちでいないといけないのに、本当に情けない…。

帰ってからとりあえずシャワーを浴び、泥のようにベッドに沈みこみました。
またしても出待ちには失敗だ…。
今日のことは途中までは喜んでおいて、最後の方は、しばらく忘れよう。
明日明後日はロンドンの観光に集中しよう。
そう思いながら、眠りに着きました。


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