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たすくの空中散歩

千葉県我孫子「石臼と麦」店主、相澤たすくの農作業や工作や
日々の一喜一憂を記録していきます。

人間の野菜だけが腐る!?~無肥料栽培<3>

2010年12月20日 08時52分58秒 | 一喜一憂

<人間の野菜だけが腐る!?>

世界ではじめて、不可能と言われていたリンゴの無農薬栽培を実現させた「奇跡のリンゴ」で一躍有名になった木村秋則さんのリンゴは、切って置いておいても腐らずにしおれて甘い香りを発していると言います。
http://www.cheziguchi.com/kimura_sp.htm
木村さんのりんごの腐敗実験

野菜や果物は、放置しておくと腐ってしまうというイメージが当たり前の僕たちにとって、腐らないリンゴはまさしく奇跡のように映るかもしれません。
ですが、ふと考えてみると自然界の植物や木の実はみんな腐らずに「枯れて」いくのが普通のようです。
人間が育てた野菜だけが異臭を放ち、醜く腐っていく?一体全体どういうことでしょう?

<腐る野菜、腐らない野菜>

ではここで「ほんとの野菜は~」に掲載されている野菜の腐敗実験をご紹介してみようと思います。
スライスした野菜を煮沸したビンに入れ、適度にフタを開けながら保管して、時間の経過とともに野菜がどのように変化していくかをみるものです。

まず最初は農薬や化学肥料等を使って育てた「一般栽培」のきゅうりと、自然の有機物を肥料にした「有機栽培」のものと、農薬も肥料も使わずに育てた「自然栽培」のものです。


結果はご覧のとおり、左から自然栽培、有機栽培、一般栽培のものです。
肥料を施して育てた野菜は見るも無残な姿になっていますが、無施肥栽培のものは形を残しています。
同じ実験をお米と柿で試してみた結果でも以下の通り。

「有機栽培の米」⇒腐って悪臭を放つ
「自然栽培の米」⇒甘い香りを漂わせ、発酵して甘酒になる

「一般栽培の柿」⇒カビが生えて腐っていく
「庭先の柿」⇒甘い香りを漂わせ、柿酢になる。

さらにこちらは、別の方のネギの腐敗実験です。
http://www.thanksai.jp/m/blog/index.cgi?mode=individual&eid=123


どうやら、野菜は自然の草木と同じようにもともと腐らないのが本来の姿で、人間が肥料を施して、もとのバランスを崩してしまったものだけが哀れにも腐ってしまうようです。
しかも場合によっては一般栽培のものより、有機栽培の野菜の方が腐敗状況がひどいようです。
では「安心、安全」なイメージの有機野菜とは、実際どんな野菜なのでしょうか?


<有機野菜にもいろいろある>

有機栽培とは、「化学肥料や農薬などに頼らない、昔ながらの農法を復活させよう!」との意気込みで始まったもので、肥料が化学的に合成されたものでなく、動物の糞尿や米ぬか、草木の朽ちた堆肥など、自然にあるもの「有機物」を肥料として育てている野菜ということです。
ただし農薬使用の有無は生産者さんそれぞれで、有機JAS規格認定の農薬の数も年々増えて、現在では29種類の農薬の使用が認められているとのことです。

さらに腐敗実験では、同じ有機栽培でも、肥料の施しかたによってその結果にはずいぶんと差があることがわかっています。
というのは一口に「有機肥料」といってもその種類や施しかたは個人によって様々だからです。

肥料の種類について言えば大きく分けて家畜糞尿などの「動物性」のものと、腐葉土堆肥や米ぬかなどの「植物性」のものがあって、両方を組み合わせて使うのが一般的です。
そして腐敗実験では動物性肥料の割合が多いものほど腐敗状況も臭いも酷い、という結果が出ていて、植物性のものだけでバランスよく育てた野菜なら、無肥料野菜よりも生命力のある野菜に育つこともあるようです。

人間のたべものでも、動物性のものより植物性のものの方が良い、と言われていますが、それは植物性のもののほうが構造がシンプルで分解にかかるエネルギーが少なくて済むから、「楽」だからではないかと僕は考えています。そのことについては、また別の項で書こうと思います。

ちなみに糞尿堆肥は、昔から伝統的に使われていましたが、昔はこえだめを作って長時間かけて完熟・発酵させて虫や病原菌が寄って来なくなってから使っていたそうです。
ところが、現在は化学培養された発酵菌などを使って短期間で畑に入れてしまう場合が多いようです。そこに虫や病原菌が湧くというのは考えてみれば当然なのかもしれません。

というわけで、「安心、美味しい、体に良い、環境に優しい」などのイメージのある有機栽培ですが、その栽培法によってピンからキリまであるということです。


<発酵と腐敗>

さて、腐敗実験の野菜をさらにずっと放置しておくと、やがてどちらも「水」に還るそうです。

「自然栽培の野菜」⇒発酵して酒になって酢になって水になる
「肥料を施した野菜」⇒酒にも酢にもならず、ただ腐って水になる

最終的に行き着く場所は同じ、だけどその過程が違うのです。
ではこの「発酵」と「腐敗」は現象としては何が起きていて、何が違うのでしょうか?

実はこの二つ「微生物が分解によって別の物を生み出す」という同じ現象で、どちらも「腐る」ことに変わりはないようです。

解りやすく言えば、腐って食べられなくなる(敗ける)のが「腐敗」で、腐ってさらに美味しく、しかも長持ちするようになるのが「発酵」ということのようです。
人間目線の勝手な取り決めなのかもしれませんね。

だから「ほんとの~」でも僕のブログでも解りやすくする為に「バランスのとれた野菜は腐らない」と表現していますが、実際には「腐敗しない」が正しい表現のようです。

ちなみに体の中で食べ物がどう分解されているか、腸内環境が発酵状態か、腐敗状態かというのは「大きな便り」や「小さな便り」や「おなら」で判断できるそうです。なるほどー。

===

余談:実は前々からブログに書きたかったことがあって、我孫子に引っ越してきてから野菜中心の食事や規則正しい生活をするようになって、食生活の変化を(最初父からもらったイモばっかり食べていたこともあって)一番実感した出来事が「おなら」でした。
プーっとひとガス放出する度になんともいえぬ発酵したような温泉のような良い香り!
もうどんどんおならしたくなってました。
だから、おならが臭いのはおならのせいじゃなくって「食べ物」です。
「汚れているのは土なんです!」 byナウシカ

===


<野菜は本来腐らない>

片や人間がバランスを崩してしまった野菜は、虫に食われ、病気にかかり、さらに生命力を奪うものを生み出しながら一刻も早く土に還ろうとします。

片や自然のままの野菜は、生命力を増やすものを生み出しながらゆっくりと長生きをしながら土へと還っていきます。

どちらもそれぞれに美味しい野菜ですが、みなさんはどちらの野菜が食べたいでしょうか?


<無肥料野菜は生命力に溢れている>

もしご近所の自然派食品などを扱うお店に無肥料野菜が売られていたら是非手にとってみてください。
見た目は普通の野菜なのに、びっくりするほど重たいはずです。

無肥料野菜は、野菜本来の力を使ってゆっくりじっくり成長するので、太陽のエネルギーをたっぷり浴びて、実のぎゅっとしまった力強い野菜になります。

なぜ、無肥料の野菜がたくましくなるのか、そのことについて河名さんの解説を原文のまま掲載させていただきます。

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「今まで食べたことがないくらいおいしかった」「びっくりした」
はじめて自然栽培の野菜を食べたお客さまからこんなありがたい声をいただくことも多いのですが、僕はそれについてこう考えています。

野菜だって、野生動物と同じ。本来、エサは与えられるものではなく、自分で捕獲しないといけない環境で生きているため、いつも軽い飢餓状態です。だから、獲物を見つけると必死に追いかけます。そして、自分で生きる力を身につけ、たくましく育っていきます。
なぜ自然栽培の野菜が生命力に満ちあふれたおいしい野菜になるのかというと、人為的に与えられた肥料ではなく、自分の根を一生懸命伸ばし、土本来が持ち合わせた養分を吸い上げて育っているからだと思います。軽い飢餓状態だからこそ、自分で栄養を求めて地中深く深くに根を下ろしていく。そうすることで野菜も強く育ちます。
これが自然界の法則であり、本来の野菜の姿であり、自然栽培において無肥料でも立派な野菜が育つ理由です。

本来であれば、なにも与えない「土そのもの」が肥料の塊であるはずなのです。
根が元気に伸びれば、土壌微生物の動きも活発になって土を温め、柔らかくしてくれるため、植物はさらに根を伸ばせます。根が伸びれば伸びるほど、しっかりと根を張るため、地上に出ている部分も元気に育ちます。おいしい野菜が育つということです。
ここに、とてもいい循環が成り立つようになります。

自分の力で一生懸命育った野菜。おいしくないはずはない、と思うのは僕だけでしょうか?

『ほんとの野菜は緑が薄い』p94~95 「一生懸命育った野菜はおいしい」より

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次回:野菜に学ぶ~無肥料無農薬という生き方~無肥料栽培<4>へつづく…


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