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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

前立腺細胞は「再プログラム」されて腫瘍を形成する

2015-10-23 06:37:14 | 
Prostate cells undergo 'reprogramming' to form tumors, study finds

October 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151012115707.htm

ダナ・ファーバー癌研究所のMatthew Freedman, MDとMark Pomerantz, MDを中心とする研究チームは、
正常な前立腺の細胞を癌に向けて刺激するprod『鍵となる一連のイベントについての初めての機構的な洞察』を同定したという
それは前立腺の腫瘍がどのようにして始まるのかについて明らかにする

Nature Geneticsに報告された研究によると、悪性の増殖を促進するのは前立腺細胞のDNAコードの書き換えではなく、遺伝子のマスター調節因子の再プログラムである

これは長年の疑問だった
なぜなら、前立腺の腫瘍には遺伝子変異がほとんど見つからないからである



研究者が細胞の再プログラムを苦労して発見したspotのは、複数の患者から得られた癌化細胞と正常な前立腺細胞とを比較していた時だった

この再プログラムは『エピジェネティック/epigenetic』と呼ばれるが、その理由はDNAコードに永続的な変化を加えることなく遺伝子の働き方を制御するからである

※epi: 「上」「次」「追加」「付帯」「外側」「後」「間」を意味する


今回の研究では前立腺癌の形成中にエピジェネティックなプログラムが根本的に変化することが実証された

研究著者によればエピジェネティックな再プログラムは潜在的に覆すことが可能であり、
いつか薬によって標的にすることで前立腺癌を防いだり攻撃できるようになるかもしれない



この腫瘍は男性ホルモンのテストステロンによって刺激されるため、患者はしばしばテストステロンがアンドロゲン受容体を活性化しないよう阻害する薬を処方される

男性ホルモンによって活性化されたアンドロゲン受容体は、前立腺細胞の増殖やその他の機能を制御する遺伝子をまとめてオンにしたりオフにするthat turns on or off sets of genes

「アンドロゲン経路は前立腺癌の中心的な経路であり、癌の発症とその進行から治療への抵抗性まですべてを制御する」
Freedmanは説明する


アンドロゲン受容体は転写因子である
転写因子は結合箇所/binding siteと呼ばれる特定のDNA配列に強く結合してlatch onto、DNA情報がどのくらいの速度でRNAに転写されるのかを制御することで、細胞を動かすための遺伝子活性を調節する

アンドロゲン受容体は数千もの特定の鍵穴(結合箇所)にぴったり合う鍵のセットのようなものでlike a set of keys、
この結合箇所はあらゆる前立腺細胞のDNA青写真に据えられているsituated on the DNA blueprint of every prostate cell


研究者が複数の患者由来の前立腺癌細胞でアンドロゲン受容体の結合するDNA配列を調べていたところ、
受容体はもはやnow正常な細胞とは異なる箇所に結合していたとPomerantzは言う

「ある男性の腫瘍での結合パターンは、彼自身の正常な細胞のパターンよりも、他の腫瘍の男性のパターンに似ていたlook like」

アンドロゲン受容体は再プログラムされ、前立腺細胞が異常増殖して拡散できるように細胞の遺伝子を活性化または不活化する

さらに、アンドロゲン受容体の再プログラムにはFOXA1ならびにHOXB13という2つの転写因子が重要であることを発見した


「アンドロゲン受容体の結合箇所は腫瘍化tumorogenesisの間に著しく配分が変更されるがmarked redistribution、
これは前立腺癌でまだ発見されていない、頻発するrecurrentエピジェネティック/ジェネティックな変化の一つを代表しているのである」


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3419
The androgen receptor cistrome is extensively reprogrammed in human prostate tumorigenesis.
ヒト前立腺癌の腫瘍発生においてアンドロゲン受容体のシストロームは広範囲に再プログラムされる


哺乳類の細胞においてマスター転写因子はDNAと相互作用して細胞タイプアイデンティティを確立し、遺伝子発現を調節する(1, 2
これら転写因子の結合箇所binding sitesのゲノムワイドなマップは『シストロームcistrome』と呼ばれている(3

今回我々は、前立腺の上皮が形質転換transformationする間にアンドロゲン受容体/ARのシストロームは広範囲に再プログラムされることを示す

我々はヒト前立腺組織を使い、AR結合箇所の中心的なまとまりa core set of AR binding sitesを観察した
それは腫瘍において一貫してconsistently再プログラムされる

ヒト腫瘍組織においてFOXA1とHOXB13は再プログラムされたAR結合箇所に共局在する

不死化した前立腺細胞系統へのFOXA1とHOXB13の導入はARシストロームを再プログラムし、それは前立腺腫瘍と類似していた
この結果はこれら特異的な因子をARシストローム再プログラムと機能的に関連付けるものだ


これらの研究結果は正常な前立腺上皮を形質転換させる際に重要な一連のイベントへの機構的な洞察を提供し、
ヒト前立腺の腫瘍発生tumorigenesisにおいてエピジェネティックな再プログラムが中心的な役割centralityを果たすことを確立する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/aa7ce8a3ea88b20b934baef2d98b09d8
SNPの一つrs339331でのリスクTアレルは前立腺癌細胞系統でHOXB13のrs339331領域への結合を増加させ、
エンハンサーと関連するH3K4me2ヒストンジメチル化の蓄積を増加させた



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140210161234.htm
アンドロゲン受容体/ARはSPOPというE3リガーゼによってユビキチン化されて分解されるが、
ARのスプライシングバリアントはSPOPを介する分解に抵抗性であり、
前立腺癌と関連するSPOP変異体はARに結合できずARの分解を促進しない




関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131220121046.htm
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140227191211.htm
アンドロゲンは代謝のマスター調節因子であるAMPK-PGC-1αシグナル伝達カスケードを制御し、前立腺癌細胞の増殖を増大させる

>In their studies, Frigo's team showed that prostate cancer cells respond to androgens not only by increasing the breakdown of sugars, a process known as glycolysis that is commonly seen in many cancers, but also escalating the metabolism of fats.
(Frigoの研究チームは、前立腺癌細胞が解糖系として知られるブドウ糖の分解プロセスの増大だけでなく、脂肪の代謝の上昇によってもアンドロゲンに応答することを示した)

>While much of the research on cancer metabolism has historically focused on glycolysis, the researchers say it's now becoming apparent that not all cancers depend solely on sugars.
(これまで多くの研究が癌の解糖系に焦点を合わせてきたが、研究者は『すべての癌がブドウ糖だけに依存するわけではないことが明らかになってきている』という)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24186207
>Our data indicate that androgens increase overall mitochondrial function.
(我々のデータはアンドロゲンがミトコンドリア機能を全体的に増大させることを示す)



<コメント>
癌細胞はミトコンドリアを使えないなどと断言しちゃってる人がいらっしゃいますが

http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/2a6208bb6445a07d05be991b0c70ff5f/
>がん細胞のミトコンドリアを活性化し、嫌気性解糖系を阻害するとがん細胞は死滅する

言い切っちゃって大丈夫なんですか
それとも単なる素人さんなんですか



白血病の「ゲノムの経歴」

2015-10-23 06:30:34 | 
Study charts 'genomic biography' of form of leukemia

October 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151014142132.htm

ダナ・ファーバー癌研究所/Dana-Farber Cancer InstituteとMIT・ハーバードブロード研究所/Broad Institute of MIT and Harvardの科学者たちは、
大規模な白血病組織サンプルのゲノムを組み合わせることで
多くの有益な情報をもたらす新たな研究結果を苦心して探り出したgleaned

研究者たちは500人以上の患者から得られた慢性リンパ性白血病/chronic lymphocytic leukemia (CLL) と正常な組織の遺伝学的構成genetic materialを分析して、
CLLのドライバとなる数十もの遺伝子異常を同定してNatureで報告した
そのうち2つはこれまでヒトの癌と関連付けられたことはなかった

彼らはこれらの異常のいくつかがどのようにして疾患の推移ならびに疾患の治療への感受性に影響するかを追跡traceし始めた
また、彼らはCLLの進化の経路evolutionary pathも追跡したtrack
その常にかき混ぜられているゲノムever-churning genomeは、患者一人の中で腫瘍細胞の新たなグループとサブグループを多く生み出すspawnからである

CLLの治療はしだいにincreasingly患者それぞれの腫瘍の独特の遺伝学的特徴へと調整される/適応させられるgearedため、この種の情報は重要である

現在、伝統的な化学療法の処方計画regimenは、癌細胞内の特定の『怠慢な遺伝子のまとまり/set of delinquent genes』を標的にする薬剤によって補足されるsupplemented


「CLLのDNAシーケンシングにより、我々はこの疾患の遺伝学的基礎について多くを知った」
ダナ・ファーバー、ブロード、ブリガム・アンド・ウィメンズに所属するCatherine Wu, MDは言う

「しかしながら、これまでの研究は比較的少数の腫瘍サンプルに限られ、しかもそれらのサンプルは異なる薬剤で治療された異なるステージで得られたものだった」

「今回の我々の研究で我々は、大規模で似たような治療グループからの組織サンプルを分析することにより
『そのすべての遺伝学的多様性における疾患の研究』に必要な統計的検出力statistical powerが得られるかどうかを確かめたかった
多様性における疾患の研究とはつまり、ある変異と疾患の悪性度との間の関連を指摘し、
そして、新たな変異の出現とその変異が疾患進行を促進する際に果たす役割を位置づけようとした」

「我々の研究結果は、このアプローチによって得られる洞察の範囲を実証した」


続けて、Catherine Wuと同じ所属で筆頭著者のDan Landau MD, PhDは言う
「さらに、この研究は大規模なゲノムシーケンシングの次の段階the next phaseがどのようなものであるかについての見通しvisionをももたらす」

「サンプルサイズが増えていくにつれて、我々は個々のどんな腫瘍で見られる様々な変異間の複雑な相互作用も深く調べることが可能になる
また、悪性腫瘍は変異することにより『進化』して盛んに増殖して治療に抵抗するが、
サンプルサイズの増加はそのような進化の軌跡evolutionary trajectoriesをも復元するreconstruct」

Wuたちは578人のCLL患者から腫瘍と通常組織のサンプルを集め、そのうち278人はドイツの臨床試験に参加していた
研究者は全ゲノムシーケンシング/whole-exome sequencing (WES) をサンプルで実施し、タンパク質をコードするDNA部分の遺伝子コードを字順にletter by letter読み取った
このデータの分析により以下のような広範囲の洞察が得られた

・研究者はCLLに関与する数十の遺伝子異常を同定した
その中には変異した44の遺伝子と、コピー数が多いか少ない11の遺伝子が含まれ、
特にRPS15とIKZF3という遺伝子の変異はこれまでヒトの癌と関連付けられたことはなかった

・患者の約9%は、増殖シグナルを中継するタンパク質ネットワークであるMAPK-ERK経路に変異があった
患者の中にはMYC癌遺伝子を過剰に活性化させる新しいタイプの分子エラーを持つものがいた

・BRAF遺伝子に見られる変異の多くは
他の癌ではほとんど一般的に癌に関与する箇所の近くで起きていたが、
癌に関与する箇所そのものでは起きていなかった

・ある遺伝子変異は、既に治療を受けた患者の腫瘍組織において特に一般的であることがわかった
このことはこの変異が最初の治療からの再発を助ける変異であることを示唆する

・研究者は疾患の早期または後期にどの変異が出現する傾向があるかを決定することにより、CLLの『分子的経歴molecular biography』の原案rough draftをまとめた
研究者はしばしばペアになって生じる変異も同定した
つまり一つの変異に続いてもう一つの変異が生じるような場合である

・腫瘍がTP53またはSF3B1の変異を持つ患者は治療による寛解remissionが短い傾向があった

・治療前に集めた腫瘍サンプルを再発後に比較することにより、研究者は治療後の『進化』が「例外ではなくむしろ通例であるthe rule rather than the exception」ことを発見した

Wuは言う
「特定の変異は再発後のサンプル内の白血病細胞の多くに存在した
これはおそらく、これらの変異が腫瘍が治療に耐えるpersevereことを可能にすることを示す」

Wuたちはこれらの移行する変異の3つの全体的なパターンを観察した



「今回の研究の発見の広さは、臨床状態が確定している腫瘍組織サンプルの大規模なコホートを体系的にsystematicallyシーケンシングして分析する限り/as、我々が成功できるであろうことを示す」
ブロード研究所とマサチューセッツ総合病院のGad Getz, PhDは言う

「我々の研究は新たな癌遺伝子を発見することを可能にするとともに、CLLの進化の経路を系統づけ、そして特定の変異が患者の治療への応答に影響することを実証する
これらの発見はCLLや他の腫瘍の個別化医療precision medicineの基礎を形作るだろう」


http://dx.doi.org/10.1038/nature15395
Mutations driving CLL and their evolution in progression and relapse.
CLLを促進する変異と、進行と再発におけるその進化



http://www.nature.com/nature/journal/v526/n7574/fig_tab/nature15395_SF2.html
Extended Data Figure 2
Cellular networks and processes affected by putative CLL drivers

「黄色の枠」は新たに同定されたCLLサブ経路
MAPK-ERK経路 *
mRNA翻訳
MYC関連 *


「赤色」は以前同定された推定CLLドライバ遺伝子
「紫色」は今回同定された推定CLLドライバ遺伝子
・NOTCHシグナル伝達
・炎症性経路
・B細胞受容体シグナル伝達と分化
・MAPK-ERK経路
・WNTシグナル伝達
・MYC関連

・DNA傷害と細胞周期制御
 TP53 *

・ヒストン/クロマチン修飾
・ヒストンH3K4メチル化
・ヒストンH3K27メチル化
・ヒストン脱アセチル化

・核リモデリング
 IKZF3 *

・スプライセオソーム
 SF3B1 *

・mRNA翻訳
 RPS15 *


※ *: 記事中で触れられている遺伝子や経路

 

癌による骨破壊が筋肉の衰弱を引き起こす

2015-10-22 06:06:23 | 
Rsearchers find pathway to cancer-associated muscle weakness

October 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151012115716.htm


(Theresa Guise博士)

インディアナ大学医学部のTheresa Guise, M.D.を中心とする研究チームは、癌と関連する筋肉の衰弱につながる分子経路を明らかにしてNature Medicineで報告した
癌による骨破壊の間に骨から分泌される成長因子のTGF-βを阻害すると、癌のマウスモデルで筋機能が改善された

Guise博士は説明する
「進行した癌はしばしば骨へ転移し、患者はそれにより筋肉が衰弱する
この衰弱は患者の生活の質quality of lifeをひどく低下させ、骨折のリスクを増大させる
我々は以前、癌が転移して骨破壊を引き起こす際に、骨は血流へ成長因子を分泌することを示した
今回の研究で、これらの因子が筋肉の衰弱を引き起こしうることを示す」

「骨に癌があるマウスの実験では、筋肉の衰弱は
骨破壊を防ぐ薬を投与するか、成長因子の活性を阻害、または筋肉のカルシウムを安定させることで防ぐことが可能だった」


研究の中でGuise博士は
癌が骨で増殖する多くのタイプの腫瘍でも同じメカニズムが筋肉の衰弱を引き起こすことを指摘する

Guise博士たちは骨に転移する典型的な癌である乳癌、前立腺癌、肺癌、多発性骨髄腫multiple myelomaを研究し、
4つの異なる分子チェックポイントを同定して4つの異なる薬により標的とすることで、筋機能の改善に成功した
さらに、今回の発見は癌が骨に転移した患者の筋肉のサンプルでも確認された


いったん癌が骨へ転移すると、患者は痛みと骨折、神経圧迫nerve compression、そして筋肉の衰弱に苦しむ
現在、そのような筋肉の衰弱に効果的な治療は何も存在しない


http://dx.doi.org/10.1038/nm.3961
Excess TGF-β mediates muscle weakness associated with bone metastases in mice.
過剰なTGF-βは、マウスにおいて骨転移と関連する筋肉の衰弱を仲介する


我々は
転移による骨破壊の結果として骨の表面から分泌されるトランスフォーミング成長因子-β (TGF-β) がNADPHオキシダーゼ4/Nox4を上方調節し、
骨格筋タンパク質の酸化oxidizationを上昇させることを発見した
そのタンパク質にはリアノジン受容体カルシウムリリースチャネル/ryanodine receptor calcium release channel (RyR1) が含まれ、
酸化されたRyR1チャネルがカルシウムイオン/Ca2+をリークする結果、適切な筋収縮に必要な細胞内シグナル伝達が低下する

 骨破壊→TGF-β→Nox4→RyR1酸化→Ca2+リーク→筋収縮低下


RyR1の漏れleakageを阻害するか、
TGF-βシグナル伝達またはTGF-βの骨からの分泌、Nox4活性を妨害すると
MDA-MB-231骨転移マウスの筋機能は改善された


乳癌または肺癌と関連する骨転移を生じた患者の骨格筋にも酸化したRyR1が見られたが、健康なヒトの筋肉には見られなかった
同様に、骨格筋の衰弱、Nox4のRyR1への結合、RyR1の酸化は、カムラチ-エンゲルマン症候群/Camurati-Engelmann syndromeのマウスモデルにも存在する

ゆえにthus、骨からの病理学的なTGF-β分泌が筋肉の衰弱に寄与し、それはカルシウムイオンの低下により筋力が生じにくくなることによる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/10/131023153742.htm
NF-κBによるPax7の過剰発現は筋細胞の分化と融合を抑制して、癌での筋萎縮/カヘキシアを促進する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/781d4ce9b7df550dedc35fc3b53289a2
骨へ移動する癌細胞はカテプシンKを発現し、MMP-9を活性化することで骨環境で生き残る能力を促進する
 




抗酸化剤は癌の転移を促進するかもしれない

2015-10-20 06:14:08 | 
Antioxidant use may promote spread of cancer

October 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151014134537.htm

テキサス大学サウスウェスタンChildren's Research Institute (CRI) の研究チームは、癌細胞が通常の細胞よりも抗酸化剤から利益を得ることを示唆する発見をした
これは癌患者が抗酸化剤dietary antioxidantsを使うことについての懸念を生じる
研究はメラノーマ細胞を患者から移植された特殊なマウスで実施されたものだが、以前の研究からこれらマウスでのヒトメラノーマ細胞の転移は患者での転移を予測することを示している

癌細胞が転移した患者はほとんどが死ぬが、CRIのチームが抗酸化剤をマウスに投与すると癌は急速に転移し、抗酸化剤を投与されなかったマウスではそうではなかった
この研究はNatureで発表された


癌細胞の転移は非効率的なプロセスであることが知られている
血液に入った癌細胞の大多数は生きられないからである

「転移するメラノーマ細胞は非常に強い酸化ストレスを経験することを我々は発見した
この酸化ストレスにより転移する細胞のほとんどが死ぬ」
CRIのディレクター、Sean Morrison博士は言う
「マウスに抗酸化剤を投与すると転移するメラノーマ細胞の生存は増加し、転移の負荷量burdenは増大した」

※burden: 負荷量。癌などの生体内総量


「抗酸化剤が良いという考えは非常に強いため、癌患者に抗酸化剤を投与する臨床試験が実施されてきた
しかし、抗酸化剤を投与された患者が早く死んでいくためそれらの臨床試験のいくつかは中止された
我々の研究データはその理由を示唆する
つまり、癌細胞は普通の細胞より抗酸化剤で得をするbenefit」

「今回の発見は、癌の治療時に『酸化促進剤pro-oxidant』を使って酸化ストレスを増大させると転移は妨げられるのか、をテストすべきであるという展望も開くopens up the possibility」
Morrison博士は言う

「可能性のあるアプローチの一つは、メラノーマ細胞が酸化ストレスを生き残る時に使う葉酸の経路を標的にすることだ
それにより癌細胞の酸化ストレスレベルは増加するだろう」


http://dx.doi.org/10.1038/nature15726
Oxidative stress inhibits distant metastasis by human melanoma cells.

Abstract
血流内のメラノーマ細胞は酸化ストレスを経験し、それは皮膚下の既に確立した腫瘍では観察されなかった

転移に成功したメラノーマは転移中に可逆的な代謝的変化を生じた
その変化には葉酸経路のNADPH生成酵素への依存が含まれ、酸化ストレスに持ちこたえるwithstand能力を増大させた

抗酸化剤はマウスで遠隔転移を促進し、低用量のメトトレキサートmethotrexate、ALDH1L2のノックダウン、またはMTHFD1のノックダウンによる葉酸経路の阻害は遠隔転移を妨げたが、
同じマウスでの皮膚下の腫瘍の増殖には明らかな影響はなかった


Extended Data Figure 5
セリンとグリシン


(d)
これは皮膚下腫瘍subcutaneous tumoursと比較して転移メラノーマにおける血液中循環セリン/グリシンプールとのセリン/グリシンの交換の変化も反映しうる



関連サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%B3
グルタチオン還元酵素は、NADPHの還元力を利用して、酸化型グルタチオンを再還元する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/40e93d7550ffd29a7cf3d92a5aa7bcd2
抗酸化剤はメラノーマ細胞の転移する能力を加速したが、原発腫瘍は影響を受けなかった



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151013102402.htm
がんサバイバーの食事の質は健常者と比べて低く、ビタミンDやビタミンEなどが少ない


 
Science Translational Medicineに続いてNatureでも
 

癌の食物供給センサーを発見する

2015-10-19 06:37:43 | 
Identifying cancer's food sensors may help to halt tumor growth

Protein used by tumors to help them detect food supplies could be targeted to restrict cancerous cells' ability to grow

October 5, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151005080113.htm


(結腸直腸癌腫瘍でのPAT4(Bで茶色に染色されている)のレベルの高さは患者の予後の悪さと関連する)

オックスフォード大学の研究者は、食物が供給されているか検出するのを助けるために腫瘍が使うタンパク質を初めて同定した
このタンパク質を標的にすることで癌細胞の増殖能力を制限できる可能性がある


オックスフォード大学の生理学部・解剖学部・遺伝学部の研究チームは、PAT4というタンパク質の影響を理解するために研究を続けている
Deborah Goberdhan博士は言う
「悪性の癌細胞はより多くのPAT4を作り、それによって利用可能な栄養素を周囲の細胞(健康な細胞を含む)よりもうまく使うことが可能になる」

癌細胞はしばしば血液からの栄養供給へのアクセスが限られている
栄養素を感知して獲得する能力は癌細胞が増殖するために重要である

Deborah Goberdhan博士とAdrian Harris教授の研究グループは協力してヒトの組織サンプルでPAT4を染色して強調するための抗体を開発し、結腸直腸癌の患者から提供された匿名の腫瘍サンプルの研究に使用した

染色の結果を患者の転帰と比較したところ、腫瘍でPAT4のレベルが高かった患者は、低かった患者よりも再発して死ぬ可能性が高かった

次に研究者がPAT4レベルを低下させて何が起きるのかを調べると、癌化した腫瘍は増殖が遅くなった

Goberdhan博士は言う
「これらの結果はお互いを支持するものである
高レベルのPAT4が悪い結果を意味するというだけでなく、PAT4レベルを低下させることは状況を改善する
これはつまり我々は癌細胞が好んで使うメカニズムを同定したということであり、
それを組み合わせ治療の一部として標的にできるかもしれないということを意味する」


http://dx.doi.org/10.1038/onc.2015.363
PAT4 levels control amino-acid sensitivity of rapamycin-resistant mTORC1 from the Golgi and affect clinical outcome in colorectal cancer.
結腸直腸癌において、PAT4レベルはラパマイシン抵抗性mTORC1のアミノ酸感受性をゴルジから制御し、臨床的転帰に影響する


Abstract

腫瘍細胞は、栄養欠乏に抵抗して近隣の細胞と競合するための戦略を取ることが可能である

飢餓やその他ストレスへの細胞応答を統合するための重要な因子は、
アミノ酸依存的な機構的ラパマイシン標的複合体1/amino-acid-dependent mechanistic target of rapamycin complex 1 (mTORC1) である

※mTOR: mammalian target of rapamycin

後期エンドソームlate endosomesならびにリソソーム上でのmTORC1の活性化は、
SLC36とSLC38ファミリーのアミノ酸輸送体によって促進される

※SLC: solute-linked carrier


今回我々はSLC36ファミリーの一つであるSLC36A4の結腸直腸癌における機能を分析する
SLC36A4は、PAT4/ proton-assisted amino-acid transporter 4としても知られる

※proton-assistedという名称だが、proton-assistedではない
>Discussion
>Despite its name, when heterologously expressed in Xenopus oocytes, PAT4 can transport amino acids via a non-proton-coupled mechanism.

※グルタミンとセリンはPAT4に結合するが、輸送はされない
>It appears to have a very high substrate affinity, but low capacity, for proline and tryptophan.37
>Several other amino acids, including glutamine and serine, bind with lower affinity, and can compete with high-affinity PAT4 substrates, although they may not be transported.


我々はPAT4の発現の高さが他の主な病理学的な要因から独立して術後の無再発生存/relapse-free survivalの低下と関連することを示す
このことと一致して、PAT4はHCT116ヒト結腸直腸癌細胞の培養での増殖を促進し、異種移植モデルにおいて腫瘍の増殖を促す


HCT116細胞での誘導ノックダウン/inducible knockdownにより、PAT4は2つの性質を持つタイプのmTORC1を調節することが明らかになった
その1つは真核細胞の翻訳開始因子である4E結合タンパク質1/4E-BP1を優先的にpreferentially標的にして、ラパマイシン投与に抵抗性である


さらに、HCT116細胞では2つの非必須アミノ酸であるグルタミンとセリンが、PAT4依存的なやり方でラパマイシン抵抗性mTORC1を調節する(グルタミンとセリンはしばしば腫瘍細胞で急速に代謝される)

PAT4の過剰発現は、ヒト胎児由来腎臓細胞/human embryonic kidneyのHEK293細胞においてラパマイシン抵抗性を促進することも可能である

PAT4は様々な細胞タイプで主にゴルジ装置に局在する
in situ proximity ligation分析により、PAT4はmTORC1ならびにその調節因子であるRab1Aとゴルジ上で相互作用することを示す

※in situ proximity ligation assay (PLA): タンパク質同士の相互作用を抗体を使ってin situで検出する
>We used the proximity ligation assay (PLA), which detects specific protein–protein interactions in situ, when antibodies recognising these molecules are in close proximity.33
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17072308
http://www.sigmaaldrich.com/japan/lifescience/proteomics/duolink.html


これらの発見は他の研究とともに、
細胞内で異なって局在するアミノ酸輸送体が、2種類のmTORC1の代わる代わるalternateの活性化に寄与することを示唆する

さらに我々のデータは、
PAT4の発現が高い結腸直腸癌細胞のセリン・グルタミンの欠乏に対するより強い抵抗性を予測する
それにより癌細胞は生き残り、隣の正常な細胞ならびに腫瘍形成性の細胞よりも早く成長することができる
そして潜在的に薬理学的介入の新たな道を提供する可能性がある



Introduction

mTORのアロステリックな阻害剤、例えばラパマイシンやそのアナログを使った腫瘍増殖を阻害しようという試みは、あまり成功していない(5
それらmTOR阻害剤は、mTORC1の2つの標的の1つであるS6K1のシグナルは強く抑制するが、もう1つの標的である4E-BP1に対する効果は限定的だった
4E-BP1は翻訳開始因子のeIF4Eを負に調節し(6, 7、eIF4Eは転移的増殖に関与する(8, 9

このようなラパマイシンへの抵抗性は
ATP競合的mTOR阻害剤によって回避可能な時がありcan sometimes be circumvented(5, 6, 7、この阻害剤はmTORC2も阻害する

にもかかわらず、
mTOR構造の変化またはmTORの調節因子がどのようにしてラパマイシン感受性を調整するのかは、少なからず興味深い問題のままだったremains of considerable interest



『プロトンにより補助されるアミノ酸輸送体/proton-assisted amino-acid transporter (PAT)』のメンバー、
SLC36ファミリー11は、
ショウジョウバエでのin vivoの遺伝子過剰発現スクリーニングにより、
mTORC1シグナル伝達の正の調節因子として同定された(12, 13

これらの影響は、ヒトでユビキタスubiquitouslyに転写されている2つのヒトPATs、PAT1 (SLC36A1) とPAT4 (SLC36A4) の特徴付けによって保存されていることが示された (14
原型となるPATファミリーメンバーのPAT1は、リソソームのアミノ酸輸送体/AATである

急速に増殖する細胞において
それは/PATは、栄養が豊富な後期エンドソーム/LEならびにリソソーム/L(LEL)コンパートメントの表面に局在し(13、
そこでアミノ酸の刺激に応じてmTORが蓄積する

mTOCのリクルートには、複数のタンパク質からなる複合体の組み立てが必要である
(Raptor, a heterodimeric pair of Ras-related Rag GTPases, the pentameric Ragulator, the vacuolar-H+-ATPase proton pump at the compartment surface)
PAT1もこの複合体と相互作用してmTORをLEL上へ局在させ、mTORC1シグナル伝達を促進する
PATsによるアミノ酸の感知は輸送またはシグナル伝達を含み、それはいわゆる『輸送受容体/transceptor』というメカニズムによる(4, 13, 17


最近の研究で、
同類のSLC38ファミリーAATであるSLC38A9がLELs上でmTORC1の調節機構と相互作用し、
それはおそらくアルギニンへの応答において起きる可能性があることが同定された(18, 19
このことは
LELに局在してmTORC1を調節する様々なAATsが存在して異なるアミノ酸を感知している可能性を示唆する

さらに、
ゴルジに局在するRab1A (20
ADPリボシル化因子のArf1 (21
ホスホリパーゼ (22, 23
のような分子が
Ragとは独立したmTORC1活性化の調節因子regulatorsとして同定され、
他のアミノ酸を感知するメカニズムがまだこれから発見されることが示唆されるremain to be discovered



今回我々はPAT4の機能を結腸直腸癌で調査した
結腸直腸癌はしばしばラパマイシン抵抗性で(6、転移性であり、臨床的帰結に深刻な影響を与える(24, 25
我々はPAT4の上方調節が癌の進行と関連することを示す
HCT116結腸直腸癌細胞を使ったinducibleなPAT4のshRNAノックダウンの実験により
PAT4は、急速に代謝される2つの非必須アミノ酸であるグルタミンとセリンに反応して(26, 27、
 ラパマイシン抵抗性
 ならびに
 mTORC1による細胞増殖
を強く促進することを発見した

さらに、我々はPAT4がRab1AならびにmTORC1とゴルジ上で相互作用するというエビデンスを提供する
これは、このコンパートメント由来のfrom compartmentアミノ酸感知における役割を示唆する



Results

PAT4依存的なラパマイシン抵抗性mTORC1のグルタミン・セリンへの感度sensitivity

PATsがアミノ酸依存的なmTORC1の活性化に関与するので、我々は
ラパマイシン抵抗性mTORC1を調節する特定のアミノ酸のレベルをPAT4が感知するという
仮説を立てた

我々はHCT116細胞を特定のアミノ酸だけ飢えさせ、その中にはHCT116の増殖にとって必要な2つの非必須アミノ酸が含まれた
非必須アミノ酸のセリンは解糖系へと転用されdiverted into glycolysis、
グルタミンはグルタミノリシス経由でHCT116細胞を含めた癌細胞のTCA回路/クエン酸回路に燃料を供給する26, 27, 31

2つのアミノ酸のどちらかを4時間以上減らすと、
他のどんな必須アミノ酸よりも強い阻害効果が4E-BP1過剰リン酸化に対して生じた (Figure 6a)


グルタミンまたはセリンの飢餓と、ラパマイシン投与とを組み合わせると、
どちらか単独よりも4E-BP1過剰リン酸化に対して強い影響が生じた (Figures 6d and e)
この結果は、これらのアミノ酸が『PAT4によって調節されるラパマイシン抵抗性mTORC1』によって感知されるという我々の結論を支持する



Discussion

mTORC1阻害剤への抵抗性は、基質標的箇所のin vitroでの異なるdifferential感受性によって部分的には説明されるが(34、
癌細胞には異なるdifferent mTORC1複合体が存在するというエビデンスが増えつつある20, 21, 22, 23, 35
このことがラパマイシンのような薬剤への癌細胞の感受性を変化させる可能性がある

今回の研究で我々は、HCT116細胞においてPAT4がラパマイシン抵抗性mTORC1を調節し、HEK-293細胞でPAT4を過剰発現させるとラパマイシン抵抗性を誘導できることを実証した

PAT4とラパマイシン抵抗性mTORC1は、in vitroでの通常の細胞増殖にも必須である
さらに、PAT4の発現レベルは結腸直腸癌の再発の早さを予測するが、これは腫瘍のより悪性な表現型の獲得における病態生理学的なPAT4の役割を示唆する

我々の研究結果はラパマイシン抵抗性mTORC1とラパマイシン感受性mTORC1という2つの形態が独立して制御されるというモデルを支持し、これら2つのシグナル伝達の機能を分離する新たな遺伝学的ツールgenetic toolを提供する (Figure 9)



Figure 9
HCT116細胞におけるラパマイシン感受性mTORC1とラパマイシン抵抗性mTORC1の概念図schematic diagrams

図の矢印→は正のシグナル、クロスバー┤は阻害性シグナルのイベントを示す

S6Kと4E-BP1(真核生物翻訳開始因子1/eIF4Eの負の調節因子)は、mTORC1の下流で最も特徴付けられたcharacterised標的である


ラパマイシンはS6Kのリン酸化を強く阻害するが、4E-BP1のγ-バンド、つまり4E-BP1のセリン65リン酸化に対する影響は弱い
よりリン酸化されていない(セリン65がリン酸化されていない)4E-BP1はeIF4Eに結合し、その結果、翻訳は抑制される(8

PAT4活性の減少は、ラパマイシン抵抗性のmTORC1に主に影響する
これはセリン65がリン酸化された4E-BP1の減少につながるが、S6Kのリン酸化への影響はより少ない

SLC36(PAT)の他のアミノ酸輸送体(AAT)と/またはSLC38ファミリーは(例えばPAT1とSLC38A9)、ラパマイシン感受性のmTORC1の調節に関与しているようだlikely

PP242はmTORC1のATPキナーゼ阻害剤であり、ラパマイシン感受性とラパマイシン抵抗性という両方のmTORC1に作用する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150107131339.htm
mTORC1の活性化は、リソソーム膜のSLC38A9輸送体によるアルギニンの輸送による

 

腸内細菌の構成から結腸直腸癌を分類する

2015-10-17 08:10:05 | 
Researchers use gut bacteria composition to genetically classify colorectal tumors

October 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151009185425.htm

結腸直腸腫瘍の周辺に存在する腸内細菌の種類を分析することにより、研究者は腫瘍の遺伝子変異を予測する方法を発見した
この研究結果はバルチモアで開かれる2015年度アメリカ人類遺伝学会議/American Society of Human Genetics (ASHG) で発表される

主席著者のRan Blekhman, PhDを中心とするミネソタ大学の研究チームは結腸直腸癌患者44人の癌細胞と健康な人の結腸細胞との遺伝学的な違いを研究し、
腫瘍の特定の変異と微生物叢の構成との間の相関性を探索した
彼らは腫瘍の周辺に存在する細菌の種類とその相対的な量を調べ、そして両者に相関を発見した

Blekhman博士のラボのMichael B. Burns, PhDはこう説明する
「以前の研究では、特定の変異と結腸直腸癌とが関連し、そして特定の微生物叢の特徴と結腸直腸癌との間に関連があることは発見されていた
しかし、この2つを統合した研究はこれまで存在しなかった」


研究者は、腫瘍の細胞が癌と関連する変異をより多く持つほど腫瘍の微生物叢は多様性があることを発見した
事実、腫瘍の細胞の特定の変異は微生物叢の特定のタイプの細菌と関連があった

ミネソタ大学のコンピュータ科学と生物工学の助教授であるDan Knights, PhDと共に、
Blekhman博士たちは腫瘍に存在する変異のタイプをその微生物叢から予測する方法を開発した
この手法は概して、腫瘍に見られる最も共通する変異の約半分を正確に予測した

「腫瘍と細菌の相互作用を研究することで、我々は腫瘍を形成させ成長させる際に細菌が果たす役割をさらに理解するだろう
そしてやがては微生物叢の性質を変化させることで癌を治療できるようになるかもしれない」
Blekhman博士は言う

研究者は今回の発見が相関を示すだけであると警告する
これまでのところ細菌の変化が結腸直腸癌を引き起こすという明確なエビデンスは存在しない
しかし、Blekhman博士たちはこの疑問を実験により明らかにするための計画を立てている
腫瘍の微生物叢の構成を糞便サンプルから分析できるかどうかを調べ、そしてそのデータから腫瘍に存在する変異の種類を予測できるかを評価する予定である



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結腸癌細胞と腸内細菌バイオフィルムはお互いに促進し合う
 

結腸癌の4つのサブタイプ

2015-10-17 06:21:16 | 
Scientists uncover four different types of bowel cancer

October 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151012115704.htm

ロンドンがん研究所/Institute of Cancer Research/ICRの科学者は欧米の仲間と共に、
3443人の結腸癌患者の分子データと臨床データ(遺伝子変異、遺伝子活性、免疫系活性、細胞代謝、癌細胞の種類、浸潤能)から
数学的アルゴリズムを用いて結腸癌を分類しようと試みた

この大規模な分析の結果、結腸癌の87%は4つのグループに割り振るassignことが可能であり、それぞれが異なる生物学的特徴を持つことが明らかになった
この4つの『一致する分子サブタイプ/consensus molecular subtype/CMS』に分類された腫瘍は
それぞれが不規則性irregularityのパターンを持ち、
それぞれが同じ治療戦略に対して脆弱vulnerableになる


CMS4の結腸腫瘍の患者はしばしば診断されるのが遅く(ステージIII、IV)、
体内の他の箇所により多く転移しており、他のタイプよりも著しく生存率が低かった

別のタイプであるCMS2の患者は癌が再発しても生存率が良かった


ロンドンICRのチーフエグゼクティブであるPaul Workman教授は言う
「ここ最近の10年で我々の癌の見方について大きな変化が生じ、腫瘍のタイプについての理解が進んだ
乳癌や前立腺癌、そして今回の結腸癌での研究のように、それらサブタイプは実際は異なる疾患である」


http://dx.doi.org/10.1038/nm.3967
The consensus molecular subtypes of colorectal cancer.

Abstract

我々は
6つの独立した分類システム間の相互接続性interconnectivityの特徴から
結腸直腸癌を以下のような4つのコンセンサス分子サブタイプ/CMSに統合したcoalesce

CMS1 (マイクロサテライト不安定性免疫/microsatellite instability immune、14%)
変異が多く、マイクロサテライトが不安定で、免疫が強く活性化している

CMS2 (古典的/canonical, 37%)
上皮性epithelialで、WNTならびにMYCシグナル伝達の活性化が目立つmarked

CMS3 (代謝性/metabolic, 13%)
上皮性epithelialで、代謝の調節異常が明らかである

CMS4 (間葉性/mesenchymal, 23%)
TGF-β活性化、ストロマ浸潤、血管形成angiogenesisが目立つprominent

混合した特徴を持つサンプルの13%は、
おそらく移行中の表現型transition phenotypeか、腫瘍内の不均一性intratumoral heterogeneityを表す



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乳癌/浸潤性小葉癌の3つのサブタイプ



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膵臓癌とストロマの新しいサブタイプ
 

乳癌/浸潤性小葉癌の3つのサブタイプ

2015-10-16 06:36:21 | 
Breast cancer genomic analysis reveals invasive lobular carcinoma subtypes

October 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151008131220.htm

※乳癌は非浸潤癌と浸潤癌に大別される。浸潤癌は80%が浸潤性乳管癌(invasive ductal carcinoma)で、それより頻度が少ない特殊型はさらに、浸潤性小葉癌(invasive lobular carcinoma)、扁平上皮癌、粘液癌などに分類される


ノースカロライナ大学ラインバーガー総合がんセンターを中心とした研究者たちは、乳癌のサブタイプの一つである浸潤性小葉癌/invasive lobular carcinomaの新たなサブタイプを明らかにした
浸潤性小葉癌はニ番めに多く診断される浸潤性の乳癌であり、Cell誌で発表された今回の発見はパーソナライズされた治療アプローチにつながる可能性がある


この研究は乳癌の大規模で包括的なゲノム分析であるThe Cancer Genome Atlas/TCGAを元にしたものである
研究では800以上の乳癌サンプルにおける遺伝子/分子パターンが分析され、その中には127の浸潤性小葉癌のサンプルが含まれる

「我々は浸潤性小葉癌が遺伝学的に異なることを明らかにしたが、この疾患には生物学的に定義されるサブグループが存在する
それは臨床的に重要な意味を持ちうる」
UNCラインバーガーの一員であり首席著者のCharles M. Perou, PhDは言う

「小葉癌は単一の均一な集団ではなく、それは少なくとも3つの異なる疾患を表している可能性がある
見かけの微小環境の特徴は異なりappear to differ in their microenvironmental features、結果においても違いを示す」

浸潤性小葉癌は浸潤乳癌の10%から15%であり、組織学的に見て浸潤性乳管癌に次いで二番目に多い浸潤癌のタイプである
この種類の癌は検出しにくく、外科医には癌の範囲を決定するのが非常に難しいという
生物学的な理解も乏しいこともあって、現在は乳管癌と同様に治療されている


研究者はTCGAの遺伝子発現データを元に3つのサブタイプを決定した
『反応性様/reactive-like』サブタイプの患者は、『増殖性/proliferative』サブタイプよりも全生存率が良い
『免疫関連immune-related』サブタイプの患者では生存での違いは見られなかったが、免疫と関連する機能のレベルは高く、腫瘍学的な薬剤の標的oncology drug targetsは数多く発現していた


今回の研究ではE-カドヘリンの機能の喪失が浸潤性小葉癌の重要な特徴hallmarkであるという以前の発見が再確認されreaffirmed、
さらに、エストロゲン受容体シグナル伝達を調節する遺伝子における新たな変異も発見された

「エストロゲン受容体シグナル伝達はほとんどの乳癌にとって増殖のドライバであり、それには小葉癌も含まれる」
Perouは言う
「エストロゲン受容体シグナル伝達の調節因子はこれらの癌で変異している
浸潤性小葉癌で変異しているのはFOXA1遺伝子であり、浸潤性乳管癌ではGATA3遺伝子である
この発見は、いつかはeventually、ホルモン療法への応答性についての何らかの説明になるだろう」
(This could eventually tell us something about the responsiveness of these cancers to hormone therapy.)

研究者はさらに、浸潤性小葉癌ではPI3K/Aktというシグナル伝達経路の活性が上昇することも発見した


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.09.033
Comprehensive Molecular Portraits of Invasive Lobular Breast Cancer.
浸潤性小葉癌の包括的な分子ポートレート


Highlights
・浸潤性小葉癌/ILCは、臨床的にも分子的にも異なる疾患である
・ILCsは、CDH1とPTENの喪失、AKT活性化、TBX3とFOXA1の変異を示す
・増殖proliferationならびに免疫と関連する遺伝子発現シグネチャーは、3つのILCサブタイプを定義する
・ILCとIDCの混成腫瘍mixed tumorは、遺伝学的特徴により小葉様lobular-likeと乳管様ductal-likeのサブグループに分類される


Summary
今回我々は817の乳癌を包括的にプロファイリングした
その中には
 127の浸潤小葉癌/invasive lobular carcinoma (ILC)
 490の浸潤乳管癌/invasive ductal carcinoma (IDC)
 88の混成型mixed IDC/ILC
が含まれた
 

寛容的な免疫系は癌リスクを上昇させる

2015-10-14 06:43:50 | 
Tolerant immune system increases cancer risk

October 6, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151006132029.htm

悪性腫瘍が形成される間、癌細胞は免疫細胞を回避しなければならない
既に多くの研究で癌はその微小環境で免疫細胞の抑制性と活動性のバランスが望ましくない時に、特に攻撃的に転移することが示されてきた

「しかし、これが悪性腫瘍による結果なのか、それともむしろ原因なのかは不明のままだった」
ドイツがん研究センター (Deutsches Krebsforschungszentrum/DKFZ) の疫学者であるRudolf Kaaksは言う


DKFZのKaaksたちはこの疑問を追求するユニークな機会を得た
ハイデルベルクにあるDKFZはEPIC研究のセンターの一つであり、EPIC研究ではヨーロッパでほぼ50万人の食事と癌との間の関連を調査している

EPICの最初の調査は1996年から1998年にかけて行われ、参加者の血液が採取されて冷凍された
ハイデルベルクセンターの参加者25000人のうち、観察期間中に癌を発症した約1000人と(肺癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌)、対照群として悪性腫瘍を発症しなかった800人から血液標本を選出した

DKFZの研究者は今回の研究をエピジェネティックの試験を専門的に扱う企業のEpiontis(本社ベルリン)と共同で実施し、血液標本中の様々なT細胞集団の比率を決定した
そこから制御性T細胞とT細胞の総数(腫瘍と戦う細胞も含まれる)との比率を算出し、この比率を『immunoCRIT』として、数字が高いほど免疫系は抑制されていると定義した

※CRIT: cellular ratio of immune tolerance: 免疫寛容の細胞比


EPIC参加者の癌リスクをimmunoCRITの数値が最も高い人と最も低い人で比較したところ、
値が最も高い人の肺癌リスクは100%、結腸癌リスクは約60%上昇した
immunoCRITが最も高い女性では、エストロゲン受容体陰性の乳癌発症リスクが3倍上昇していた

しかしながら研究者は、明言するにはfor a definite statement、症例数が少なすぎるかもしれないと考えている
前立腺癌とエストロゲン受容体陽性乳癌に関しては、immunoCRITと癌リスクとの関連は見られなかった


腫瘍と戦うT細胞が制御性T細胞によって妨害される状態を、科学者は『末梢免疫寛容/peripheral immune tolerance』という語を用いて表すspeak of

「今回の研究で、免疫細胞の比率は癌の発症のはるか前から既に望ましくない状態であることを我々は初めて実証した」
Kaaksは言う

「したがって、これは(免疫の寛容は)、癌の結果というよりも原因である可能性がより高いということである」


なぜ免疫寛容が特定の癌のリスクに影響するのかは不明だが、
これまでの研究から説明として可能性があるのは、
肺と結腸の腫瘍は特に大量の免疫細胞によって入りこまれている傾向があるtend to be colonizedということである

ハイデルベルクの疫学者たちは現在、他の種類の腫瘍に調査を広げようと計画しているところである


http://dx.doi.org/10.1093/jnci/djv224
Treg-Mediated Immune Tolerance and the Risk of Solid Cancers: Findings From EPIC-Heidelberg.



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/305eb8758c89181480425e88fcdd8783
脳腫瘍の診断から20年前の高レベルのIL-4は、神経膠腫を発症する可能性の低下と関連する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/27b0095ed74dd85fbf10b1dabd646605
腫瘍のFAKはCCL5を転写させ、TregをリクルートしてCD8+Tを回避する


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b46d5a405befa334675895f81d890632
腫瘍はFoxp3+Tregを作るよう刺激して、CD8+T細胞を抑制して免疫系を回避する
 


抗酸化剤は悪性メラノーマの転移を加速する

2015-10-13 06:03:36 | 
Antioxidants cause malignant melanoma to metastasize faster

October 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151008131112.htm

グーテンベルク大学、サールグレンスカ・アカデミー/Sahlgrenska Academyの新しい研究によると、抗酸化剤はマウスでメラノーマの転移する割合/速度ratesを2倍にする可能性がある
この結果は、抗酸化剤が肺癌の進行を加速するという以前の発見を補強するreinforce
Martin Bergö教授は、癌患者や癌のリスクが高まっている人は抗酸化サプリメントを避けるべきであるという


サールグレンスカ・アカデミーの研究者は2014年1月、抗酸化剤が肺癌の進行を早めることを実証した(※)
抗酸化剤を与えられたマウスは、より悪性の腫瘍を、より多く発症した
ヒトの肺癌細胞での実験でもこの結果が確認された

※2014: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24477002
Antioxidants accelerate lung cancer progression in mice.


フリーラジカルが癌を引き起こしうるというエビデンスから、研究者コミュニティは抗酸化剤が癌を破壊し、癌の発症から防御すると単純に憶測してきた
多くの栄養サプリメントには抗酸化剤が含まれ、癌の予防法であるとして広く売られている
そのような衆知に異議を唱える肺癌での研究は非常に興味を引いた


速度が2倍
Double the rate

その後のサールグレンスカ・アカデミーによる研究で、抗酸化剤は最も危険な皮膚癌である悪性メラノーマの転移する速度を2倍にすることが明らかになり、Science Translational Medicineで10月7日に報告された

「肺癌での研究とは反対に、メラノーマの原発腫瘍は影響を受けなかった」
Bergö教授は言う
「しかし、抗酸化剤は腫瘍細胞の転移する能力を加速した
転移はメラノーマ症例の死亡原因であるため、これはより深刻な問題である」


結果の確認
Confirmed the results

悪性メラノーマ患者の培養細胞での実験により新しい研究結果が確認された
「我々は抗酸化剤が癌の進行を促進することを少なくとも2つの方法で実証した」

様々な研究からの総合的な結論として、抗酸化剤は健康な細胞が癌化しないようにフリーラジカルから守るが、いったん腫瘍が生じるとそれを守る可能性がある


サプリメントを避ける
Avoid supplements

抗酸化剤を含む栄養サプリメントは、検出するのが難しい小さい腫瘍や腫瘍になる前の損傷が進行するのを意図せず促進する可能性がある
「サールグレンスカ・アカデミーによる以前の研究で、癌患者は特に抗酸化剤を含むサプリメントを摂取する傾向が示された」
Bergö博士は言う
「抗酸化剤の大規模な臨床試験からの情報と現在の研究を組み合わせて考えると、最近癌と診断された人たちはそのようなサプリメントは避けるべきである」


高い死亡率
High mortality rate

先進国で最も速く拡大している癌の一つである悪性メラノーマは死亡率が高い
それがサールグレンスカ・アカデミーの研究者が心配して肺癌の研究を徹底的に究明するfollow up on理由の一つである

「悪性メラノーマの進行に影響する要因を特定することは重要な課題である」
Bergö教授は言う


ローション剤
Lotions next

抗酸化剤の役割は、メラノーマの場合特に関連がある
その理由はメラノーマがフリーラジカルに感受性があるというだけでなく、食事以外の方法でも抗酸化剤に曝露しうるからである
「日焼けローションsuntan lotionは、ベータカロテンやビタミンEを含んでいることがある
どちらもサプリメントの抗酸化剤と同じように悪性メラノーマ細胞に影響する可能性がある」


他のタイプの癌
Other forms of cancer

ローションの抗酸化剤がどのようにして悪性メラノーマの進行に影響するのかは現在研究中である
教授はさらなる研究が必要であることを強調する

「肺癌が最も一般的な癌であり、メラノーマの転移が早いとしてもgranted that、
他のタイプの癌や他の抗酸化剤も考慮する必要がある
フリーラジカルと抗酸化剤が癌の進行にどのように関与するのかについて完全な情報に基いた評価をしたいならば」


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aad3740
Antioxidants can increase melanoma metastasis in mice.



関連サイト
http://kusurinahito.futsuo-holiday.com/?eid=245
注意したいのは、抗酸化物質の摂取が悪いのではなく、過剰摂取した抗酸化物質が腫瘍増殖を促進していると指摘していることです。



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b203a9eaf2fc7c1965c7e19a43e92e00
転移する癌はミトコンドリアを使う



参考サイト
http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/70a1cd55dd950eebb67407ba759aa728
418)がん細胞の酸化ストレスを高める方法
>がん組織の過酸化水素の産生を高める高濃度ビタミンC点滴などを併用するとケトン食の抗腫瘍効果を高める



参考サイト
http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/cdf9adc7681a25e695097093900a6090
357)ジェームズ・ワトソンとがん治療:抗酸化剤ががんを促進する?!
>この論文の中でワトソンは「抗酸化剤ががんを促進する」という考えを述べています。
>このやや過激な意見に関して、
 
あなたがワトソン先生に意見する方がよっぽど過激だと思いますが
 

脳に転移した腫瘍は異なる変異をため込む

2015-10-06 06:32:51 | 
Genetic screening of brain metastases could reveal new targets for treatment

September 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150927115518.htm

脳転移は原発腫瘍のしばしば数年後に現れるが、脳に転移した腫瘍の遺伝学的プロファイルが原発腫瘍のそれとどれぐらい異なっているのかはこれまで知られていなかった

マサチューセッツ総合病院のDr Brastianosたちは癌患者104人の組織サンプルから、原発腫瘍、脳転移、正常な組織の遺伝子を比較した
20人については脳以外の転移についても生検を得た

研究の結果、原発腫瘍と脳転移の遺伝子の特徴には共通しているものもあったが、重要な違いも存在した
56%の患者で薬剤の標的となりうる遺伝子の変化が脳の転移に見つかり、それは原発腫瘍には見られなかった

「このことが意味するのは、原発腫瘍の分析に頼ってしまうと、薬剤で標的にして効果的に治療できるかもしれない転移先の変異を見逃すかもしれないということだ」

今回の研究ではさらに、脳に一つ以上の転移がある場合、それぞれは遺伝学的に似ていることが判明した


これまで、癌が転移するにつれてどのように遺伝子を変化させて『進化』するのかについての科学者の理解は限られていた

研究者は今回の研究で、脳に転移する腫瘍と原発腫瘍は遺伝学的には共通するが、いったん脳に転移すると発達を続けて変異をため込むamassと結論した
それぞれの患者における脳転移の遺伝学的類似性は、それぞれの転移が脳に移動した一つのクローンから発達したことを示唆する

脳の遺伝学的変化は原発腫瘍で起きたどんなものからも独立していて、さらに体内の他の変異からも独立していると研究者は言う

原発腫瘍の遺伝学的特徴は、癌の特定の変異を標的にする薬剤を決定して治療を最適化するためには使えるが、脳転移は普通はroutinely生検されて分析はされていない
 


非コード領域の多型と前立腺癌リスク

2015-10-02 06:43:45 | 
Team develops strategy to determine how non-coding variants contribute to disease risk

Genome- and epigenome-editing tools used to pinpoint disease-causing variants

September 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150923182759.htm

共首席著者のMatthew Freedman, MDは、あるDNA多型が疾患リスクを上昇させるかどうかを正確に判断してそのリスク上昇がどのようにして生じるのかを確かめるための努力は、非常に複雑であると説明する

これまで、連鎖解析linkage analysisのような遺伝子マッピングアプローチはBRCA1/2遺伝子のようなタンパク質をコードする遺伝子内のDNA多型の同定を可能にしてきた(BRCA1/2が変異すると乳癌と卵巣癌の遺伝リスクが明らかに上昇する)
しかしそのような多型は疾患遺伝リスクの5%を占めるに過ぎず、残りの95%はタンパク質をコードしない調節配列に位置する多型によって影響されるようである(その調節配列はタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを制御する)


それらを分析するためのCAUSEL法の手順、彼らはそれを『過程pipeline』と呼ぶが、それは5つのステップから構成される

・遺伝子ファインマッピング
 genetic fine mapping to identify candidate variants,

・エピゲノムプロファイリング
 epigenomic profiling, in which the candidate variants are intersected with epigenetic data to identify which are most likely to cause the condition,

・エピゲノム編集
 epigenomic editing, in this case using reagents developed in Joung's laboratory, to confirm whether or not the candidate variants may possess regulatory capacity,

・ゲノム編集
 genome editing, to create cell lines with all possible genotypes of the candidate variants,

・表現型分析
 phenotypic analysis of those cell lines, to evaluate functional differences relevant to the disease or condition of interest.

※CAUSEL: Characterization of Alleles Using Editing of Loci/遺伝子座の編集を使ったアレルの特徴付け


http://dx.doi.org/10.1038/nm.3975
CAUSEL: an epigenome- and genome-editing pipeline for establishing function of noncoding GWAS variants.

GWAS研究によってマップされる疾患関連SNPの大半はゲノムでタンパク質をコードしない/非コード領域に位置するが、
それらの配列が持つ機能的または機構的な役割を確かめるのは非常に難しいことがわかってきた

今回我々は候補となる機能的SNPを評価するための全体的な処理過程general pipelineを説明するdescribe
そしてそれはfine mappingファインマッピングfine mapping, エピゲノムプロファイリングepigenomic profiling, エピゲノム編集epigenome editingによるものであり、
ゲノム編集genome editingを使って同種同系の細胞系統isogenic cell linesを作成し、その後に表現型の特徴を調べることphenotypic characterizationによって因果関係的機能に関して問いただすinterrogated

このアプローチを実証するため、我々は6q22.1という前立腺癌リスク遺伝子座を分析してrs339331を高スコアのSNPとして同定した
エピゲノム編集によりrs339331領域には調節能力があることを確かめた

我々はtranscription activator-like effector nuclease/TALENを使いゲノムを編集して
rs339331での3つの遺伝子型genotypeのすべて(TT,TC, CC)を示す同種同系isogenicの22Rv1前立腺癌細胞系統を作成した

リスクTアレルの誘導は、保護的アレルのCC系統と比較して、RFX6の転写を増加させ、HOXB13のrs339331領域への結合を増加させて、エンハンサーと関連するH3K4me2ヒストンジメチル化のrs339331領域での蓄積を増加させた

細胞系統でも細胞の形態と接着は異なり、
遺伝子の発現が異なる経路の分析ではアンドロゲンの影響が示唆された

まとめると、我々は広く利用可能なアプローチを開発して確認し、それはGWASで同定された非コード配列バリアントに関する機能的な因果関係を確定するために使うことが可能である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b9a5d42e4bba4e00fb26777d33a8b188
ジャンクDNAと思われていたゲノムの多型はDNAの環状化によりゲノムの遠い箇所と相互作用して結腸癌などのリスクにつながる
8q24.21にあるSNPのrs6983267は下流のMYCと相互作用し、さらにその上流の調節因子としてCCAT1を同定した(MYCとCCAT1は50万塩基以上離れている)



関連サイト
http://syodokukai.exblog.jp/20610724/
このようなシグナルが認められるハプロタイプブロックのすべてのSNP(タグSNPだけでなく分かりうるすべてのSNP)が疾患に関連するかを調べ、より強く関連するSNPを絞っていくことをファインマッピング(fine mapping; 微細地図作成)と呼ぶ。
この微細地図(fine map)の解像度(fine-mapping resolution)を上げていくことが、GWASの精度を高めるには重要とされる。
 

WWOXはグルコースをエネルギーとして使わせる

2015-09-28 06:10:12 | 
Role of cancer-suppressing gene uncovered

September 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150922104651.htm

WWOXタンパク質レベルの低い人は癌を発症しやすく、
WWOXレベルが低い癌は悪性になる傾向があり、治療にも応答しにくい

ショウジョウバエで研究したところ、WWOXレベルが低い細胞は他の細胞と競合して打ち勝つことができるようになることがわかった
その結果として癌は悪性化して患者の予後を悪化させる

ショウジョウバエでのさらなる研究により、WWOXは癌細胞の代謝の変化に関与することが判明した
癌細胞はグルコースの利用の仕方が通常とは異なり、グルコースをエネルギーよりもむしろ『建築材料building blocks』として使うことで分裂と増殖が促進されると考えられている
WWOXはグルコースを癌細胞の増殖ではなく、エネルギーとして使うようにバランスを保つのを助ける

この代謝の違いが癌細胞が通常の細胞と競合して打ち勝つために重要である
WWOXレベルの低さはグルコースを癌細胞の『建築材料』として使えるようにする

アデレード大学のRichards教授は言う
「癌抑制遺伝子のWWOXがどのようにして癌を抑制するのかを知った今、我々はWWOXを標的にしてその活性に影響し、癌細胞の性質を変化させることができるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0136356
Tumor Suppressor WWOX Contributes to the Elimination of Tumorigenic Cells in Drosophila melanogaster.
腫瘍抑制因子のWWOXはショウジョウバエにおいて腫瘍形成性/発癌性細胞の消去に寄与する

 


PARP14はワールブルク効果を促進する

2015-09-28 06:06:29 | 
New discovery offers cure by starving cancer cells

September 21, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150921091308.htm

PARP14はほとんど全ての癌細胞で過剰発現している
PARP14はアポトーシスを制御するキナーゼに作用する
PARP14はグルコースを通常の細胞とは異なる方法で利用できるようにする


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26258887
PARP14 promotes the Warburg effect in hepatocellular carcinoma by inhibiting JNK1-dependent PKM2 phosphorylation and activation.

Abstract
PARP14は、ワールブルク効果の重要な調節因子であるピルビン酸キナーゼM2/PKM2の活性を低く保つことにより、ヒト肝細胞癌/hepatocellular carcinoma/HCCにおいて好気的解糖を促進する
PARP14はHCCの原発腫瘍で強く発現し、患者の予後の悪さと関連する

機構的には、PARP14はアポトーシス促進性キナーゼのJNK1を阻害する
その結果、PKM2はスレオニン365のリン酸化を通じて活性化する

 PARP14─┤JNK1─(リン酸化)→PKM2→グルコースからピルビン酸への変換

 PARP14↑─┤JNK1↓─(リン酸化↓)→PKM2↓⇒ワールブルク効果↑,代わりの生合成経路(NADPH,グルタチオン)↑,抗酸化応答↑

 PARP14↓─┤JNK1↑─(リン酸化↑)→PKM2↑→グルコースからピルビン酸への変換↑,抗酸化応答↓,アポトーシス↑


さらに、PARP14を標的にすることはHCC細胞の抗HCC薬剤への感受性を増大させる
我々の発見はPARP14-JNK1-PKM2という調節経路は腫瘍細胞のワールブルク効果の重要な決定要素であることを示し、アポトーシスと代謝との間の機構的つながりを提示するprovide

http://www.nature.com/ncomms/2015/150810/ncomms8882/fig_tab/ncomms8882_F9.html
Figure 9: Mutation of Thr365 inhibits PKM2 and promotes PARP14-mediated HCC cell survival.

(e) Schematic illustration depicting metabolic changes in the presence (left) or absence (right) of PARP14 in HCC cells.
 


アレルギーと脳腫瘍

2015-09-19 06:07:50 | 
Hint of increased brain tumor risk five years before diagnosis

September 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150909142108.htm

オハイオ州立大学の新しい研究によると、脳腫瘍と診断される5年も前に免疫機能の変化が生じるという
この脳腫瘍が症状を生じるのは典型的には検出されるわずか3ヶ月前である


研究者は脳腫瘍と診断される平均15年前に集められた血液サンプルを用いてアレルギーと関連する12のタンパク質との相互作用を分析することで、
後に脳腫瘍と診断されたグループと脳腫瘍にならなかった対照グループとの間でそれらの関係がどのように異なるのかを調べた

血液サンプルの分析によると、後に神経膠腫という脳腫瘍と診断された人々では、その診断の最大5年前には免疫系のタンパク質であるサイトカインによるシグナル伝達が少ないことが示された
この相互作用は健康な対照群でも強く維持されていた

今回分析したタンパク質はサイトカインと呼ばれ、アレルギーと関連する免疫応答の間に活性化する
今回の研究でサイトカインが選ばれた理由は、アレルギーが神経膠腫ならびに膠芽腫のリスク低下と関連づけられているからである

これらの腫瘍は免疫系を抑制する能力があり、それにより増殖が促進される
今回の結果は初期の腫瘍の成長が脳腫瘍と診断される何年も前に免疫機能の変化として検出可能になることを示唆する

「サイトカインはすべて互いに関連しているためどれが最も重要であるかは言えないが、神経膠腫患者では診断から5年以内にそれらの関係すべての弱体化が観察され、対照群ではそのようなことはまったく観察されなかった」


Schwartzbaumが神経膠腫または膠芽腫の診断前の5年未満に取られた55人のサンプルまで分析を狭めると、
後に脳腫瘍を発症する人々においてサイトカイン間の相互作用の減少が明確に現れた


全グループの血液サンプルの間では、アレルギーがこれらの脳腫瘍から保護することを示唆する別のサイトカインの関係を研究者は発見した
診断の20年も前のIL-4タンパク質レベルの高さ(IL-4はアレルギーの人で過剰に生産される)は神経膠腫を発症する可能性の減少と関連することを分析は示した
この関連はそのパートナーのタンパク質sIL4RAとその相互作用を考慮した時も保たれた

「このことはこのサイトカインの相互作用が腫瘍の発症するであろう20年前に保護的効果があることを意味する」
Schwartzbaumは言う

今回の結果は、アレルギーが神経膠腫リスクを実際に低下させることを示唆する発見を支持するものである
これらの脳腫瘍は免疫系に影響するので
研究者はまだ、
アレルギーが脳腫瘍リスクを低下させるのか、
アレルゲンに対する過剰に敏感な免疫応答にこれらの腫瘍が診断前に干渉しているかどうか
を確信していない

Schwartzbaumの研究グループは以前、
アレルギーに関する抗体を含む血液サンプルの男女は
アレルギーの徴候がない人と比較して20年後の神経膠腫リスクがほぼ50%低下することを報告している


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0137503
Association between Prediagnostic Allergy-Related Serum Cytokines and Glioma.
 


関連サイト
http://www.cancerit.jp/18611.html
総IgE濃度が高い場合、総IgEが陰性の場合と比較して、20年後の神経膠腫リスクが46%減少した。
Schwartzbaum准教授の次の研究は、免疫応答の一部として炎症を促進または抑制する化学伝達物質であるサイトカインの血清標本中の濃度を測定し、これらのサイトカインがIgE濃度上昇と脳腫瘍リスク減少の関連性に重要な役割を果たしているかどうかの調査である。


関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/08/120803094429.htm
アレルギーの人は脳腫瘍のリスクが低いかもしれない


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/9f5d96ebecff19834f708c991ad636be
IL-13はTh2系サイトカインであり、炎症と免疫システム調節で重要な役割を演じる
IL-13は構造的および生物学的にIL-4と類似性があり、初めにIL13Rα1と結合することにより機能することが知られている
その後IL4Rαをリクルートしてヘテロ二量体化し、主にJAK2-STAT経路を経由してシグナル伝達を変換する

IL13Rα2はIL-13に高親和性だがシグナルを伝達しないデコイ受容体であり、IL-13のシグナルを阻害する
興味深いことに、IL13Rα2の発現の高さは、神経膠腫gliomasと頭頸部癌の発症と関連し [18] [19]、
膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌の浸潤と転移を促進することが示されている [20]–[22]