goo blog サービス終了のお知らせ 

機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

膵臓のβ細胞は休息させすぎると役割を忘れる

2015-08-03 06:57:16 | 代謝
Diabetics who skip breakfast provoke hazardous blood sugar spikes

Type-2 diabetics who 'fast' until noon risk day-long consequences

July 28, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150728120158.htm

昼までの「絶食」は、血糖スパイク(食後高血糖)を引き起こし、2型糖尿病患者のインスリン応答を障害する

22人の2型糖尿病、平均56.9歳、BMIは28.2 kg/m2

研究の2日間で、朝食を食べた日の昼食後と夕食後は192 mg/dlと215 mg/dlだったが、
朝食を抜くと268 mg/dlと298 mg/dlになった

「これが意味するのは、昼食と夕食でデンプンや砂糖の量を減らしても、朝食も抜いたら血糖値を抑えるために何の効果もないということだ」
Jakubowicz教授は言う


研究によると、前日の夕食から次の日の昼食まで時間が長すぎると、膵臓のβ細胞は「記憶」をなくす
言い換えると、β細胞はその重要な役割を「忘れる」
その結果、β細胞が回復するために余計に時間がかかり、インスリン応答は小さくなり、そして遅れるので、一日中ずっと血糖値の上昇が悪化することになる

もう一つの要因は、昼までの絶食が脂肪酸を上昇させ、インスリンが効果的に血糖値を下げることができないようにする


「我々の研究に照らしてみるとin light of our study、2型糖尿病患者の方は朝食を抜かないことを強く推奨します」


この研究はDiabetes Careに掲載され、ボストンのADAミーティング2015で発表された
presented at the American Diabetes Association meeting in Boston in June 2015


http://dx.doi.org/10.2337/dc15-0761
Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial

AUC 0分-180分は、
インスリンが17%、iGLP-1が19%低かった

※intact glucagon-like peptide-1 (iGLP-1)



Jakubowicz教授
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25724569
High-energy breakfast with low-energy dinner decreases overall daily hyperglycaemia in type 2 diabetic patients: a randomised clinical trial.
高エネルギーの朝食と低エネルギーの夕食は、一日全体の高血糖を糖尿病患者で減少させる


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23512957
High caloric intake at breakfast vs. dinner differentially influences weight loss of overweight and obese women.
高カロリーの朝食vs夕食は、過剰体重/肥満女性の体重減少に異なる影響を与える


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22178258
Meal timing and composition influence ghrelin levels, appetite scores and weight loss maintenance in overweight and obese adults.
過剰体重/肥満成人において食事のタイミングと構成はグレリンレベルと食欲、体重減少の維持に影響

セラミドを分解するセラミダーゼはインスリン感受性を高める

2015-07-30 06:05:45 | 代謝
Lipid enzyme heightens insulin sensitivity, potential therapy to treat Type 2 diabetes

July 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150716135229.htm

体が燃焼するより多くの脂肪酸を摂取すると、過剰な脂肪はセラミドに変換される

多過ぎるセラミドはインスリンシグナルに干渉し、インスリン抵抗性とおそらくは糖尿病か非アルコール性脂肪肝につながる


過剰なセラミドはスフィンゴシンに変換される
どちらもエネルギー源だが、代謝的に異なるシグナル伝達をする
セラミドはインスリン抵抗性と炎症につながり、
スフィンゴシンは逆のことをする

※セラミダーゼは、セラミドを加水分解してスフィンゴシンと脂肪酸にする酵素


糖尿病マウスの脂肪組織と肝臓にセラミドの分解を引き起こすセラミダーゼを導入すると、インスリンの作用は正常化した


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2015.06.007
Targeted Induction of Ceramide Degradation Leads to Improved Systemic Metabolism and Reduced Hepatic Steatosis.


Highlights
・セラミドは食事によるNAFLDにおいて原因となる役割を演じる

・セラミドはPKCζ活性化を促進し、肝臓においてCD36による脂肪取り込みを増加させる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150105182454.htm
Diabetes debate: Triglycerides form in liver despite insulin resistance
>肝臓でのトリグリセリド合成は、インスリンの作用よりもむしろ輸送される脂肪酸に依存する
>これは「なぜインスリンで脂肪肝が改善するのか」という矛盾に答える

http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1423952112
>[U-13C] パルミチン酸/[U-13C] palmitateを注入した


http://ta4000.exblog.jp/18404873/
FoxO1はこの切り替えを、3つの酵素の発現を促進することにより制御する。
ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ (PDK4) 。
リポプロテインリパーゼ (LPL)。
脂肪酸輸送タンパク質 (FAT) CD36。CD36は骨格筋への脂肪酸の取り込みを促進する。

太った魚はヒトの肥満を解明する

2015-07-25 06:43:43 | 代謝
Fat fish illuminate human obesity

Binge-eating cavefish share mutated gene with some obese people

July 13, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150713161426.htm

メキシコの盲目の洞窟魚/blind cavefish(Astyanax mexicanus)は、MC4Rに変異がある

研究チームは、いくつかの異なる洞窟と、周囲の川面surface riversからこの魚を調べて、
どのような遺伝子変異が代謝と体重、食欲における違いを促進しうるのかを見つけようとした


太っていて強い食欲insatiable appetitesがあるヒトは、同様にMC4R遺伝子が変異していることがある
そしてMC4Rがないマウスは、非常に太っていて常に空腹である


MC4Rは、レプチン(食欲抑制ホルモン)とインスリンによって調節されることが知られている

「ダイエットや減量をしようとすると、ヒトの脳にある調節装置が今の体重を維持しようとする。MC4Rはその中の一つである」


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1510802112
Melanocortin 4 receptor mutations contribute to the adaptation of cavefish to nutrient-poor conditions.

洞窟は食料が不足している

全ての洞窟魚は、川面の同種surface conspecificsよりも食料が限られている間の体重の減少は遅かったが、
川面の相対者counterpartsよりも多くの食料を消費したのは洞窟魚のサブセットだけだった

※surface: surface river


調べると、洞窟魚にはMC4Rに保存された変異を持つものがいた
変異した残基の一つは過去にヒトの肥満との関連が示されている

このアレルは過剰に食べる表現型が存在する洞窟集団だけに固定されているようだ

この同じアレルが複数の洞窟に存在することから、
川面surfaceの集団に存在する「固定したstanding遺伝的バリエーション」からの(自然)選択によるものであるようだ



http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f5ed9d14930175dfb3b19b133a1f5023
 [視床下部室傍核]MC4R─┤食欲
 [POMC満腹ニューロン]α-MSH→[視床下部室傍核]MC4R↑─┤食欲↓
 [AgRP空腹ニューロン]AgRP─┤[視床下部室傍核]MC4R↓─┤食欲↑



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/07/130718142807.htm
Gene mutation linked to obesity: Mice gain weight even when fed normal amounts of food

 [脂肪細胞]レプチン→α-MSH↑─(Mrap2)→Mc4r─┤食欲,体重

Mc4rは、Mrap2の助けを借りてα-MSHを検出し、その結果として食欲と体重が減る
このMc4rのようなシグナル経路に変異があると、肥満の可能性が上昇することが知られている



http://kaigyoi.blogspot.jp/2013/07/mrap2fto.html
体重増加に関わる遺伝子: Mrap2、FTO

Mrap2 遺伝子は、動物で食事量減少するが、通常のマウスの2倍の体重を維持する。
食欲回復するとさらに体重増加し、対照マウスとカロリー同等でも体重増加し続ける。

FTO遺伝子は食欲増加・カロリー摂取量と相関を持つ。
グレリンが食前後変化見られないことなどで常に満足している状態になる低リスクFTO遺伝子型も見いだした。

加齢と関連する肥満と糖尿病を刺激する遺伝子

2015-07-25 06:35:00 | 代謝
Gene fuels age-related obesity and diabetes

July 13, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150713172233.htm



Bennettは30年以上前にankyrin-Bを発見したが、
その後ankyrin-Bは様々な疾患と関連付けられてきた
それは例えば不整脈irregular heartbeat、自閉症、筋ジストロフィー、加齢であり、そして最も最近では糖尿病である

数年前、Bennettの研究室はankyrin-Bの変異がインスリン分泌と代謝に関与することを発見した
その後の研究で、まれなankyrin-Bバリアントは2型糖尿病と関連することがわかった

R1788Wは白人とヒスパニックに広く見られる変異で(アメリカで100万人)、
L1622Iはアフリカ系アメリカ人(彼らは特に糖尿病のリスクが高い)にのみ見られる


R1788W変異を2コピー持つマウスは、通常のマウスよりも作られるインスリンの量は少なかったが、この欠点shortcomingにもかかわらず血糖値は正常だった

ヒトと同様の耐糖能テストを実施すると、驚いたことに変異マウスではグルコースは通常よりも早く代謝された


通常ではインスリンがGLUT4によりグルコースを取り込ませるが、
変異マウスではインスリンがなくても筋肉細胞と脂肪細胞の表面にGLUT4が表れていた

これは若い時には有利であり、インスリンレベルの低さから守られる
しかし年を取ると(または高脂肪食に切り替えると)それはマウスを太らせ、最終的にはインスリン抵抗性になる


研究者は、はるか昔はこのR1788W変異が(よりマイルドなL1622I変異は)進化の上で有利だったのかもしれないと考えている
年老いた狩猟採集民aging hunter-gatherer typesは、次の獲物を効果的に追うことができないので、できるだけ多くの脂肪を獲得して飢えを避ける必要があった

高脂肪食と高カロリー食はあふれている現代では、これらのバリアント/異型は、肥満と糖尿病のような「現代病modern afflictions(苦悩,苦痛,苦悩をもたらすもの)」のリスクを増大させる


しかし、マウスでの研究がヒトでも真であるかの研究はこれからである


http://dx.doi.org/10.1172/JCI81317
Ankyrin-B metabolic syndrome combines age-dependent adiposity with pancreatic β cell insufficiency.
アンキリン-B代謝性症候群は、加齢に依存的な肥満と、膵臓β細胞の機能不全とを結びつける


http://www.jci.org/articles/view/81317/figure/7
Figure 7
Ankb knockin mice are more susceptible to HFD-induced metabolic derangements and obesity.
Ankbノックインマウスは、高脂肪食による代謝的混乱と肥満に影響を受けやすくなる

(C) Epididymal fat-pad weights.
精巣上体/副睾丸の脂肪-詰め物の重量


ヒトAnkBのR1788Wバリアントはmixed European descentの0.3%、
今回の研究でHFDへの感受性を上昇させたL1622Iアレルはアフリカ系アメリカ人の7.5%で、
ホモ接合体では約0.1%の頻度で存在することが予想される


カルボキシペプシダーゼE(CPE)のホモ接合変異による病的肥満

2015-07-08 05:06:00 | 代謝
New genetic form of obesity, diabetes discovered

June 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150630080159.htm


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0131417
Truncating Homozygous Mutation of Carboxypeptidase E (CPE) in a Morbidly Obese Female with Type 2 Diabetes Mellitus, Intellectual Disability and Hypogonadotrophic Hypogonadism.
2型糖尿病・知的障害・低性腺刺激性の/低ゴナドトロピンの性腺萎縮を伴う病的な肥満女性におけるカルボキシペプチダーゼE(CPE)のホモ接合の短縮型変異




http://ta4000.exblog.jp/18487311
>FoxO1は、PomcとCpeの発現をどちらも抑制する。Cpe (カルボキシペプチダーゼE) はペプチダーゼの一つで、POMCを加工してα-MSHにする (Fig. 7)。

※carboxypeptidase E (Cpe): カルボキシペプチダーゼE。ペプチドのC末端からアミノ酸を1残基ずつ切り離すエキソペプチダーゼ

2015年5月19日

2015-05-24 11:28:34 | 代謝

β細胞の生と死
The life and death of beta cells



糖尿病は現代社会の悩みの1つである。患者数は毎年増加し、世界ですでに3億8000万人を越える患者がいる。International Diabetes Foundationによれば2030年までに5億人以上が2型糖尿病にかかると推定されている。現在スイスでは43万人以上が糖尿病に罹患し、そのうちの4万人が1型糖尿病である。

1型と2型糖尿病に共通するのは膵臓でインスリンを作っているβ細胞が次々に死んでいくことである。それにより細胞が血液からブドウ糖を取り込んで燃料として代謝する際に重要なシグナルが阻害される。



 マイクロRNAは細胞死の引き金を引く

何がβ細胞の死を引き起こすのか、その原因はこれまで正確にはわかっていなかった。今回、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)Institute of Molecular Health Sciencesの教授であるMarkus Stoffelを中心とする研究者グループは、インスリン産生細胞がなぜ機能しなくなるのかを左右する新しいメカニズムを発見した。それはマイクロRNA(miR)200という短いリボ核酸の過剰な産生によって引き起こされる。

糖尿病のマウスのβ細胞ではmiR-200の産生が非常に増加し、この特定のマイクロRNAが過剰になる。研究者は糖尿病のマウスモデルを使い、強制的にmiR-200を作らせることで急激にβ細胞が死ぬことを証明した。反対に、miR-200を阻害することで極度のストレス下でさえβ細胞は生き残った。β細胞のストレスとは例えばマウスの血液中の脂質濃度の異常であり、もう一つはインスリンが作られる場所である小胞体へのストレスである。

「これらの観察は非常に意味深く、そして興味深い」、Stoffelは言う。

彼らの実験は、miR-200がβ細胞の生存において重要な役割を演じることを示す。miR-200がβ細胞にプログラム細胞死(アポトーシス)をもたらすことができるのは明らかである。



 β細胞が燃え尽きる

β細胞は糖尿病の発症において重要である。糖尿病の前兆の1つはインスリン抵抗性である。例えば太りすぎた人たちの筋肉は、β細胞が作るインスリンにあまり反応しないか、またはまったく反応しない。β細胞はインスリン産生を増加させるために分裂して増殖するが、やがて働き過ぎたβ細胞は疲弊して次々に死んでいく。インスリンは不足し、結果として糖尿病になる。

「妊婦でもある程度までは同じことは起きるが、このβ細胞の分裂プロセスと増加したインスリン分泌は可逆性であり、妊娠後は元に戻る」、Stoffelは言う。

しかし、このプロセスは太った人々では可逆性ではなく、しかも彼らは血中脂質濃度にも問題がある。脂質の異常はさらなるストレスをβ細胞に与える。



 マイクロRNAの三つ組

Stoffelの研究グループは、最近いくつかのマイクロRNAを特定した。それらはβ細胞の生存と機能に関連があり、したがって糖尿病にも影響するものだった。

「いくつかのマイクロRNAがβ細胞に作用するようだ。それらはそれぞれ異なるストレス対策タスクを実行する」、彼は言う。

彼らが発見したmiRファミリーの1つは、より多くのインスリンが必要とされる状況への反応としてβ細胞が分裂するために重要である。このマイクロRNAが存在しない場合、β細胞はほとんど分裂しないだろう。別のマイクロRNAファミリーは、どれくらいのインスリンが作られて発現するかを制御する。

「我々は今回、第3のファミリーであるmiR-200はβ細胞の生と死を左右することを確かめた」、Stoffelは要約する。

これらの短いRNA配列は、大きな治療の可能性を示す。それらの活性は、配列と完全に相補的であるように対応するRNA鎖によって阻害できる。Stoffelはそれをantagomir(拮抗マイクロRNA)と呼ぶ。

antagomirは現在、C型肝炎の治療法として第二相の臨床試験が実施中である。miR-122のantagomirはC型肝炎ウイルスの複製を停止させる。antagomirが糖尿病に関係する有害なマイクロRNAを扱えるのか。できるとすれば、どのようにして使えばいいのか。それを確かめるためにさらなる研究が必要である。

学術誌参照:
1.マイクロRNA-200ファミリーは、2型糖尿病で膵β細胞生存を調節する。
The microRNA-200 family regulates pancreatic beta cell survival in type 2 diabetes.

Nature Medicine、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150519122108.htm



<コメント>
脂質異常や小胞体ストレスによって、どのようにβ細胞が死ぬのかの一端が明らかになったという記事です。

今回の記事に出てくるマイクロRNAのmiR-200ファミリーには、miR-200a、miR-200b、miR-200c、miR-141、miR-429が含まれます。miR-200ファミリーは癌の悪性化を抑制することで知られていますが、糖尿病にとってはあまりありがたくない存在のようです。

AbstractReference33を見ると、ERストレスの間に誘導されるP58IPK/DNAJC3はERストレスのネガティブフィードバック要素として機能し、そのP58IPK/DNAJC3をmiR-200が抑制してしまうことでERストレスが抑制されにくくなるとあります。

β細胞はERストレスに弱いとされています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/144/2/144_53/_article/-char/ja/
>β細胞は小胞体ストレスに対して脆弱であり,閾値を越えた小胞体ストレスを受けると積極的にアポトーシスを誘導する.

ERストレスがTXNIPを介してアポトーシスを誘導するというCell Metabolismでの報告もありました。

http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(12)00284-7
>ERストレス→IRE1α→TXNIPを不安定化させるmiR-17↓→TXNIP↑→NLRP3↑→IL-1β↑→アポトーシス↑

あと、記事中のβ細胞の機能等に関与する別のマイクロRNAというのは、おそらくこの2つのことでしょう。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24789908
MicroRNA-7a regulates pancreatic β cell function.
 miR-7a─┤インスリン顆粒の膜との融合→インスリン分泌

※太っていて軽度の糖尿病だがβ細胞機能が補償されている人(obese and moderately diabetic individuals with compensated β cell function)ではmiR-7aは減少している
(miR-7aはブレーキだがインスリンが必要なのでブレーキが解除されている?)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19289822
miR-375 maintains normal pancreatic alpha- and beta-cell mass.
 miR-375→β細胞の成長と増殖

他にも色々あります。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21654750
MicroRNAs 103 and 107 regulate insulin sensitivity.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23389544
Obesity-induced overexpression of miR-802 impairs glucose metabolism through silencing of Hnf1b.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16258535
Silencing of microRNAs in vivo with 'antagomirs'.
 antagomir-122─┤miR-122

2015年3月20日

2015-04-09 00:33:12 | 代謝

危機の間に肝臓の維持を補助するバックアップシステムが発見される
Backup system that helps sustain liver during crisis discovered



モンタナ州立大学とスウェーデンの科学者は、他のシステムが失われるか障害を生じたときに肝臓の機能維持を補助する『抗酸化システム』を発見した。

電力が不足している時に始動する発電機や主役が病気の時にステージに上がる代役のように、新しく発見されたシステムは危機的状況の間に増大する。それはアミノ酸のメチオニンによって燃料を供給され、ハーブティーやサプリメントからは得られない。メチオニンはヒトの体内で作ることができず、タンパク質を食べることによってのみ得ることができる。

「これは重要な発見である」、MSUの微生物学と免疫学部の教授であり、研究の共著者でもあるEd Schmidtは言う。

「それは我々に、ヒトと全ての生物について語る。これはあなたの細胞が生存に必要とするバランスを維持するための、もう一つの方法である。」

Schmidtはカロリンスカ研究所の共同研究者らと共に、彼らの発見をNature Communicationsで3月20日に発表した。カロリンスカ研究所はヨーロッパで最大の、そして最も卓越した医学大学の1つである。

いくつかのビタミンとサプリメントは抗酸化物質の働きをするとSchmidtは言う。酸化は加齢や癌、炎症性疾患の原因となりうるが、抗酸化物質は細胞をそのような損傷から保護するのに役立つ。しかしながら、ビタミンとサプリメントは、肝細胞にもともと存在する2つのシステム、チオレドキシンとグルタチオンを置き換えることはできない。

詳しく調査するため、Schmidtの研究室は2つのシステムの重要な構成要素を肝臓に持たないマウスを開発した。そのマウスは弱々しく、ほとんど死ぬ寸前だったとSchmidtは言う。しかし彼らは生き残った。

研究者はその謎を追い求め、第3の抗酸化システムを発見した。この発見はヒトの健康問題に広範囲の影響があるという。その力の驚くべき源はメチオニンである。

「メチオニンは含硫アミノ酸であり、細胞がタンパク質を作るために食事で取る必要がある。さらに、メチオニンは以前は知られていなかった強力な抗酸化物質である。これまで調べられてきた他のいかなる抗酸化物質とも異なり、他の2つの抗酸化システムが存在しないか障害を生じたときでも、メチオニンは肝臓を維持することが可能である」、Schmidtは言った。

「それはよく知られていたが、影に隠れていた」、Schmidtは続ける。

「強力で普遍的な2つのシステムを取り除いても肝臓は生き残ることを発見したことで初めて、我々はこの第3のシステムの役割を認識した。」

メチオニンは、卵、肉、魚、ブラジルナッツ、ゴマの種、そして穀物に多い。

「標準的なバランスのよい食事には、メチオニンが多く含まれる」、Schmidtは言う。

「これが問題になるのは、食事からタンパク質が欠乏していたり、おそらく何らかの毒にさらされた時などの極端なケースだけである。」

学術誌参照:
1.食事に含まれるメチオニンは、マウスの肝臓において細胞質の酸化還元ホメオスタシスを維持することが可能である。

Nature Communications、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150320133114.htm

<コメント>
メチオニンは、肝臓の抗酸化システムのバックアップとして働くという記事です。

Abstractを見ると、チオレドキシン(thioredoxin)とグルタチオン(glutathione)の経路は、グルコースからペントースリン酸経路を経て得られるNADPHに依存的に肝細胞の抗酸化経路を維持しています。

それらの経路の内、チオレドキシンレダクターゼとグルタチオンレダクターゼを欠損したマウスはNADPHに依存しない3番めの経路により生き残りますが、シスタチオニンγ-リアーゼ(cystathionine γ-lyase)を阻害すると肝細胞は急速にネクローシスしたそうです。


「メチオニンによって促進される含硫置換基移動が、NADPHに依存しない経路を経由してグルタチオンの合成に必須の前駆体であるシステインを合成酵素に供給する。食事によるメチオニンは細胞のジスルフィド還元力ならびにすべての含硫アミノ酸を供給する」とあります。

メチオニンとコリンを欠乏させることでNASHを引き起こすモデルマウスとも関係がありそうです。


2015年4月2日

2015-04-05 23:39:50 | 代謝

脳と腸の関係:
体重を調節する脳細胞の、重要な遺伝子の引き金

The brain-belly connection:
Scientists find key genetic triggers in weight-regulating brain cells


あなたに食べるように命じる、または食べることを止めることを命じる頭の中の小さな声は、実際には小さな声ではない。実際、それは約1万もの特殊な脳細胞の集まりである。今回、科学者の国際研究チームはそれらの細胞の内側にある小さい『引き金』の存在を明らかにした。その引き金は『声』を生み出し、一生の間ずっとあなたに話し続ける。

この新しい研究は魚とマウスで実施されたもので、食べ過ぎるヒトやほとんど食べないヒトにはまだ適用することはできない。しかしそれは、DNAのほんの一部が人体の食欲と体重の調節に対してどのようにして大きな影響を及ぼすかについて明らかにする。これは体重の調節に関与する脳細胞の遺伝子がどのように制御されるかについての初めての厳密な考証である。

今週のPNASオンライン版で発表される論文と最近のPLoS Geneticsの論文において、研究チームはPOMCと呼ばれるニューロンにとって重要な遺伝子調節因子に関する発見を報告する。脳内の深い位置にある視床下部に存在するPOMCニューロンの集まりは、満腹感や空腹感のコントロールセンターである。POMCニューロンは体内からの信号を受け取り、化学的シグナルを発して食欲と摂食を調節する。POMCニューロンが存在しないか正しく機能していないと、動物とヒトは危険なまでに肥満になる。今回の新しい発見は、POMCニューロンの内側にある特定の遺伝子の『引き金』が作用していなくても同じことが起きることを動物実験で示す。

Malcolm Low医学博士(ミシガン大学メディカルスクール)とMarcelo Rubinstein博士(アルゼンチン・ブエノスアイレス大学)らが率いる研究チームは長い間POMCシステムを研究してきた。彼らの新しい発見は、食欲を調節するシグナルを生じるPOMCニューロンの遺伝子、つまりPomc遺伝子が中心である(Pomcはproopiomelanocortin/プロオピオメラノコルチンの略)。

しかし、遺伝子の研究それ自体はPOMC細胞がなぜ、そしてどのように活動するのかについての一部始終を語ってくれるわけではない。研究チームは2つの新しい論文において、転写因子と2つのエンハンサーがどのようにPomc遺伝子の引き金として働くのかについて報告する。これら3つはすべて、POMC細胞がどのくらいの頻度で、そしていつその遺伝子を使ってシグナル分子を作り、体内に伝えるのかを調節する。

さらに、Islet 1という転写因子は、生まれる前の脳の発達で最も初期の段階の間にPOMC細胞が正しく育つのを助ける際にも重要な役割を演じる。

「脳はレプチンというホルモンからの影響に反応して体重を調節するが、POMC領域はその調節するための手段の中核である」、分子統合生理学部の教授であるLowは言う。

「我々は、Pomc遺伝子がこれらのニューロンでどのように調節されるのかについて理解することに関心がある。POMCニューロンは非常に小さい集まりだが、仕事としては大きい。」



遺伝子の引き金を徹底的に調べる

PLoS Geneticsで報告された発見は、2つの異なる遺伝子エンハンサーの影響を示す。エンハンサーはPomc遺伝子の近くのDNAに存在する配列で、細胞がDNAを読み込むことを容易にする。空港の滑走路への道をパイロットに示すシグナルライトのように、エンハンサーはタンパク質を遺伝子の方へ導く。

研究者は2つのエンハンサーがお互いを補うように働くことを明らかにした。それらは両方とも重要な時にPomc遺伝子の発現を促した。2つのうち1つはすべての哺乳類で同じ形で見つかり、もう1つはすべての胎盤哺乳類の間で見つかる。このことは、2つのエンハンサーが進化の過程を通じて完全に保たれてきたことを示唆する。

このnPE1とnPE2と呼ばれるエンハンサー(neuronal POMC enhancer)は、脳内でのみPomc遺伝子を特に調節することを新しい研究は示す。それらの両方とも持たずに生まれたマウスは、あたかもPomc遺伝子が働かなくなったかのように肥満になった。一方、nPE2だけを持たないマウスはnPE1がそれを補うことで正常に育った。Pomcの重複するエンハンサーシステムはこの遺伝子の重要性を示唆するとLowは言う。

しかし、Pomc遺伝子を読み込むように細胞の引き金を引くのが具体的に何なのかについて理解するとなると、遺伝子のエンハンサーは方程式の一部に過ぎない。エンハンサーにくっつくタンパク質、つまり転写因子も不可欠である。



研究者はPNASの新しい論文で、Isl1遺伝子によってコードされる転写因子Islet 1が、このPomcにとって重要な役割を演じると報告する。その名前が示唆するように、Islet 1は膵臓の膵島細胞(islet cells)において転写因子として働くが、それはPOMCニューロンでも発現することが判明した。妊娠の途中に視床下部の細胞がIslet 1を作らないように阻害すると、胎児マウスのPOMCニューロンはまったく育たなかった。さらに、生まれる前の視床下部で正常にIslet 1を作らせてからその後に阻害すると、POMCニューロンの量は著しく低下し、そして肥満になった。

研究者はゼブラフィッシュでもIslet 1の重要性を示すことができた。発達初期においてIslet 1転写因子を阻害されたゼブラフィッシュも、マウスと同様にPOMCニューロンは発達しなかった。ゼブラフィッシュはPomc遺伝子の転写の調節にnPE1/2とは異なる遺伝子エンハンサーを使うので、この結果はIslet 1それ自体の確かな重要性を示す。

「まとめると、本研究は脊椎動物におけるニューロン特異的な遺伝子の最初の例を表す。そこで我々が明らかにしたのは、エンハンサーとそして様々な種で共有される転写因子は、脳を発達させる際に、そして成人になってからも生涯を通じて遺伝子発現を制御するということである」、Lowは言う。



今後の方向

Islet 1の喪失の影響、そして2つのPomc遺伝子エンハンサーの一方または両方の喪失についての研究は、これらの引き金の重要性を示すと彼は言う。しかし同じ要因がヒトでも同じように作用するかどうかの研究は、他のエンハンサーと転写因子が関与する可能性があるためさらに複雑になると思われる。これまでのヒトのゲノムワイド研究では、Isl1遺伝子の変化と肥満との間に関係はまったく示されていない。

POMCニューロンへのシグナルとPOMCニューロンからのシグナルの結合を追跡する画像化研究は、更なる手がかりを明らかにした。そして理論的には、Pomc遺伝子産物の産生を増加させる薬や、機能不全を起こしたPOMCニューロンの代わりの細胞を発達させる薬を発見できる可能性はある。

「ヒトでは、Pomcの調節は体重管理の方程式の一部かもしれない」、Lowは言う。

「まだはっきりとはわからないが、マウスモデルに似ている可能性があると我々は考えている。マウスモデルではその役割がダイヤルと似ていて、Pomcの発現量と肥満度の間は線形関係である。この研究は、脳がどのようにして摂食を調節するのかについての全体的な理解への道を開く。」

LowとRubinsteinは、POMCニューロンの研究を続けるために米国国立衛生研究所(NIH)から助成金を新たに受け取ったばかりである。彼らは他の転写因子を探し、そしてPOMCニューロンを刺激する際のレプチンとエストロゲンの役割を調べたいとしている。

彼らはさらに、人工多能性幹細胞(iPS)から発達するニューロンを使ってPOMCニューロンが育つ間の遺伝子の活性も研究したいと考えている。加えて、妊娠中または授乳中のマウスでPOMC発現が低下して摂食が増加するときのPOMC活性を研究するつもりである。

記事出典:
上記の記事は、ミシガン大学ヘルスシステムによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.Islet 1は視床下部メラノコルチンニューロンの同一性を特徴づけ、成人期における正常な食物摂取と肥満にとって重要である。

PNAS、2015;

2.部分的に重複するエンハンサーは、哺乳類のPomc発現を重要な機能的閾値を上回るように協力して維持する。

PLoS Genetics、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150402081628.htm

<コメント>
視床下部で満腹感を調節するPOMCニューロンでPomc遺伝子の発現を調節する3つの因子についての記事です。

POMC(プロオピオメラノコルチン)からは、エンドルフィン (オピオ)、メラニン細胞刺激ホルモンMSH (メラノ)、副腎皮質刺激ホルモンACTH (コルチン) が作られ、その産物の一つのα-MSHが食欲を抑制します。

POMCがないマウスは食べ過ぎて肥満になりますが、ヒトではIslet 1をコードするIsl1遺伝子の多型は肥満との関係が見つかっていないとのことです。

下の画像は、左が正常に成長しているマウスの視床下部POMCニューロンの画像で、緑色は転写因子が作られていることを示し、オレンジ色は細胞の正常な産物を表しています。
右では転写因子の遺伝子が削除され、細胞は転写因子を作らなくなり、体重の調節を助ける正常な産物も作られていません。



2015年3月27日

2015-03-29 23:18:23 | 代謝

良い脂肪組織は、どのように脳と情報をやりとりするか
How body's good fat tissue communicates with brain



ジョージア州立大学の研究者によると、人体の「良い脂肪」である褐色脂肪組織は、感覚神経を通して脳と情報をやりとりして情報を共有するようだ。その情報は、どれくらいの脂肪が存在し、そしてどれくらいの脂肪を失ったかというような内容であり、それは肥満との戦いにとって重要である。この発見は、褐色脂肪が熱を生じる際に脳と褐色脂肪組織との間で行われる会話を説明するのに役立つ。

褐色脂肪は「良い脂肪」または「健康な脂肪」と考えられている。褐色脂肪はカロリーを消費し、人体が熱を生じてエネルギーを消費するのを助ける。一方で白色脂肪は後のためにエネルギーを保存し、糖尿病と心臓疾患のような健康問題のリスクを増す。健康な代謝の人は白色脂肪が少なく、逆に褐色脂肪は活発に供給されている。

褐色脂肪はエネルギーをより多く燃焼する能力に関して大きな役割を演じ、太らずに細いままでいるための道具になりうることを研究は示す。製薬会社は褐色脂肪を標的にしており、活性化を試みているとJohnny Garretsonは言う。彼は今回の研究著者であり、ジョージア州神経科学研究所とObesity Reversalセンターで博士課程の学生である。

通常、褐色脂肪組織は脳から到着する交感神経系の通信で活性化する。この通信を模倣する薬(β3-adrenoceptor agonist)で褐色脂肪を活性化すると、脂肪は感覚神経(sensory nerves)を活性化することによって脳に応答することを研究は明らかにした。褐色脂肪から脳への感覚神経の通信は、直接的な化学的活性化に反応する活性、ならびに熱の産生を増加させた。

「褐色脂肪からの感覚神経の機能が調べられたのはこれが初めてである」、Garretsonは言う。

「褐色脂肪は代謝にとって比較的重要である活動的な臓器である。我々はそのコミュニケーションの新しい経路を明らかにした。今回の研究は脂肪と脳との間のコミュニケーションについて我々に教える。それは肥満の治療にとって実に有益である。」

「褐色脂肪が多い人ほど代謝が良く、2型糖尿病になる例は少なく、そして体が細いというエビデンスがある。どのようにして褐色脂肪の活動量を増加させ、褐色脂肪を増やすのかを知ること、それは効果的かつ急速に減量するためのもう一つの方法を理解しようとする未来の試みである。」



研究者は褐色脂肪が脳に多くのことを伝えていると推測している。それは例えば、どれくらいの熱が作られているか、どのような種類の自由なエネルギーがどれくらい保存され、また使われているか、どれくらいの脂肪が残っていて、どれくらいの脂肪を失ったかというような情報である。

「褐色脂肪が熱を作り始め、熱くなって活動的になり、人体にとって良いことをするにつれて、それは我々の代謝を増加させて白色脂肪を燃焼させるのを助ける」、Garretsonは言う。

「褐色脂肪は熱くなるにつれて、熱くなっていることを脳に教える。我々はこれが何らかの種類のフィードバック、例えばサーモスタットのようなものであると考えている。それは、熱くなるにつれて、それに対して脳がどのように応答するかをコントロールしているのだろう。」

脳は脂肪組織と情報交換して、自由なエネルギーを分解し、我々の人体が機能するためにそれを放出させるか消費するよう伝えることは既に知られていた。本研究は、褐色脂肪組織と脳の間のフィードバックループを示す。

研究チームは長い間、脂肪から脳、脳から脂肪へのコミュニケーションを研究してきた。しかし、彼らは神経系を通じた脂肪から脳への連絡を調べている、世界でもわずかな研究室の内の1つであるとGarretsonは言う。

記事出典:
上記の記事は、ジョージア州立大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.褐色脂肪組織は、交感神経-感覚神経フィードバック回路を有する。

Journal of Neuroscience、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150327101035.htm

<コメント>
論文のリンク先が間違っているようです。実際のアドレスはこちら

脳と褐色脂肪組織は、お互いに通信するフィードバックループを有しているという記事です。

 脳→(交感神経系/SNS)→褐色脂肪細胞/BAT

 褐色脂肪細胞→(感覚系/SS)→脳

Abstractによれば、褐色脂肪細胞の熱産生に強く関与している箇所として
 淡蒼縫線核(raphe pallidus nucleus)
 孤束核(nucleus of the solitary tract)
 中脳水道周囲灰白質(periaqueductal gray)
 視床下部室傍核(hypothalamic paraventricular nucleus)
 内側視索前野(medial preoptic area)
を確認したとあります。


2015年3月17日

2015-03-22 23:54:39 | 代謝

勃起障害薬は、糖尿病のマウスにおいて神経損傷を軽減する
Erectile dysfunction drug relieves nerve damage in diabetic mice



糖尿病の長期の罹患は痛みを伴う神経障害を引き起こし、時に致命的になることがある。ヘンリー・フォード病院の新しい動物実験によると、勃起障害の治療で一般的に用いられるシルデナフィル(sildenafil)はそのような神経障害を軽減する際に有効であるかもしれないことを明らかにした。今回の研究は、糖尿病患者の7割で見られる合併症の末梢神経障害を標的にする。

研究を指揮したヘンリー・フォード神経科学者のLei Wang医学博士によれば、以前の動物実験では多くの薬が有効性を示したにもかかわらず、そのほとんどは臨床試験で効果が見られなかったと言う。

「一般的にさまざまな薬物治療の調査で使われるのは若い動物で、糖尿病による末梢神経障害の初期段階である」、Wang博士は説明する。

「しかし、臨床試験に登録される糖尿病患者はしばしば高齢で、末梢神経障害は進行している。標的となる臨床的な集団、つまり糖尿病で末梢に神経障害があるヒトの患者を適切に反映するような治療法の開発と適切な評価をできずにいることが、臨床試験が失敗する原因なのかもしれない。」

末梢神経障害が進行した糖尿病患者の臨床試験を模倣するため、ヘンリー・フォードの研究者はヒトの中年に相当する36週齢のオスのマウスを選択した。ヘンリー・フォード・グループの以前の動物実験は商標名のバイアグラとして一般に知られるシルデナフィルが坐骨神経(sciatic nerve)への血液供給を改善することを示したのに加えて、勃起障害のためにバイアグラを服用している糖尿病患者は末梢神経障害の症状が通常より少ないことが知られていた。しかしながら、この治療効果が長期の末梢の神経障害にも有効かどうかは不明だった。なぜなら以前の実験で使われた糖尿病マウスは16週齢と比較的若かったためである。そのためヘンリー・フォード研究者は2倍以上高齢の糖尿病マウスを選択した。

一方のグループでは、15匹のマウスに8週間毎日シルデナフィル/バイアグラを経口投与した。もう一方の対照グループでは、同じ週齢の15匹の糖尿病マウスに毎日同一量の食塩水を投与した。神経と機能の検査を両グループで実施した結果、食塩水を投与したマウスと比較して、シルデナフィルを投与したマウスは投与6週目から感覚機能が著しく改善した。

「これらのデータは、シルデナフィルが長期の糖尿病による末梢神経障害の中年マウスにおいてさえ神経学的機能を改善することを示す。」

Wang博士は今回の発見がまだ実験段階であることを強調する一方で、それらが長期の糖尿病の神経障害の根底にあるメカニズムに対する新しい洞察を提供し、長期の糖尿病による末梢神経障害のシルデナフィルでの治療法の開発に通じる可能性があると言う。

糖尿病の末梢神経障害は特に気付かれにくいが、その理由は、進行して手足の先などの神経に損傷を与えるにつれて痛みセンサーが感覚を失うためである。その結果、足の底の切傷や潰瘍は、例えば感染が始まって広がるまで気がつかないかもしれない。そしておそらく切断することになるか、死ぬことさえある。

糖尿病の神経障害は慢性的な高血糖から生じるので、糖尿病患者は厳しく血糖値のレベルを監視することが求められ、食事を通してそれらをコントロールするよう強く促される。神経障害による痛みの治療には抗うつ薬やアヘン製剤などが有効だが、しばしば望ましくない副作用がある。

記事出典:
上記の記事は、ヘンリー・フォード・ヘルス・システムによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.シルデナフィルは、2型糖尿病マウスで長期の末梢神経障害を改善する。

PLoS ONE、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150317104126.htm

<コメント>
シルデナフィル/バイアグラは、高血糖で発現が下方調節されるangiopoietin 1とその受容体のTie2シグナルを通じて中高齢の糖尿病マウスの神経障害の緩和に有効だったという記事です。


2015年2月25日

2015-03-01 23:33:41 | 代謝

オメガ3脂肪酸とビタミンDは脳のセロトニンを制御し、行動と精神の障害に影響するかもしれない
Omega-3 fatty acids, vitamin D may control brain serotonin, affecting behavior and psychiatric disorders



海産物に豊富な必須脂肪酸のオメガ3とビタミンDは特定の脳障害と関連する認知機能と行動を改善することが示されたにもかかわらず、根底にあるメカニズムは不明だった。FASEB誌で発表される新しい論文では、ビタミンDと海産物のオメガ3脂肪酸が様々な脳障害と関連する症状を改善する理由についてのミッシングリンク(missing link; 隠された手がかり)はセロトニンかもしれないと説明する。

昨年発表された論文で著者のPatrickとAmesは、必須アミノ酸のトリプトファンからセロトニンへの変換をビタミンDが調節するという発見の意味について論じ、特にビタミンDの状態が悪い発育中の子供においてどのように自閉症の発症に影響するのかについて述べた。

今回彼らはこれらの微量栄養素(micronutrient)と神経精神病学的な疾患との関連について論じた。セロトニンは、気分や意思決定(decision-making)、社会的行動、衝動的行動など広範囲の認知機能と行動に影響を及ぼし、攻撃的な社会的反応(aggressive social responses)や衝動的行動を抑制することで社会的な意思決定にさえ関与する。多くの臨床的な障害(例えば自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、双極性障害、統合失調症、鬱病)は、統一的な特性として脳のセロトニン濃度の低さを共有する。

「本論文で我々は、セロトニンがどのようにして実行機能(executive function)、衝動調節(impulse control)、感覚ゲート(sensory gating)、向社会的行動(pro-social behavior)を調節するのかについて説明する」、Patrick博士は言う。

「我々はセロトニンの生成と機能をビタミンDとオメガ3脂肪酸に関連づけ、これらの重要な微量栄養素がどのように脳の機能を助けて我々のふるまい方に影響を及ぼすのかを示す。」



エイコサペンタエン酸(EPA)は脳でプロスタグランジンE2(PGE2)という炎症性シグナル分子を減少させることによりシナプス前ニューロンからのセロトニン分泌を増加させ、PGE2はセロトニン分泌を阻害する。EPAは、炎症がどのようにして脳のセロトニンに対して負に影響するのかを示唆する。

しかし、EPAはセロトニン経路に関与する唯一のオメガ3でない。ドコサヘキサエン酸(DHA)はシナプス後ニューロンで細胞膜の流動性を増加させて受容体をセロトニンへアクセスしやすくすることにより、さまざまなセロトニン受容体の作用に影響する。

彼らの論文はビタミンDの低さ(大部分は日光に当たった時に皮膚によって作られる)と海産物のオメガ3の欠乏がなぜセロトニン経路のような遺伝子の経路と相互作用するかについて説明し、それらの機械論的な関連を明らかにする。セロトニン経路は脳の発達、社会的な認知、意思決定にとって重要であり、これらの遺伝子-微量栄養素の相互作用はどのようにして神経精神病学的な転帰に影響するかについて考察する。

「ビタミンDはステロイドホルモンに変換されて約1,000の遺伝子(その多くが脳内にある)を制御するが、アメリカ人には不足している。アメリカ人は魚を十分に食べないのでオメガ3脂肪酸欠乏も非常に広くみられる」、Ames博士は言う。

この発表は、ビタミンD、EPA、DHAの最適な摂取が、脳のセロトニン濃度と機能を最適化することを示唆する。脳の障害と関連する症状のいくらかをおそらく予防して、副作用なく改善する。

記事出典:
上記の記事は、UCSF Benioff Children's Hospital Oaklandによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.ビタミンDとオメガ3脂肪酸はセロトニンの合成と作用を制御する、パート2:
ADHD、双極性障害、統合失調症、衝動的行動との関連。

FASEB、2015年2月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150225094109.htm

<コメント>
1年前のPart1の続きです。


http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ad06785ebedd4298b25fb41fb68eee65
ビタミンDは、必須アミノ酸のトリプトファンを変換して脳でセロトニンに作る酵素のトリプトファンヒドロキシラーゼ2(TPH2)を活性化する。
ビタミンDは、トリプトファンヒドロキシラーゼ1(TPH1)を作る遺伝子を阻害して、腸などの組織でセロトニンの産生を止める。TPH1は過度に発現されると炎症を促進する。

2015年2月23日

2015-02-24 23:40:12 | 代謝

サウナの利用は、心臓ならびに全原因の死亡率リスク減少と関連する
Sauna use associated with reduced risk of cardiac, all-cause mortality



サウナは単にあなたを発汗させるだけではないかもしれない。JAMA内科学のオンライン版で発表された論文によると、サウナを利用する頻度の高い人は致命的な心血管イベントならびに全死因死亡率のリスクが減少することが示唆される。

これまでのいくつかの研究でサウナはより望ましい心血管・循環機能との関連が見られたが、定期的なサウナ入浴と心臓突然死(sudden cardiac death; SCD)等のリスクとの関連は不明である。東フィンランド大学クオピオキャンパスのJari A. Laukkanen医学博士たちは、42~60歳の東フィンランドの中年男性2,315人におけるサウナ入浴とSCD、致命的な冠動脈性心疾患(coronary heart disease; CHD)、致命的な心血管疾患(cardiovascular diseases; CVD)、全死因死亡リスクとの関連を調査した。

中央値約21年の追跡調査の間にSCDは190人、致命的なCHDは281人、致命的なCVDは407人で、全死因での死亡は929人だった。

SCDのリスクはサウナに1週につき1回行ったと報告した人と比較して週2~3回サウナに行った人は22パーセント低く、週4~7回サウナに行った人は63パーセント低かった。

致命的なCHDイベントのリスクは、週1回の人と比較して週2~3回の人は23パーセント低く、週4~7回の人は48パーセント低かった。

CVD死亡に関しても、週1回しか楽しまなかった人と比較して週2~3回の人はリスクが27パーセント低く、週4~7回の人は50パーセント低かった。

全死因死亡率は、週1回しかサウナに行かない人と比較して週2~3回の人は24パーセントのリスク減少と関連し、週4~7回の人は40パーセントのリスク減少と関連していた。

サウナで過ごす時間も重要であると思われる。サウナで11分未満を過ごした人間と比較して、11~19分のサウナセッションについてはSCDのリスクが7パーセント低く、19分以上ではリスクが52パーセント低かった。



編集後記(Editor's Note): JAMA内科学の編集長、カリフォルニア大学(サンフランシスコ)のRita F. Redberg医学博士は次のように書く:

「なぜ頻繁にサウナに行く人は寿命が長いかについては分からない(その理由が温かい部屋hot roomで過ごす時間なのか、くつろぎの時間、長い間くつろぐことができる人生のレジャー、サウナの仲間意識、そのどれであれ)が、サウナで過ごす時間は明らかに有益な時間である。」

学術誌参照:
1.サウナ入浴と致命的な心血管および全死因死亡率イベントの間の関連。

JAMA内科学、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150223122602.htm

<コメント>
編集後記にもあるように、サウナが血流を良くするのか、サウナに長くいるほど知り合いが増えて心臓にも良い影響があるのかというような因果関係はこの研究からはわかりませんが、興味深い記事だと思います。

フィンランドは糖尿病が多いので糖尿病とも何か関係があるかなと思ったのですが、エストニア人もサウナは大好きだということであまり関係はないようです。


2015年1月20日

2015-01-23 23:11:57 | 代謝

肥満の手掛かりを与える新しいシグナル経路
New signaling pathway provides clues to obesity



ヴァンダービルト大学を中心とする研究チームは、脳の食欲コントロール・センターで「可変抵抗器」として働く分子を発見した。この発見は我が国に蔓延する肥満に対して新しい洞察を提供するかもしれない。

ネイチャー誌で報告されるこの新しい細胞シグナル経路の発見は「食欲をコントロールする『オン/オフ』スイッチについてのこれまでのモデルを修正する」とMasoud Ghamari-Langroudi博士と共に研究チームを率いるRoger Cone博士は言う。

今回の発見は、脳の食欲コントロール・センターであるメラノコルチン-4受容体(MC4R)に焦点を合わせる。MC4Rは神経細胞膜に固定されるGタンパク質共役受容体(GPCR)である。

「これはGPCRがどのようにシグナルを出すかについて理解するための、まったく新しいやり方である」、分子生理学・生物物理学部の教授であり、生物医科学のJoe C. Davis教授でもあるConeは言う。

「ほとんどのGPCRは、短い時間枠の間ではオン/オフ動作のスイッチのように動作する。しかし今回の発見は、『オン/オフのスイッチ』から『可変抵抗器』へと切り換えるための分子メカニズムを特定する」、Coneは言う。

「それは日焼けやダイエット後のリバウンドのような遅れて起きる持続性の生物学的プロセスの説明を助ける可能性がある。オン/オフのスイッチ、可変抵抗器、そのどちらもGPCRによって仲介される。」

MC4Rは長い間、GPCRとしては典型的な「オン/オフ」のスイッチとして特徴づけられてきた。α‐メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)とアグーチ関連ペプチド(AgRP)は、MC4R受容体の同じ結合箇所で競合する。α-MSHによるMC4Rの活性化は食欲をオフにするが、AgRPによるMC4Rの阻害は食欲を刺激する。

この一般的な機序において、GPCRが刺激を受けるのは『シャットダウン』するまでである。この現象を脱感作(desensitization)と呼ぶ。GPCRの脱感作はしばしば急速に生じ、それは多くの生理的なシステム、例えば視力や嗅覚が機能するために必要である。

しかし脱感作は、恒常性への復帰を説明しない。例えば体重には『セットポイント』があり、いったんダイエットするのを止めると体重は数ヶ月の間にもとに戻ることがしばしばある。

その答えは「過感作(hypersensitization)」、つまり脱感作の反対かもしれない。それはMC4RがKir7.1というカリウムチャネルと「共役する」ときに生じ、このプロセスはGタンパク質シグナルから独立している。動物における研究では「ペプチドAgRPの単回投与(single dose)は最大で10日間の食料摂取を刺激することができる」ことを示した。

「この観察は従来のGPCRシグナルとは単純に適合しなかった」、Coneは言う。

今回の研究は、AgRPはMC4R受容体との結合をα-MSHと競合するだけでなく、Kir7.1を開くようにMC4Rを誘導する「バイアスアゴニスト(biased agonist)」でもあることを示したという。AgRPはカリウムチャネルを開き、食欲の阻害に関与するニューロンを「過分極化」して阻害することで、飢餓感を増加させる。この発見は、肥満を治療する新しいアプローチにつながるかもしれない。

「現在の課題は、より小さいMC4Rバイアスアゴニストを見つけ出すことである」、Coneは言う。

Kir7.1は、腎臓や子宮筋、腸など、他の多くの組織で発現している。Kir7.1のようなイオンチャネルにより直接シグナルを伝えるような他のGPCR候補も他の組織で調査されていると言う。

記事ソース:
上記の記事は、ヴァンダービルト大学メディカル・センターによって与えられる素材に基づく。

学術誌参照:
1.視床下部ニューロンにおける、MC4RのGタンパク質からは独立したKir7.1との共役。

Nature、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150120121306.htm


※DMV(dorsal motor nucleus of the vagus): 迷走神経背側運動核ニューロン

<コメント>
視床下部の室傍核(paraventricular nucleus)にあるGPCR共役受容体のメラノコルチン4受容体(melanocortin-4 receptor/MC4R)に対してα-MSHとAgRPは競合するだけでなく、異なる機序でニューロンを活性化/阻害することが判明したという記事です。


α-MSH→MC4R→Gαs→cAMP─┤Kir7.1/K+排出
AgRP→MC4R→Kir7.1/K+排出/過分極

2015年1月13日

2015-01-20 23:49:01 | 代謝

甲状腺機能低下症の治療に対する新しい洞察
New insights into treatment of hypothyroidism



ラッシュ大学メディカル・センターの医師と科学者によって指揮される国際研究チームは、アメリカで約1000万人が罹患する甲状腺機能低下症に対する新しい洞察を得た。今回の研究結果は特に標準的な治療の効果がない約15パーセントの患者にとって新しい治療手順につながる可能性がある。この研究は新年の初めにJournal of Clinical Investigation(JCI)とJournal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)で発表された。
http://www.jci.org/articles/view/77588
http://press.endocrine.org/doi/abs/10.1210/jc.2014-4092


甲状腺機能低下症は、甲状腺がサイロキシン(T4)とそれが活性化した状態のトリヨードサイロニン(T3)を十分に産生しないときに生じる。この病態は多数の健康問題を引き起こす可能性がある。例えば体重の増加や疲労、そして「もうろうとした頭(foggy brain)」などである。

何十年もの間、標準的な治療はレボチロキシン(levothyroxine)という合成T4サプリメントを毎日摂ることだった。いったん体内に吸収されればT4は脱ヨード反応(deiodination)によってT3に変化し、理論上はT3の血中濃度を完全に正常化する。

しかしながら、この治療法で患者の約15パーセントは全ての症状が改善されない。医師たちはその理由に長い間頭を悩ませてきた。この混乱が続く理由は主に、甲状腺機能低下症の治療が効くかどうかという効能は「患者がどのように感じるか」という主観的な報告に依存するためでもある。正常な甲状腺を有する人でも、他の病態、例えば閉経後症候群や臨床的うつ病などにより甲状腺機能低下症と似たような症状を経験するかもしれない。



JCIで発表される研究は甲状腺が除去されたラットで実施され、T3の循環血中のレベルがレボチロキシンだけでは完全に正常化されない理由について細胞レベルでの基礎を説明する。

加えて、レボチロキシンの処方にT3を追加することで、循環血中のT3レベルと甲状腺機能低下は完全に修正できることを明らかにする。レボチロキシンだけを投与されたラットのいくらかは、T4とT3を組み合わせて投与されたラットよりも、血液中のコレステロール濃度が高かった。

それらのラットは脳でも甲状腺機能低下症の徴候を示した。これは甲状腺機能低下症の一般的な症状である「もうろうとした頭」を潜在的に説明できる可能性がある。したがって、併用療法は一般に甲状腺機能低下症で影響を受ける臓器(脳、肝臓、骨格筋)において正常な甲状腺ホルモン作用を確立したと言える。

「もちろん、臨床的に本研究を確認することは重要である」、ラッシュの内分泌代謝学部のトップであり、両方の論文のシニア著者であるAntonio Bianco医学博士は言う。Bianco博士が共同議長を務めるアメリカ甲状腺学会タスクフォースは甲状腺機能低下症の治療ガイドラインも更新し、12月にThyroid誌で発表した。

「甲状腺機能低下性患者は全て同一であるというわけではない。併用治療でうまくいく人もいるし、そうでない人もいるだろう。したがって課題は、これらの個々人を特定して、その違いがなぜ存在するかについて理解することである」、Bianco博士は言う。

この点についてはJCEMでの研究で探究された。研究者は、T4をT3に変換する酵素であるD2(deiodinase)の一般的な多型性(polymorphism; 頻度が高い遺伝子的な突然変異)を調査した(Thr92Ala)。先行研究では、この多型性を有する甲状腺機能低下症の患者は併用治療の効果が高く、そこからBianco博士たちはこの多型性と標準治療が失敗する関係を探究するに至った。

研究者は約100人の遺体ドナーの脳を研究し、この多型のD2が、通常はD2を含まない細胞区画(ゴルジ装置)に蓄積する傾向があることを発見した。D2のこの異常な蓄積は、ハンティングトン病のような神経変性疾患の脳で観察されるのと同じように細胞の機能を阻害する。

「D2の多型性は、甲状腺機能低下症を発病するときに神経変性疾患が悪化しうる危険因子であると考えられる」、Bianco博士は言う。

幸いにも、この病態のための治療が使用可能かもしれない。

「多型D2に影響を受ける遺伝子のいくつかは、酸化ストレスを表した」、Bianco博士は言う。

「酸化ストレスを中和する物質(N-アセチルシステイン)でD2の多型を持つ細胞を処理すると、それらの遺伝子の発現は正常化した。」

「認知が低下する危険因子を示す要素を1つまたはそれ以上持つにもかかわらず、甲状腺機能低下性の患者の全てが同じではない理由をこのD2多型は説明する。さらなる研究によって確かめられればだが」、Bianco博士は言う。

「個人用にカスタマイズされた薬剤は、甲状腺機能低下症を捕えていたようだ。それは100パーセントの患者に効くことを確実にできるかもしれない。」

記事ソース:
上記の記事は、ラッシュ大学メディカル・センターによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.視床下部の2型脱ヨウ素酵素のユビキチン化における違いは、サイロキシンへの局所的な感度を説明する。

JCI、2015;

2.甲状腺ホルモンを活性化する酵素の優勢な多型は、相互に関連する臨床的な症候群の根底にある遺伝子的なフィンガープリントを残す。

Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150113153952.htm

<コメント>
甲状腺機能低下症(hypothyroidism)についての記事です。

甲状腺ホルモンのサイロキシン(T4)を脱ヨード反応(deiodination)によってトリヨードサイロニン(T3)に変換するII型脱ヨード酵素(type 2 deiodinase/D2)は、T4への曝露によって不活化してしまい、さらにD2には遺伝的な多型が存在するため、合成T4のレボチロキシンを補うだけでは完全には効かない人もいるという内容です。


Figure 5
この図は、視床下部-脳下垂体-甲状腺の流れを説明する。『T4によって誘発されるD2のユビキチン化』は甲状腺ホルモンの恒常性に関与するが、そのバランスは臓器によって異なる。
TRHを発現するニューロンは下垂体門脈(hypophyseal portal blood)にTRHを分泌し、TRHは下垂体前葉(anterior pituitary)へと輸送される。下垂体前葉ではベータ細胞からTSHが分泌され、TSHは甲状腺を刺激してT3とT4を作らせる。
体内のほとんどの組織では、T4への曝露はユビキチン化によるII型脱ヨウ素酵素(D2)の不活化を促進し、D2はプロテアソーム系によって分解される。ユビキチン化したD2(UbD2)は脱ユビキチン化酵素(deubiquitinase/DUB)によってプロテアソーム分解から逃れることができる。
末梢での脱ヨウ素化は『T4への曝露によって誘導されるD2のユビキチン化』にきわめて影響を受けやすく、したがって、血清T4/T3比の上昇は軽度でもD2の不活化を促進し、その分画でのT4からT3への変換を低下させて、末梢のT3産生を抑制する。
同様の状況は脳の別の領域でも観察され、血清のT4/T3比が上昇すると、甲状腺機能低下症に典型的な遺伝子発現プロファイルにつながる。

それらとは対照的に、視床下部のD2は『T4曝露によるユビキチン化』による影響を受けにくい。さらに、視床下部では脱ユビキチン化が非常に効率的であるため、T4によるD2不活化は意味をなさない。
その結果、視床下部ではD2によるT3産生を経由するT4シグナルはきわめて効率的であるが、末梢ではD2によるT3産生は容易に阻害される。以前発表されたデータ(18)によれば、下垂体の向甲状腺細胞(thyrotroph;下垂体ベータ細胞)における状況は、おそらく、この視床下部と末梢という両極端の間の中間(intermediary)である。
これは、甲状腺切除(thyroidectomized/Tx)ラットにレボチロキシン(L-T4)を投与した際に観察された「TSH分泌の正常化」と「末梢でのT3産生(の低下)」との間の矛盾を説明する。

※tanycyte: タニサイト。脳室壁を構成する上衣細胞の中でも、細胞体から突起が神経実質内に伸び出して突起が脳表面にまで達しているような上衣細胞を特にタニサイトと呼ぶ。第三脳室壁によくみられる



脳や甲状腺にはFoxOが発現しているため、にきびの治療薬で影響を受ける人もいるようです。

http://ta4000.exblog.jp/17942429/
>FoxOは哺乳類の組織に広く発現しており、特に脂肪組織、脳、心臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、骨格筋、脾臓、甲状腺、そして精巣に多い。

http://ta4000.exblog.jp/18487331/
>Karadagらが47人のにきび患者を3ヶ月間イソトレチノインで治療したところ、遊離トリヨードサイロニン (T3)、甲状腺刺激ホルモン (TSH)、抗甲状腺刺激ホルモン受容体抗体の濃度、黄体化ホルモン (LH)、プロラクチン (PRL)、総テストステロン、そして朝のコルチゾールならびにACTHが減少したことを最近証明した。

2015年1月12日

2015-01-15 22:33:32 | 代謝

薬がどのように肥満や糖尿病を打ち消すかについての手掛かり
More clues to how drug reverses obesity, diabetes, fatty liver disease



ミシガン大学の研究者は、肥満と関連する代謝異常の有望な治療薬、アンレキサノクスamlexanox)がどのように脂肪細胞と肝臓との間にシグナルを伝えて糖代謝を改善するのかを特定した。彼らの研究はアンレキサノクスが糖尿病や脂肪肝を打ち消す方法を明らかにすることに加えて、今後の治療のための新しい経路を示唆する。彼らの研究は1月12日にNature Communicationsで発表された。

ミシガン大学ライフサイエンス研究所の『Mary Sue Colemanディレクター』であるAlan Saltielのラボは以前、喘息の治療で用いられてきたこの薬が肥満マウスの体重を減少させ、糖尿病を改善する能力も持つことを発見した。

彼らは今回の研究で、アンレキサノクスが特定の脂肪細胞のcAMPというセカンド・メッセンジャー分子を増加させることによりその効果を発揮することを明らかにした。cAMPは脂肪細胞が脂肪を「燃焼」する割合を増加させて、マウスの体重を減少させる。

さらに、アンレキサノクスは脂肪細胞からのインターロイキン-6の分泌を引き起こし、それは血流に乗って肝臓へと移動する。インターロイキン-6は糖尿病モデルマウスの肝臓でブドウ糖の産生を低下させ、全体的に血糖は減少する。

「アンレキサノクスは、慢性炎症を消炎し、脂肪細胞でのエネルギー消費を増加させることによって肥満とインスリン抵抗性を打ち消す。しかしそれは薬の作用の一部であって、全てではない」、筆頭著者のShannon Reillyは言う。

「肥満のモデルマウスにおいてアンレキサノクスがどのように脂肪細胞と肝臓との間のクロストークを可能にするかを理解することで、我々はアンレキサノクスについてより多くを知ることができるようになる。それはさらに体内の異なる組織間のコミュニケーションを明らかにする。」



肥満は、肝臓と脂肪組織において軽度の慢性炎症につながる。この炎症はIKK-εTBK1という2つのキナーゼのレベルを増加させる。2009年、Saltielのラボは肥満の発症におけるIKK-εとTBK1の重要な役割を明らかにした。

2013年、彼らは喘息などの治療に処方されるアンレキサノクスがマウスの肥満と糖尿病、そして脂肪肝を打ち消すことを発見した

2013年12月に発表された研究では、高レベルのIKK-εとTBK1は肥満マウスの脂肪細胞のカテコールアミンの受容体が反応できないようにすることを突き止めた。交感神経系によって分泌される神経伝達物質のカテコールアミンは「脂肪の燃焼」を促進するが、それが不可能になる。

高レベルのIKK-εとTBK1はcAMPのレベルを低下させることでカテコールアミンへの反応を弱めるが、アンレキサノクスはIKK-εとTBK1のレベルを低下させ、結果としてcAMPは増加する。カテコールアミンに対する感度は増大し、脂肪細胞によるエネルギー消費は増加する。

今回のミシガン大学の研究は、脂肪細胞のcAMPの増加がどのようにインターロイキン-6の分泌を促進するかを説明する。インターロイキン-6は肝臓にブドウ糖を産生するのを止めるように合図し、したがって肥満糖尿病のモデルマウスで全体的な血糖値を改善する。

学術誌参照:
1.皮下脂肪組織から肝臓へのシグナル伝達は、肝臓の糖新生を制御する。

Nature Communications、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150112133921.htm

<コメント>
肥満に伴って起きる全身での軽度の慢性炎症は脂肪組織でのIKK-εとTBK1を増加させ、cAMPは抑制されてカテコールアミンへの応答が低下しますが(カテコールアミン抵抗性)、アンレキサノクス(ソルファ)はIKK-εとTBK1を抑制してcAMPレベルを回復し、カテコールアミンへの感度が増大するという記事です。

アンレキサノクスはさらに皮下脂肪組織からのIL-6分泌を促進し、肝臓でのStat3リン酸化によるG6pcプロモーターへの結合を増加させて糖新生を抑制するとのことです。

 アンレキサノクス→(皮下脂肪組織)IKK-ε/TBK1↓PDE3B↓cAMP↑IL-6↑→(肝臓)Stat3リン酸化↑G6pc↓糖新生↓

以前にも高脂肪食によるカテコールアミン抵抗性についての記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6229ce246d3b7e0370b421d730087089
>栄養分が豊富な時、脂肪細胞はシグナルに抵抗して代わりに脂肪を貯めこむようになる。