ねこらい堂  「おやじマニアの日常」

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面白かった小説、有川浩「海の底」 

2011-12-13 23:33:12 | 日々雑感

有川浩「海の底」がおもしろかった!


活字中毒で、読む本がなくなったので
「ラノベでも純文学でもいいから、貸してくれー!」ということで
娘っちから「車輪の下」「太公望」「こころ」「涼宮ハルヒ」なんかに混じって
借りた一冊だが、これがまあ大当たり!


図書館戦争の有川浩なので、ゆるーいラノベかと思って読んだら大違い。
なんと今時珍しい大怪獣小説。


四月。桜祭りで賑わう横須賀米軍基地を、赤い巨大な甲殻類の大群が襲う。
巨大ザリガニの目的はただひとつ、人を捕食すること。

人が無造作にチョキチョキ切られ食われる中、
潜水艦へ逃げ込んだ見習い自衛官2人と少年少女13人。

湾と基地が、ザリガニで埋め尽くされ
潜水艦は身動きすらできない。

ザリガニは更なる餌を求め横須賀市街地に侵攻する。

少年少女の運命は、はたまた神奈川県民の運命やいかに、というお話。


お話の半分は潜水艦版十五少年漂流記といった風情で、ラノベというより
ジュブナイルっぽい展開なのですが、残りの半分がすんごい秀逸。

完全な怪獣制圧シミュレーション小説なんです。

レガリス(!)と命名された巨大ザリガニの侵攻を食い止めるために出動するのは
神奈川県警の機動隊。

自衛隊の出動は、政府内で災害出動なのか防衛出動なのかの議論が
延々と続き、許可が降りない。

災害出動であれば武器の携行は不許可であり、怪獣の侵攻は防衛出動の定義に含まれない
などという小田原評定である。

機動隊は治安維持出動のため、携行を許可されたのはアクリル盾と催涙弾のみ。

この絶望的な状況で、なんとか活路を見出すのが
神奈川県警警備部警備課、警備の鬼と呼ばれたはぐれ警官・明石。

持ち前のオタ知識とネット、チャットを活用し、徒手空拳の機動隊で活路を見出していく。


対策本部の現場に派遣された警察庁警備部のくせ者キャリア
烏丸警視正との掛け合いがおもしろい

「高圧電流による足止めとは奇想天外な策だが、貴官の発案か」
「前例に倣いました」
「前例とは何か?」
「ゴジラ・・・」
「明石くん!不真面目な!」

てな具合。

巨大ザリガニ・レガリスの生物としての弱点を探るため、
海洋生物学者・芹澤を登用するくだりも面白い。

「こういった場合、その道の権威より
 見てくれの悪い変わり者の学者の方が当りです。
 まず、名前がいい。」

明石はチャット仲間の軍事オタから、米軍が独自に空爆を計画しているのを察知。
閉じ込められた少年少女たちの軋轢。お約束のように
リチャード・チェンバレンみたいなイヤーなヤツが状況を悪化させる。

そして恋愛。


警察の面子に拘り容易に現場を明け渡さない警察上層部、
レガリスに破られる第一次防衛網。

米軍の空爆をいかに阻止するのか、
警察は面子を捨てて、自衛隊に指揮権を引き継ぐのか、
自衛隊はどんな名目で出動可能となるのか
そして潜水艦に取り残された
少年少女13人と見習い自衛官2人の運命は?


こんな面白いシミュレーション怪獣小説は読んだことがない!
大変な拾い物でした。

ちなみに娘っちは、人間がチョキチョキ切られて食われる描写の
冒頭部分でもうアウトだったらしい。

まあ、レガリスはアンガールスの田中が真似をするカニの風情で人間をムシャムシャ食うんで
スプラッタ好きにはたまらんですけど・・・。

もとより女流作家・有川浩の作品なんで、スプラッタ描写は思ったより控えめです。

あ~、これは女性にしか書けんなー、っていう部分が多いですね。