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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『マッドバウンド 哀しき友情』

2018-01-10 | 映画レビュー(ま)

第2次大戦期のアメリカ・ミシシッピに暮らす白人地主一家と、そこで働く黒人小作一家を描く群像劇。
1950年代の物語とはいえ、公民権運動前の南部はとりわけ人種差別が激しく、旧世紀然とした階級差別が強いられていた。やがて出征していた両家の息子が帰国、悲劇が起きる。

一面、見渡す限り泥だらけの大地。陽が昇り、耕してもたちまち雨が降りしきり、再びぬかるんだ景色に戻ってしまう。それは戦争と差別を繰り返すアメリカの歴史そのものであり、イラク戦争後の現在の景色は50年代と何ら変わりがないように思う。衣服や顔をよごし、泥にまみれる人々。汗と涙、そして血を吸った泥土のそこかしこから聞こえてくるような登場人物たちの苦悶のモノローグが、ブルースとストリングスを往復するスコア、美しいカメラと交わり、ディー・リース監督による詩情は僕たちの心を絡めとる。まさに泥臭い、いわゆる“男性的”な筆致だが、音楽tamar-kali、撮影レイチェル・モリソンとスタッフは女性ばかり。今やこういった“男性的”“女性的”といった評論法自体が時代錯誤なのかも知れない(映画という芸術が興って以来、いかに女性作家が少ないかという事でもある)。

既に賑わせているアカデミー賞レースではキャストアンサンブルを中心に評価を集めている。躍進目覚ましいギャレッド・ヘドランド、ジェイソン・ミッチェル、大人の女優として貫禄すら感じさせるキャリー・マリガンらがとりわけ素晴らしい。

 主題である2人の青年の友情へシフトするまでが長く、物語が拡がり過ぎてしまった感もあるが、新たな才能の名前はぜひ覚えておくべきだ。


『マッドバウンド 哀しき友情』17・米
監督 ディー・リース
出演 ジェイソン・クラーク、ギャレッド・ヘドランド、ジェイソン・ミッチェル、キャリー・マリガン、メアリー・J・ブライジ、ジョナサン・バンクス

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