長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『21ブリッジ』

2021-04-19 | 映画レビュー(と)

 こういう映画を定期的に摂取できないと映画ファンは干上がってしまうのである。NY、マンハッタン。2人組の武装強盗により警官7名が命を落とす。捜査にあたるのは刑事チャドウィック・ボーズマンだ。大捕物を追って縦横無尽に駆け回るカメラと、ジェリー・ゴールドスミスを思わせるスコアのダイナミズムが活劇ファンの胸を踊らせ、おそらくガン末期であったろうボーズマンの周りをJ・K・シモンズ、シエナ・ミラー、テイラー・キッチュらいい面構えの役者が支えた。製作が『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のルッソ兄弟だけにマイケル・マンイズムなガンアクションのタイトさと都市の夜景が堪らないが、ではなぜLAではなくマンハッタンが舞台なのか?何度も繰り返されてきたジャンル映画に2010年代後半の重要なキーワード”格差問題”をはじめ、現代的アレンジが施されている。とりわけ『ビール・ストリートの恋人たち』『ホームカミング』と好投続きの若手ステファン・ジェームズと、ボーズマンの2度に渡る邂逅はシナリオ以上の凄みと意味性を持つ。ボーズマンはプロデュースも担当し、本作もまたBlack Lives Matterに呼応した。

 ボーズマンの病状がかなりの末期であったことは彼のダブついたスーツ姿からも容易に察することができる。これまで黒人社会におけるロールモデルを意識的に演じてきた彼が、『マ・レイニーのブラックボトム』を経てデンゼル・ワシントンを思わせるパンキッシュさを手に入れていただけに、本作で見せるダーティな刑事役は新たなキャリアの途上にあった事が伺え、実に惜しい。

 これで99分。スジ良し、ヌケ良し、ドウサ良しの引き締まったサスペンス・アクションである。


『21ブリッジ』19・米
監督 ブライアン・カーク
出演 チャドウィック・ボーズマン、シエナ・ミラー、ステファン・ジェームズ、キース・デビッド、テイラー・キッチュ、J・K・シモンズ

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