
1973年、当時既に55歳だった元テニスプレイヤー、ボビー・リッグスが男性優位主義を実証するために現役女子チャンピオン、ビリー・ジーン・キングへ男女対抗試合を挑む。時代はウーマンリブがさけばれて久しいが、女子選手の賞金は男子のそれよりも格段と低く、「女子は我慢弱い」「女子より男子の方が優れている」という差別的言説が大手を振って蔓延していた。かくしてビリー・ジーンは世紀の対決“バトル・オブ・ザ・セクシーズ”=性差の戦いに挑む事になる。
僕はビリー・ジーンという人を知らなかったが、彼女の持つ現代性に驚かされた。男女の賃金格差を理由に女子リーグを結成、業界の大物相手にも物怖じせず、男子と女子の集客に差がない事実を指摘する。そして彼女は同性愛者でもあった。彼女の戦いは女性のみならず、全ての人が平等で自由に生きるための戦いでもあったのだ。2010年代、#Me tooの時代に語られるべき偉大な人物だろう(先頃、女子サッカーW杯を制したアメリカ代表キャプテン、メーガン・ラピーノを連想した)。
そんなビリー・ジーンにエマ・ストーンが扮し、オスカー女優の充実ぶりを見せつける。華やかなスターオーラを消し去り、ビリー・ジーンの中で静かに燃える炎を体現。プレッシャーに打ち勝ち、勝利の喜びに一人震える終幕は名演だ。
彼女を取り巻く男性が全員差別的だったり、愛人マリリンの人物像が不明瞭とテーマのために登場人物が単純化されているのが惜しまれるが、それをスティーヴ・カレル、アラン・カミング、アンドレア・ライズボローら演技巧者達がかろうじて救っている。テーマのためにやや直球ストレート過ぎるこの実直さも、ビリー・ジーンという人そのものなのだろう。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』17・米、英
監督 ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
出演 エマ・ストーン、スティーヴ・カレル、アンドレア・ライズボロー、ビル・プルマン、アラン・カミング、エリザベス・シュー、サラ・シルヴァーマン
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