
スカーレット・ヨハンソン扮する美女エイリアンがスコットランドの街を徘徊し、その色気で誘惑した男たちを捕食する…と聞けば『スピーシーズ』だなんてB級映画すら頭によぎるが、ジョナサン・グレイザー監督の手にかかればスタイリッシュなアートとなって僕らを魅了する。セリフや説明を排し、ノイジーなスコアと独創的なヴィジュアルに物語を融解させたコンテンポラリーなSF映画だ。かと言って難解な事はなく、主人公に芽生えた奇妙な感情が思わぬ結末に向かう物語は“もののあはれ”を感じさせる。
全てはスカーレット・ヨハンソンという類稀な才能によって成立した映画だ。その皮膚の下に人外の何かを宿し、まるでテンプレート文のような誘い文句で男たちを口説いていく。待望のヌードは人工的にエクササイズされたものではなく、何とも肉感的だ(「必要がない限り、エクササイズはしない」とは本人の弁。さすが世界で最もセクシーな女優!)。訛りがキツ過ぎて何を言っているのかわからないスコットランドの田舎町にスカジョを歩かせ、現地人との会話をゲリラ撮影したという異化効果もユニークに機能した。
そんな彼女がある出来事をきっかけに人の心を宿していく後半は無言劇でありながら、内に湧き出る葛藤を雄弁に体現しており、実に豊かな肉体言語である。2013~14年はボイスアクトのみで恋の高揚を表現した『her』、MCUのターニングポイントとなった重要作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』、そしてアヴァンギャルドな本作と実にエッジィなフィルモグラフィを形成し、ハリウッドナンバーワン女優の充実を見せてくれた。
※このレビューは劇場公開当時の記事を改稿したものです※
『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』13・英
監督 ジョナサン・グレイザー
出演 スカーレット・ヨハンソン
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