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ディズニーが手掛けるストリーミングサービス“ディズニー+”のオリジナル作品として製作された『スター・ウォーズ』シリーズ初の実写TVドラマ。物語はエピソードⅥ『ジェダイの帰還』の後、新共和国が樹立するも未だ旧帝国軍残党が暗躍する動乱期が舞台だ。高潔な戦士の一族マンダロリアンの生き残りである主人公(劇中で名前は明かされず、マンドーと呼ばれる)は賞金稼ぎとして銀河をさすらっていた。ある日、彼は高額な報酬の裏仕事を引き受けるのだが…。
マンダロリアンと聞いてテンションが上がる人は“にわか”じゃない『スターウォーズ』ファン。シリーズ屈指の人気脇役ボバ・フェットの種族であり、本作はかねてから噂されていた“ボバ・フェットを主人公にした宇宙西部劇”がベースになっていると思われる。ショーランナーを務めるジョン・ファヴローは『カウボーイ&エイリアン』の雪辱と言わんばかりに、『スター・ウォーズ』ユニバースで往年の西部劇へオマージュを捧げまくっている。マンドーがガトリングブラスターで大立ち回りを繰り広げる第1話はフランコ・ネロ主演の『続・荒野の用心棒』。辺境の農民たちを野党から守る第4話は『荒野の七人』(もとい『七人の侍』)。信じられないくらい愛らしいベイビー・ヨーダとの旅路は『子連れ狼』。度々フラッシュバックするマンドーの過去はひょっとするとセルジオ・レオーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』かも知れない。ファヴローはMCU第1作『アイアンマン』を監督し、近年は実写映画『ジャングル・ブック』や『ライオン・キング』を手掛けるなど、今やディズニー帝国の中核と言っていい存在感である。旧三部作へリスペクトを捧げ、『スカイウォーカーの夜明け』のようなトキシックファンダムにおもねず、かと言って子供向けにも寄り切らないバランス感覚が本作成功の要因だ。
キャストも素晴らしい人選だ。主人公マンドー役は『ゲーム・オブ・スローンズ』のオベリン・マーテル役以後、大人気のペドロ・パスカルが素顔を見せない献身。賞金稼ぎギルドの長を『ロッキー』シリーズのアポロ役でおなじみカール・ウェザース、辺境の惑星でマンドーを助ける年老いた農夫エイリアンにニック・ノルティと西部劇にピッタリな強面が揃った(そういえばルドウィグ・ゴランソンのスコアはなぜかビル・コンティ風だ)。紅一点では総合格闘技から転向後、人気作に引っ張りだこのジーナ・カラーノが加わり、“ホンモノ”の技を見せてくれている。
サプライズはドイツの名監督ヴェルナー・ヘルツォークの登場だ。こんな遥か彼方の銀河系で一体どうしたんだと驚いたが、別口のインタビューでは「新作映画の資金調達のため、悪魔に魂を売ること以外は全部やった」と言っていたので、多分コレの事だろう(笑)。
そしてラスボスは“ガス”ことジャンカルロ・エスポジートである。遥か彼方の銀河系にもフライドチキン屋があったのか!『スター・ウォーズ』ですらTVシリーズをやる上で避けて通れないのが『ブレイキング・バッド』であり、今やハリウッド中がヴィンス・ギリガン組へオマージュを捧げていると言っても過言ではない。
また第4話監督は女優のブライス・ダラス・ハワードが手掛けており、父親譲りの職人技を見せていたのは嬉しい驚きだ。そして傭兵ドロイドIG-11のモーションキャプチャーと兼任する『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティが最終回を担当し、彼らしいオフビートな笑いを提供している(笑えるが、彼で長編映画のSWを見たいとは思わない)。
正直なところ、エミー賞で作品賞はじめ15部門にノミネートされる程の作品とは思わないが、旧三部作のモチーフがさりげなく散りばめられた“痒い所に手の届く”二次創作であり、SW銀河が広くて多様である事を改めて僕らに見せてくれる嬉しい1本だ。今後、ディズニーはエピソードⅢ『シスの復讐』後のオビワンを描いたスピンオフも予定しており、当面は長編映画を控えてこの路線を続けるらしい。フォースにバランスが戻ってきたぞ!
『マンダロリアン』19・米
監督 ジョン・ファヴロー、ブライス・ダラス・ハワード、タイカ・ワイティティ、他
出演 ペドロ・パスカル、カール・ウェザース、ジーナ・カラーノ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ジャンカルロ・エスポジート、タイカ・ワイティティ
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