長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ゾンビ ディレクターズカット版』

2018-10-21 | 映画レビュー(そ)

昨年7月に他界した“ゾンビ映画の父”ジョージ・A・ロメロ監督の名を一躍世界に知らしめた大ヒット作。あらゆるディテールが後のゾンビものはもちろん、ゲームや他ジャンルにまで影響を与えており、今見ても色あせない面白さが詰まっている。ショッピングモールでの籠城、対ゾンビのゲーム的な攻略、そしてキャラクターの死亡フラグとあらゆる“お約束”の元祖が本作なのである。

冒頭から並々ならぬ緊迫感に満ちており、ロメロの演出力に圧倒される。だが本当に怖いのは無法と化した時に本性を露わとする人間達だ。ひょんな事から行動を共にするカップルと警官2人組だが、ここには銃を持つ者と持たざる者、そして人種の違いという緊張が張り詰めており、そのピークが暴徒達の襲来である。豊富な食糧と資源を横取りせんとする野盗と主人公たちの暴力の応酬。ロメロは本当に怖いのは人間そのものである事を看破し、その批評精神は未だなお暴力で対立し合う現代にも哀しいかな、通用してしまうのである。まさに不死の傑作だ。

『ゾンビ ディレクターズカット版』78・米、伊
監督 ジョージ・A・ロメロ
 

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