長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『戦争より愛のカンケイ』

2017-10-07 | 映画レビュー(せ)

まったくフランス人ってやつは!
くそリベラルでおまけにセックスで世界を変えられるとおそらく本気で信じている恋愛脳で、そんな連中がこんなクレバーでキュートなラブコメディを作るんだから、その知性たるや!

しかも主演のサラ・フォレスティエは政治思想も貞操もかなぐり捨てて、今にでもフランスに飛んで行きたくなるくらいセクシーでキュートだ。そのトリコロールブルーの瞳を見つめるのにこの映画の95分という尺は短過ぎる。彼女が扮するのは右翼政治家をセックスで転向させる“怒れる政治的娼婦”。どっひゃー、なんだそりゃ!
ところがフォレスティエの魅力と巧みな脚本の御陰で少しもキワモノ感が出ない。買い物中なのも忘れて帰宅し、シャワーを浴びるやかかってきた電話をきっかけに服を着る事も忘れて街に出てしまうシーンはケッサクだ。この最高のブレイクスルーでフォレスティエはこの年のセザール賞主演女優賞を受賞している。

映画はそんな彼女に惚れてしまった平凡な男アルチュール・マルタンとのラブ・コメディだが、その笑いは驚くことに全部、政治ネタになっている。移民国家フランスを批評し、キモい右翼もキモい左翼も笑い飛ばす。根幹にあるのは行き過ぎた政治信条なんてセックスという1対1の密な人間関係の前では何の意味もない、というエスプリだ。

 それを少しも嫌味なくまとめ上げられたのもあっけらかんとし、そして世の中に怒っているサラ・フォレスティエの魅力の御陰なのだ。あぁ、不機嫌な君ってサイコーだ!


『戦争より愛のカンケイ』10・仏
監督 ミシェル・ルクレール
出演 サラ・フォレスティエ、ジャック・ガンプラン
 

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