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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『エージェント・ウルトラ』

2017-09-14 | 映画レビュー(え)

 実は最新作『カフェ・ソサエティ』で3度目の共演となるジェシー・アイゼンバーグとクリステン・スチュワートのコンビ第2作目。気弱なナード系のアイゼンバーグとクールでロックなスチュワートはなぜか相性がいいらしく、今回もカップル役を楽しんでいる。田舎町でハッパを吸いながらダラダラ暮らしているバカップルの2人だが、実はアイゼンバーグがCIAの秘密計画“ウルトラ”で育成された殺人マシーンで…。

 と、設定はバカ映画のそれなのに『クロニクル』や『ファンタスティック・フォー』を手掛けたマックス・ランディスのシリアスな脚本が映画を鈍重にしている。バイオレンス描写も必要以上にキツく、若手演技派の2人にとって希少なコメディは失敗作に終わった。

  それにしてもアイゼンバーグ、いつもクリステンといちゃいちゃしやがって、何でオマエばっかり!!


『エージェント・ウルトラ』15・米
監督 ニマ・ヌリザデ
出演 ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、トファー・グレイス、ウォルトン・ゴギンズ、ジョン・レグイザモ、ビル・プルマン
 
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『X-MEN:アポカリプス』

2017-09-14 | 映画レビュー(え)


新シリーズ3部作の完結編。
2011年の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』から始まったこの連作は60年代、70年代の時代風俗の再現と、当時の事件にX-MENが関わる設定に面白さがあった。マシュー・ボーンが手掛けた『ファースト・ジェネレーション』はケイパー映画風のジャンル映画スタイルになった快作で、一新されたキャスト陣の若さも作品のフレッシュさに貢献していた。続く『フューチャー&パスト』ではシリーズの代表監督ブライアン・シンガーがベトナム戦争期の混乱と現在の時勢をマッチさせ、さながらシリーズ最終作のような趣があった。

80年代を舞台にした本作にはこれらのコンセプトが継承されておらず、何とも味気がない。時代の名残はせいぜいファッションくらいで、この個性のなさ、起伏のなさがあの時代らしくもあり、ご愛敬だ。シンガーは次から次へと見せ場を盛り込んで飽きさせないが(今回もクイックシルバーはマーベルより楽しい)、これが果たして面白いのかというと首を傾げてしまう。原因はあまりの強さにパワーインフレし、無個性化してしまったヴィラン、アポカリプスのせいだろう。旬の演技派スター、オスカー・アイザックを持ってしても何ら映画を救う事はできなかった(彼を起用した意味すら見出しにくい)。

むしろマグニートー役マイケル・ファスベンダーをもっと見ていたかった。
 ポーランドで潜伏中の彼が手に入れたささやかな幸せと迫害。ファスベンダーの魅力は苦悶であり、シンガーも時間をかけてそれに注力しているのがわかる。ポーランドで暮らすアウシュヴィッツの生き残り、という設定がもたらすニュアンスの豊富さも原作が元来持ち得てきたものであり、それこそが『X-MEN』シリーズの根幹ではなかったか。このあたりの企画不足ぶりにマーヴェル(ディズニー)と20世紀フォックスの差が見えた。


『X-MEN:アポカリプス』16・米
監督 ブライアン・シンガー
出演 ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルト、ソフィ・ターナー、オスカー・アイザック、ローズ・バーン
 
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『エージェント:ライアン』

2017-08-17 | 映画レビュー(え)

アレック・ボールドウィン(昔は痩せてた)の『レッド・オクトーバーを追え!』に始まり、ハリソン・フォードの2作で人気を確立した“ジャック・ライアンシリーズ”の再々始動作。
ベン・アフレックの『トータル・フィアーズ』もそんなに悪い出来ではなかったが、いかんせんその後のベニファー騒動が足を引っ張ってシリーズ化には至らなかった(今ならアフレック監督・主演で最高傑作が作れそうだけど)。

今回はトム・クランシー原作による“ジャック・ライアン”というキャラクターを翻案した映画オリジナル作品。ライアン役には『スター・トレック』の体育会系なカーク船長役で人気を博したクリス・パインを迎え、一介のアナリストからスパイ工作員へと転ずるライアンを描く…って、それもうジャック・ライアンじゃないじゃん!!彼はあくまで事務方・学者であり、スーパーヒーロー然としていないのが魅力だった。インテリジェンスよりもフィジカルが勝るパインでスパイアクションものの新鉱脈を狙ったのがありありと分かる。この題材に対する製作陣の愛のなさは早々に見破られ、本作はほとんどヒットせずに市場から姿を消した。

 また“ジェイソン・ボーン”以後のリアリズム・ハード路線の後では旧時代的なスタイルも失敗の原因かも知れない。経済テロを起こそうとするロシア人実業家に内偵する地味なストーリー展開は『ゼロ・ダーク・サーティ』等のドキュドラマタッチで衝撃を受けた今となっては箱庭感がある。終幕のアクションシークエンスも何だか『24』の1エピソードみたいだ。いみじくもこの12年ぶりの再始動はサスペンスアクションというジャンルの進歩を逆説的に証明してしまったのである。


『エージェント:ライアン』14・米
監督 ケネス・ブラナー
出演 クリス・パイン、キーラ・ナイトレイ、ケネス・ブラナー、ケヴィン・コスナー
 
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『EDEN』

2017-08-16 | 映画レビュー(え)

アダムとイヴが追われた楽園(エデン)に唯一、残ったのがロボット姿の二人組ダフトパンクである。
そう考えれば、無理もないことか。一時でも同じ夢を見れたのなら良かったではないか。パーティーはいつか終わるものだ。
だがそうとはわかっていても、ミア・ハンセン=ラヴ監督による本作『EDEN』は楽園を追われた者たちの喪失を捉え、心を深く抉る。

1990年代初頭、フランスではエレクトロミュージックのムーヴメント“フレンチタッチ”が芽吹きだした。まだ何者になるとも知れぬ若者ポールが、パーティ後に「あのフルートの曲は何?」とリクエストするシーンがいい。ひとしきり特徴を聞いたDJは「ああ、あれか」とおもむろにレコードを回す。意味もなく夜を明かし、新しい人生の朝が来たのだと熱烈に錯覚した季節がある人なら、このポールの“目覚め”は心にピタリとフィットするハズだ。

この時代のクラブはその空間自体が魔術的だったのだろうか。オープニングの潜水艦、ブルーにライトアップされたトンネル…その楽園的な光景は語り手によって過度に美化されたものであり、人生を賭けてしまうに足る夢見心地である(一方で映画が現在に近づくにつれ、クラブ空間そのものは味気なくなっていく)。

シーンでポールは人気DJとなっていく。だが、どの業界にもいるのだろう。食えない程度にしか売れない。ツアーもやった。大物も呼んだ。招待リストには素顔のダフトパンクを呼んでやれた(この天丼ギャグはすごく可笑しい)。でも借金とドラッグで身を持ち崩した(若いうちは持ち崩している事にすら気付けない)。たまらなくキュートでピュアなポーリーヌ・エチエンヌ扮する恋人の存在は、ひょっとしたらポールが知らないうちに失くす事になる“エデンへの永住権”だったのかも知れない。

 人生の挫折は必ずしもドラマチックではない。金が底を尽いた。女が去った。オーバードーズで倒れた。静かに、慎ましやかに新しい人生が始まる。ポールが季節の終焉を悟るラストシーンの静謐さは、夢破れた者達の心をそっと包んでいくだろう。


『EDEN』14・仏
監督 ミア・ハンセン=ラヴ
出演 フェリックス・ド・ジヴリ、ポーリーヌ・エチエンヌ
 
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『エベレスト 3D』

2017-06-13 | 映画レビュー(え)

 2009年の『アバター』の成功以後、3D技術は映画に再び“見世物”としての魅力を与え、映画館へ観客を呼び戻す事に貢献している。『ゼロ・グラビティ』が僕たちを宇宙空間に引きずり込み、そして本作『エベレスト』は標高8000mへと誘う。宇宙は行けそうにないが、エベレストなら行ってみたいかな…なんて甘い考えをぶち壊すには十分な地獄の山岳映画だ。

それもそのはず、1996年に起きた大量遭難死を描いた実録映画である。“見世物”にするにはあまりに悲惨極まりない。地上の数分の一しかないという酸素がたった1歩のあゆみからも体力を奪い、肺を破裂させ、意識を奪う。標高5000m以上は体力の問題ではなく、そもそも生命の存在を許さない“デスゾーン”と呼ばれる領域なのだ。IMAX3Dで拡がるランドスケープよりもこの過酷さを見る者に訴えるリアリズム演出が圧巻だ。とりわけ遭難者たちから視界と方向感覚を奪ったであろう風の音響設定はぜひ音の良い劇場で体感してほしい。吹きつけるホワイトアウトによってここがどこか、誰がどこにいるのかわからなくなる後半は、編集も相まって凄まじい臨場感である。
登場人物の多さの割には個々のキャラクターを描くことは放棄されており、ここでも見世物であることが優先されている。役名がわからなくてもオールスターキャストの顔で認識しろというわけだ。

 大量遭難の背景には自然探訪をツアー化した商業主義がある。プロ判断に欠けた軽率さ、無謀さが原因であった事が示唆されているが、バルタザール・コルマウクル監督はそこに批評的視座を持ち込むには至っていない(これがポール・グリーングラスだったら!)。この淡白さが良くも悪くも映画を見世物以上にはせず、やや物足りない印象であった。


『エベレスト 3D』15・米、英
監督 バルタザール・コルマウクル
出演 ジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、ジョン・ホークス、ロビン・ライト、エミリー・ワトソン、キーラ・ナイトレイ、サム・ワーシントン、エリザベス・デビッキ、ジェイク・ギレンホール
 
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