9年の沈黙を経て、川本真琴は帰ってきた。巣鴨に帰ってきた。巣鴨で煙にあたり、せんべいを齧り、日本刀を購入し、オー、フジヤマ!ハハ!と叫び、歌を歌った。彼女の歌う歌は相変わらずキュートであった。つんとすまして鎖骨を浮き立たせてノースリーブを着流し、帽子をかぶりあたしまだここにいるよ気づいてよ、と歌った。ギターは破り捨ててなお、ピアノもたたき壊してなお、トランペットを吸い込んでもまだ足りない衝動を彼女は感じていた。通りを歩いていた老女が川本の耳を見て、あなたその耳、見覚えあるわ。そうですか、と歌う。ええ、たしかにどこで見たのだったかしら、たしか、巣鴨で、9年前に。園通りですよおばあさん。あらやだあばあさんだなんてあたしはまだまだ現役ですよ、律子さんとお呼びなさい。すいません律子さん、歌聞いてもらえますか。ええいいわよどうぞうたってごらんなさい。誠は依頼者の依頼を受け、テレビクルーとともに、おとぼけロケの末歌う。
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