リッスン・トゥ・ハー

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飛び立つ鳩が想う平和について

2006-05-18 | リッスン・トゥ・ハー
鼓笛隊が陽気に高らかに音が止む。拍手。くぐもった声で毛の少ない男がしゃべりだす。この鉄の檻は間もなく開けられ、私は解放されるのだろう。それが彼ら、毛の少ない男らの望みなのだろう。それがためわたしは飛び立つ、そして遠く高く遠くに浮かぶ雲を、あのポップコーンのような雲を食らう。食らうことで力をつけてさらに高くへ高くへ。果てはない。そこにポップコーンがあり、それを食らうわたしはただ高くへ。地を這うものの羨望を受け、羽を持つ物として、鳥として、到達したことのない高さへ。宿命。時がきた。甲高い音楽と、ともに開けられる檻、勢い余って、飛び出すわたしは鳩である。ぐんぐん高くへぐんぐん高くへ。ポップコーンはまだか、あの巨大なポップコーンはまだか。届かない届かない届かない届かない何にも何にも何にも届かない。疲れ果てたわたしはアスファルトに降り立ち、縦横無尽に歩み、豆を投げる幼子の手をつつくのだ。

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