祭の佳境に入ったところだった。突然、積乱雲が空を覆い、強い雨が降り出した。非常に強い雨で、みこしをかつぐふんどし姿の男どもだけでなく、大勢の見物人を濡らした。みなが濡れているのならそれでいいか、と思えるほど、完全に濡らした。ものの10分ほどで雨があがったが、まだ雲はもうもうと頭上にあり、不気味な音をたてていた、ところどころ光り、落雷は時間の問題であった。みこしは非常に立派なもので、そのみこしのシンボルとして、天高くまである一本の細い柱がついていた。まつり実行委員の人々は、その柱に雷が落ちないか、気が気でなかった。けが人が出たらどうしよう、そうなったら責任問題だ、やめさせようか、みこし中止させようか、別に少しの間中断するだけだから、荒々しい男どもも別に不満に思わないんじゃ、とこそこそと話し合われた。その間もみこしは商店街をうねりながら進んでいた。かけ声をあげ、雨なのか汗なのか唾液なのかわからない液体を振りまきながら進んだ。促された実行委員長が、まつり男どもに声をかけようとした。男どもは予想通り、俺たちを止めることのできる奴はいねえ、と突っぱねた。まつりハイになっていたのである。男どもはみこしをさらに高く担ぎ上げた。最後の力を振り絞って、わっしょい、わっしょい。雷が落ちたのはその時である。みこしを直撃し、男どもはすごくしびれた。まつりは中断された。後に男どもの代表は語ってくれた。雷もまつりを見に来たんじゃねえのか、だったら歓迎じゃい。
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