読書感想日記

最近読んだ本の感想

「失われた町」 三崎 亜紀 著 集英社

2010-01-23 22:28:38 | 小説
 故郷や大切な人を失ってしまったら、どうすればよいのだろう…
 「失う」とは、亡くすこととは比べものにならないほど、遺された人に深い傷を負わせる出来事である。
 ただ平凡に日々を暮らす町の人々…人知の遥かに及ばない大きな力に魅入られたその日から、彼らには抗う術もなく、まるで運命であるかのように、ごく自然に受容させられ、やがて、その時を静かに迎える…不可思議で、あまりにも理不尽な現象…
 私だったら…家族を連れてどこまでも逃げ回るのだろうか…あるいは失った人や故郷の思い出を胸にして密やかに又は逞しく生きていけるのだろうか…それとも、勇敢にこの現象へ戦いを挑むのだろうか…
 人々が生きていた証…「残光」の場面に、私は胸が苦しくなると同時に、思わず鳥肌がたった。更には、装幀の演出にも…
 どこまでも理不尽で執拗な現象に、そして、この物語に終わりはあるのだろうか…
 待てよ…もしかすると、もはや私も、いつの間にかこの運命を受け入れているのかもしれない…
コメント
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