俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

自分のこと

2009-11-02 15:06:56 | Weblog
 簡単なパズルがある。
 二人の男の傍でススが沢山入った風船が破裂した。一人は風船のほうを向いていたために顔が真っ黒になった。もう一人は風船に背を向けていたため後頭部が汚れた。二人が顔を見合わせたら一人が即座に洗面所へと走った。どちらの男だろうか?
 誰でも解けるパズルだ。後頭部の汚れた男は、顔面が真っ黒になった男を見て自分も同じ状態に違いないと考えて洗面所へ走ったのだ。
 人間は残念ながら自分のことがよくわからない。自分の考えは正しいと思うし、自分の味覚は確かだと信じる。しかしこれらは必ずしも正しくない。
 初めてテープレコーダーで自分の声を聞いた時、それが自分の声とは信じられなかった。「機械がおかしい」と思った。しかし周囲の人の声はほぼ正確に再現されていることから、自分が思っている声よりもテープレコーダーが再現する声のほうが実際のものに近いと認識を改めざるを得なかった。
 もっと極端なのは「自分の匂い」だろう。これは自分では知覚することができない。他人だけが感じることができる。
 危機的状況に陥った場合、人は自分が置かれている状況を正確に把握することができない。大げさに考えたり逆に楽観的過ぎたりする。むしろ第三者のほうが妥当な判断を下せる。
 様々な問題に対して当事者よりもむしろ第三者のほうが適切な判断を下せるという事実から、「自分のことは自分が一番よく分かっている」という傲慢で誤った考えから脱却すべきだろう。どんな聡明な人でも自分の問題こそ決して自分一人では決めず、知人に相談してから決めねばならないということになる。

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