俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

法律

2013-09-23 09:15:36 | Weblog
 信号機の無い道路を想像できるだろうか。もし日本から信号機が無くなったら事故は頻発し道路は大渋滞になるだろう。信号機というルールがありそれを皆が守るからこそ安全に便利に道路を使用できる。このようにルールが市民の役に立つ例は食品衛生法や建築基準法など少なくない。西洋でもイギリスの大憲章など多くの法律がボトムアップで作られている。
 中国では事情が違う。中国の法律は総て権力者が押し付けたものだ。従って権力者に都合が良いように定められている。司馬遷の「史記」に拠れば、秦を滅ぼした劉邦は法を僅か3章にすると布告して大歓迎されたそうだ。それほど中国の法は人民を弾圧する強権的なものだ。その後も中華帝国の法は権力者が押し付けるものであり続けた。
 そのために中国の人民の法律に対する意識は近代国家とは全然違う。違法は反権力を意味し反人民という意味を持たない。
 中国人が法の盲点を探したがるのはこんな歴史があるからだろう。これでは遵法精神など育つ筈が無い。法律は確かに権力者が有利になるように作られてはいるが、その反面、市民の安全守るという役割も併せ持っている。このことが理解されない限り、中国は法治国家ではなく人治国家であり続けるだろう。

5感

2013-09-23 08:55:39 | Weblog
 意外なことに嗅覚以外の人類の知覚は他の動物よりも優れている。
 人類の視覚は、猛禽類ほど遠目が利く訳ではないし、赤外線も紫外線も知覚できない。それでも色を識別する能力はダントツだろう。
 聴覚は、コウモリとは違って超音波を知覚できないが、微妙な音の違いを聞き分けられるから音声によるコミュニケーションが可能になっている。
 味覚は異常なまでに発達している。私は食べたことが無いがドッグフードやキャットフードは不味いらしいが犬も猫も喜んで食べているし好き嫌いも少ないようだ。
 触覚は間違いなく動物界で最も敏感だ。こんな敏感な動物は自然界では生き延びられない。触覚が敏感だから痛みにも敏感だ。軽い痛みを感じることは必要だが、強い痛みで動けなくなったり気を失ったりすればそれは死に直結する。
 人類の嗅覚は犬の1/1000と言われている。麻薬犬という実例があるように、科学の助けを借りても犬の嗅覚に敵わない。
 嗅覚は個人差が大きいようで、昔から私は香水の臭さに閉口していたものだが、最近では柔軟剤の匂いが問題になっている。一般に匂いに鈍感な人ほどきつい匂いを好む傾向があり、鈍感な人に迎合した商品が社会問題化した。これは騒音被害と類似した問題だ。
 人類はなぜ嗅覚だけが退化したのだろうか。全くの憶測だが、意思疎通と関係があるように思える。嗅覚以外の知覚は総てコミュニケーションに役立っている。人類は意思の伝達を促進する知覚を発達させて、意思の伝達に役立たない嗅覚を衰えさせたものと思える。
 嗅覚以外の知覚に快感を与える行為は大昔から職業として成立しているが、調香師の歴史はせいぜい数百年だ。日本の香や匂い袋のほうが歴史があるように思える。もしかしたら日本文化は世界で最も香りを重視していたかも知れない。香道という文化は多分外国には無いだろうし、香木は非常に珍重されていた。とは言えこれらは微妙な香りであり、化学物質のきつい匂いではない。微妙な香りを好む人はきつい匂いを嫌うものだ。