いざ臨時国会へ!
参院選挙から早一月が過ぎ、今年も911がやってきた。
6年前の911(米国同時テロ事件)は、約4000人にのぼる犠牲者を出す未曾有の大惨事であった。2年前の911(郵政解散)では、多くの優秀な仲間を失った。いずれにしても、あまり思い起こしたくない日である。
そんな中、いよいよ168回臨時国会が始まった。
最大の争点が、テロ特措法延長問題であることは言を待たない。
私はすべての党務から解放され、安全保障委員会と国際テロ防止特別委員会で、テロ特措法審議に集中することとなった。
テロ特措法延長をめぐる党内論議が今日から始まることになるが、小沢代表が明確なラインをすでに出しているから、議論の幅はそれほど大きくはない。「インド洋上での海上自衛隊による補給活動の中止・撤収」という結論がブレることはないのだろう。しかし、①この活動をなぜ中止せねばならないのか、②国際社会が取り組むアフガニスタンをめぐるテロとの闘いにおいて、洋上補給活動に代わるいかなる代替措置を提案できるか、③民主党として、今後の日米同盟関係をどういう方向へ持っていこうとしているのか、といった少なくとも3点について、国民の皆さんにわかりやすく示すことができなければ、政権担当能力を厳しく問われることになるだろう。
そこで、現時点において、私が頭の整理のために作成したメモランダムを公開し、議論の端緒としたいと思う。これが、今後様々な議論を展開する糸口になれば幸甚である。
テロ特措法延長問題メモランダム(as of 07/09/10)
1. 特措法をめぐるさまざまな誤解
米国(単独)の戦争で国際的な合意(国連決議)なし
01/09/12 NATO集団的自衛権行使宣言、国連決議1368で集団的・個別的自衛権行使容認(recognize)
01/09/21 EU対米英支援合意(その他、ANZUS等も集団的自衛権行使宣言)
01/10/07アフガニスタン空爆開始は、米英連合軍による自衛権行使
各国は集団的自衛権の行使で参加(戦争支援)
03/05/01 「主要な戦闘終結宣言」(ラムズフェルド米国防長官)により、戦争 (タリバン政権打倒、テロリスト掃討作戦)からアフガニスタン国内安定化のフェーズへ
・・・実際、我が国の補給対象国の比率は、米英100%(02年11月まで)から、現在では米英以外(たとえば、パキスタン)が80%となっている
民主党は一貫して反対
01/09/11 911テロ非難声明(鳩山由紀夫代表)
01/10/8 米国の自衛権行使容認声明(鳩山由紀夫代表)
01/10/29 国会の事前承認条項をめぐり与野党合意寸前だったが、拒否されテロ特措法案反対へ
01/11/27, 30 自衛艦派遣の対応措置をめぐる国会承認には賛成(衆参で数人の造反)
03/11, 05/11, 06/11 いずれも、テロとの闘いの必要性は認めながら、「政府の説明不足」を理由に反対
2.法律的(原理原則的)アプローチと現実的アプローチの問題点
国連決議のディレンマ
国連決議の難しさ・・・現下の国際社会において最も正当性の高い「お墨付き」であることは間違いないが、あくまで全会一致が原則であり、そのつど必ずしも我が国の国益と合致した国連決議が得られるか保証の限りではない。
アフガニスタンでは、国連決議1386によって創設されたISAF(国際治安支援部隊)の活動が最も正当性が高いと思われるが、とくにパキスタンと国境を接する南東部では、タリバン残党やテロリスト掃討作戦と一体となっており、きわめて危険性が高い(ex. カナダ軍は、これまでに70人以上の犠牲者を出している)。
国際的孤立に耐えられるか
アフガニスタンにおけるテロとの闘いに参加している国は、不朽の自由作戦(陸上のOEF-Aおよび海上のOEF-MIO)に22カ国、国際治安支援部隊(ISAF)に37カ国、地方復興チーム(PRT)に27カ国となっており、ここから離脱することに国際政治的コストはきわめて高い。
一方で、我が国は、テロとの闘いの一翼を担っているといいながら、実際は、アフガニスタン安定化のための国際協力の政治的軍事的な最高意思決定(HQは首都カブール)に参加できていない。・・・これでは、米軍の「下請け」といわれても仕方がないのではないか。
コスト・パフォーマンス
洋上の補給(給油・給水)活動は、生命の危険性も低く、各国の評価も高い最も効率のいい軍事支援活動。・・・これに対し、アフガニスタン国内にどれだけ現実的な活動のニーズがあるのか現状では明らかでない。
これまでの政府の「なし崩し」対応
そもそもOEFとOIF(イラクの自由作戦)を作戦上切り分けるのは至難の業。したがって、OEF向けの補給が、OIF向けに「転用」されることは免れ得ない。
(ただし、江田衆議院議員が根拠にした米第5艦隊HPの記載は、明らかにOIFとOEFを混同しており、必ずしもOIF向けに補給活動が行われたことを立証するものではない。)
3.現実的な代替案とテロ特措法を超えた論点
新法の中身が、巷間言われているような、「補給活動の継続に焦点を絞り、かつ、国会関与の規定も削除される」のであれば、現行のテロ特措法以下の代物であり、議論の対象にすらならない。
この際、特措法方式をリセットし、国際平和活動のあり方を規定する「一般法」(恒久法)を制定する努力を行うべし。・・・その際、ポイントとなるのは、国連決議と国会関与。
今般のテロ特措法「仕切りなおし」は、これまでの対米追従外交を見直す絶好の機会。
イラク駐留米軍司令官の議会報告を機に、いよいよ米国もイラク撤退を開始するこの時期を捉え、イラク特措法およびテロ特措法を同時に廃止し、アフガニスタンでのテロとの闘いに集中する姿勢を示し、米国およびNATO諸国や豪州などとの新たな外交安保戦略の練り直しを推進すべきである。
6年前の911(米国同時テロ事件)は、約4000人にのぼる犠牲者を出す未曾有の大惨事であった。2年前の911(郵政解散)では、多くの優秀な仲間を失った。いずれにしても、あまり思い起こしたくない日である。
そんな中、いよいよ168回臨時国会が始まった。
最大の争点が、テロ特措法延長問題であることは言を待たない。
私はすべての党務から解放され、安全保障委員会と国際テロ防止特別委員会で、テロ特措法審議に集中することとなった。
テロ特措法延長をめぐる党内論議が今日から始まることになるが、小沢代表が明確なラインをすでに出しているから、議論の幅はそれほど大きくはない。「インド洋上での海上自衛隊による補給活動の中止・撤収」という結論がブレることはないのだろう。しかし、①この活動をなぜ中止せねばならないのか、②国際社会が取り組むアフガニスタンをめぐるテロとの闘いにおいて、洋上補給活動に代わるいかなる代替措置を提案できるか、③民主党として、今後の日米同盟関係をどういう方向へ持っていこうとしているのか、といった少なくとも3点について、国民の皆さんにわかりやすく示すことができなければ、政権担当能力を厳しく問われることになるだろう。
そこで、現時点において、私が頭の整理のために作成したメモランダムを公開し、議論の端緒としたいと思う。これが、今後様々な議論を展開する糸口になれば幸甚である。
テロ特措法延長問題メモランダム(as of 07/09/10)
1. 特措法をめぐるさまざまな誤解
米国(単独)の戦争で国際的な合意(国連決議)なし
01/09/12 NATO集団的自衛権行使宣言、国連決議1368で集団的・個別的自衛権行使容認(recognize)
01/09/21 EU対米英支援合意(その他、ANZUS等も集団的自衛権行使宣言)
01/10/07アフガニスタン空爆開始は、米英連合軍による自衛権行使
各国は集団的自衛権の行使で参加(戦争支援)
03/05/01 「主要な戦闘終結宣言」(ラムズフェルド米国防長官)により、戦争 (タリバン政権打倒、テロリスト掃討作戦)からアフガニスタン国内安定化のフェーズへ
・・・実際、我が国の補給対象国の比率は、米英100%(02年11月まで)から、現在では米英以外(たとえば、パキスタン)が80%となっている
民主党は一貫して反対
01/09/11 911テロ非難声明(鳩山由紀夫代表)
01/10/8 米国の自衛権行使容認声明(鳩山由紀夫代表)
01/10/29 国会の事前承認条項をめぐり与野党合意寸前だったが、拒否されテロ特措法案反対へ
01/11/27, 30 自衛艦派遣の対応措置をめぐる国会承認には賛成(衆参で数人の造反)
03/11, 05/11, 06/11 いずれも、テロとの闘いの必要性は認めながら、「政府の説明不足」を理由に反対
2.法律的(原理原則的)アプローチと現実的アプローチの問題点
国連決議のディレンマ
国連決議の難しさ・・・現下の国際社会において最も正当性の高い「お墨付き」であることは間違いないが、あくまで全会一致が原則であり、そのつど必ずしも我が国の国益と合致した国連決議が得られるか保証の限りではない。
アフガニスタンでは、国連決議1386によって創設されたISAF(国際治安支援部隊)の活動が最も正当性が高いと思われるが、とくにパキスタンと国境を接する南東部では、タリバン残党やテロリスト掃討作戦と一体となっており、きわめて危険性が高い(ex. カナダ軍は、これまでに70人以上の犠牲者を出している)。
国際的孤立に耐えられるか
アフガニスタンにおけるテロとの闘いに参加している国は、不朽の自由作戦(陸上のOEF-Aおよび海上のOEF-MIO)に22カ国、国際治安支援部隊(ISAF)に37カ国、地方復興チーム(PRT)に27カ国となっており、ここから離脱することに国際政治的コストはきわめて高い。
一方で、我が国は、テロとの闘いの一翼を担っているといいながら、実際は、アフガニスタン安定化のための国際協力の政治的軍事的な最高意思決定(HQは首都カブール)に参加できていない。・・・これでは、米軍の「下請け」といわれても仕方がないのではないか。
コスト・パフォーマンス
洋上の補給(給油・給水)活動は、生命の危険性も低く、各国の評価も高い最も効率のいい軍事支援活動。・・・これに対し、アフガニスタン国内にどれだけ現実的な活動のニーズがあるのか現状では明らかでない。
これまでの政府の「なし崩し」対応
そもそもOEFとOIF(イラクの自由作戦)を作戦上切り分けるのは至難の業。したがって、OEF向けの補給が、OIF向けに「転用」されることは免れ得ない。
(ただし、江田衆議院議員が根拠にした米第5艦隊HPの記載は、明らかにOIFとOEFを混同しており、必ずしもOIF向けに補給活動が行われたことを立証するものではない。)
3.現実的な代替案とテロ特措法を超えた論点
新法の中身が、巷間言われているような、「補給活動の継続に焦点を絞り、かつ、国会関与の規定も削除される」のであれば、現行のテロ特措法以下の代物であり、議論の対象にすらならない。
この際、特措法方式をリセットし、国際平和活動のあり方を規定する「一般法」(恒久法)を制定する努力を行うべし。・・・その際、ポイントとなるのは、国連決議と国会関与。
今般のテロ特措法「仕切りなおし」は、これまでの対米追従外交を見直す絶好の機会。
イラク駐留米軍司令官の議会報告を機に、いよいよ米国もイラク撤退を開始するこの時期を捉え、イラク特措法およびテロ特措法を同時に廃止し、アフガニスタンでのテロとの闘いに集中する姿勢を示し、米国およびNATO諸国や豪州などとの新たな外交安保戦略の練り直しを推進すべきである。