2013.07.21
空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
池井戸 潤
講談社 2009-09-15
by G-Tools 走行中のトレーラーのタイヤが外れて歩行者の母子を直撃した。ホープ自動車が出した「運送会社の整備不良」の結論に納得できない運送会社社長の赤松徳郎。真相を追及する赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況下、絶望しかけた赤松に記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。
半沢直樹で池井戸潤にハマって、「下町ロケット」か「空飛ぶタイヤ」のどちらから読むか迷って、まずは「空飛ぶタイヤ」を購入。
内容紹介から分かるように、この小説は約10年前の三菱自動車のリコール隠し、タイヤ脱落母子死傷事故が基になっている。
半沢直樹以上に面白い!大傑作だ!実際に人が亡くなっているので面白いというのは語弊があるが、とにかく深い小説だ。
三菱自動車がモデルのホープ自動車は、財閥系大企業で殿様商売、社員は官僚的でエリート意識、顧客よりも社内政治が優先される組織、そして真実の隠蔽。腐敗した大企業に、吹けば飛ぶような中小企業の運送会社が、真相を究明すべく立ち向かう。
大企業の腐敗を描いた小説は、日航機墜落事故を扱った山崎豊子の「沈まぬ太陽」が有名だが、「沈まぬ太陽」はやや読むのに疲れたが、「空飛ぶタイヤ」は読みやすい。それでいてストーリーは緻密。
登場人物も多い。自動車会社、運送会社、被害者に加え、銀行や取引先企業、警察、家族など、様々な人や組織が絡む。たった一つの事故が、どれだけの人に波紋を起こし、歯車を狂わせていくかが分かる。
直木賞候補にも挙がったが、受賞はできなかった。Amazonのレビューによると、三菱グループへの遠慮があったのではと。まあ、有り得る話だ。
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三菱自動車が、リコール隠しで世間の批判を浴び、会社危機に陥った契機になった出来事だ。
池井戸潤氏が、「下町ロケット」で直木賞をもらった時にその作品は読んだが、この作品には気がつかなかった。
今回も「半沢直樹」、「下町ロケット」「花咲舞が黙ってない」があれだけ視聴率を取っても
この作品は、スポットを浴びなかった。企業のモラルの低下が会社の危機につながる事例で
三菱自工の件を調べていたら、「この空飛ぶタイヤ」に行き当たった。
三菱グループの体質、またそれに遠慮して、物を言わない世間。
ものを言えば、周囲から孤立していく。コンビニの現況も一緒。
自己破産に追い込まれようが、企業責任は問えず、自己責任。
本部支店長が、推奨する自己破産。ちょと違う気がする。
ビジネスモデルが自己破産を前提に組み立てられていないか?
クルーは、無年金になることを前提の賃金体系になっていないか?
インモラル企業には、結果責任は付いて回ると思います。
第二の三菱自工にならないだろうか?
現行システムが上手く対応するのは、かつてのような24時間営業ではない時代です。夜間に営業していないだけで先ず夜勤クルーの必要性がありません。また、かつては酒やたばこの免許商品はどこのコンビニにもあったわけでもありません。即ち、かつてのコンビニは今ほど忙しくはなかった。ほとんど実入りにならない各種サービス業務もほとんど存在しなかった。
この状況ならば、夫婦二人だけで回すのはしんどいかもしれないが、少しのパート、バイトを雇用すれば楽に運営できました。家族経営型の小規模小売店にほぼ近いため、今、話題の社会保険未加入問題もその基準を満たさないため無関係です。
ところが、今やいったい何人のバイトを雇用しなければいけないのか。今は開業したその日から、労災、雇用、社保とすべて加入していなければ違法状態となります。それだけでも、人件費が相当に膨らんでしまい実態は小規模小売店舗にも関わらず、あたかもちょっとした会社のような人件費が店の経営を大きく圧迫します。経営状態によっては、まともに労働コストをすべて正しく計上すれば赤字転落の加盟者も出るありさまです。店舗運営に関わる最も大きなコストを占めるのが人件費。そのコストがフリーとなっている本部だけが毎年増収増益となり、加盟店が毎年減収減益となる理由がここにあります。人件費を削れば、経営者の肉体的・精神的負担は増大する。限界を超えて死を選んだ人もいるくらいだ。
コンビニ黎明期にだけマッチしていたシステムをそのまま引きずったまま故意に何の変化対応もしなかった本部の無責任のツケは、これからは本部にそのまま返っていきます。コンビニは変化対応業と豪語する本部が、一番変化対応しなければならなかったことを自ら痛みを伴う変化をよしとしなかったために変化対応せず、結果自ら破滅の道を進むことになるのです。
労働関連法において違法状態でないと経営が立ち行かない加盟店。人手不足で、もはや店が回らなくなっている加盟店。あまりの採算の悪さに経営が成り立たなくなった加盟店。これから、加盟者のコンビニからの脱退は加速していくことは間違いありません。本部自らがシステムを現在の環境に応じた改革を行わない限り、加盟者は遅かれ早かれ全員が脱退していくことは確実です。もうコンビニフランチャイズは終わりです。