「スンナリと、スンナリとは契約更新できません」とセブンイレブン幹部
ニュースソクラ 10月6日(火)16時10分配信
セブンーイレブン・ジャパンが、コンビニ加盟店主の労働組合、コンビニ加盟店ユニオンの執行委員長、池原匠美氏に契約更新の拒否を通告した舞台裏をさらに探ろう。
池原氏との交渉役だったセブンーイレブン・ジャパンの萬歳公教顧問は、契約更新の打ち切りをちらつかせた2度の会合の後、池原氏に3回目の会談も申し入れてきた。だが、これは池原氏が断った。
背景には、コンビニ加盟店ユニオンを労組と認めるかどうかを巡って東京都労働委員会で審査が続いていることがある。岡山県地方労働委員会は労組と認定したが、セブンーイレブン・ジャパンが中央委員会に抗告して審査が続いている。
萬歳氏の来訪を断った直接のきっかけは、セブンーイレブン・ジャパンが中央労働委員会に出した準備書面(本部の正当性を主張する反論書)で、OFC(店舗経営指導員)の業務日報を持ちだしたことだ。池原委員長らの人格攻撃を仕掛け、ドロ仕合になりそうになっていた。
中労委では、事業者か、労働者か、フランチャイズ商法の実態を争っている。それがOFCの印象評価にすぎない業務日報で救済申立人であるオーナーたちを、「持論にこだわり聞く耳をもたない」などと中傷し、あたかも特異なクレーマーのような人物像をつくろうとしていた。それはフェアな論争じゃないと判断したのだ。
萬歳顧問に代わった交渉役は、普段の経営指導にもあたるディストリクト・マネージャー(DM)だった。8月7日に池原氏の店に現れた岡山地区責任者の矢田DMは、中労委での準備書面を手にしながら、「このようにセブンイレブン・システム(セブン本部の店舗運営・統括の方法)を否定されている方とは、契約更新することはできない。契約延長という形にしたい」と通告してきた。
契約延長とは、「契約解除」に次ぐ重いもの。契約期間が明示されないので、いつ、どんな理由で解約されるか分からず、まぁ、オーナー側からいうと前途をとざされ、死刑執行を待つ身に等しい。
実際、これまでの連載でも触れたが、都内のオーナーの妻は「契約解除」の重圧に耐え切れず自殺に追い込まれた。宮城県の佐久間正洋オーナー(50歳代)も自殺に追い詰められるなど、過去には死をもって抵抗しないと契約更新ができないほどなのだ。
池原氏証言に耳を傾けよう。
「契約延長を持ち出しつつ、矢田DMが何回もいうのですよ。『オーナーさん、やっぱり委員長をされているから準備書面ではこういうふうに(本部を)否定する文言になるのでしょう。日ごろのオーナーさんのイメージとまったく違いますね』と」
「私は(中労委では)フランチャイズの仕組みや運営のやり方について労働者性(があるかないか)を議論しているので、たまたま来る矢田さんと議論するつもりもないし、議論しても意味ないじゃないですか。OFCにも日ごろの店舗のオペレーションの話しかしない」
「それで僕のイメージが違うというのは、あなたの方の勝手な決めつけなので話す言葉がない。そういう話をすると、しきりに聞いてくるのですよ。『これ(準備書面での陳述)は本当(本心)なのですか?本当にそう思っているのですか。虚偽じゃないのですか?』と」
「物凄い目で私の目をみながらいうのですよ。虚偽じゃないか、と。『違うなら違うで、話はまた違いますから、どうですか?』って、こう迫ってくるのですよ。もし、私がフラフラした返事をすると、それにつけこんでくるか、ヘタなことをいうと、本当はそう思ってないのに労働者性を勝ち取るために虚偽のことを言っていると、(準備書面に)何書かれるかわからない」
「その危険性が一つ、もう一つは、私に契約更新をチラつかせることで、揺さぶろうという、この2つが狙いなのでしょうね。当然ながら中労委で論争していることは中労委の結果を待つしかないわけです」
「そこで私は、『あなたは、中労委での論争を私という一個人の契約問題にくっつけて話してくるのか』と言ったのですよ。そうしたら何ともシブい顔をしながら『そりゃあ、オーナーさんの解釈でして、これ(更新拒絶)が会社としての正式な見解です!』と言ったのですよ」
「『オーナーさんたちが(労働委員会に)申し立てすることは構いません。ただ、その中でセブンイレブン・システムを否定しているオーナーさんとは、スンナリと契約更新できません』とも言ったのです。スンナリと、スンナリと、と何回も。それは矛盾する話じゃないですか」
このコンビニ労組は、岡山県地方労働委員会で「労働組合法上の労働者」との裁定が下っている。それが今まさに中労委で審判が続いている段階で「中労委での発言を撤回せよ、そうすれば契約を認めてやる!」と言ってきているようなものではないか。
オーナー側の中労委弁護団も「これは岡山裁定を踏みにじる不当労働行為だ」と判断している。もちろん、これを現場のDMの暴走などと見る人はいないだろう。
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渡辺 仁 (経済ジャーナリスト)